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[短編小説]赤い拳🩸


人物
たける(17)
さくら(20)女子高生。
トモダ(17) たけるの親友
高倉(18)
若者、1.2.3.4(18)


 夕方。神社の階段でジュースを飲んで座っている男子校生・たける(17)、いかつい顔をしている。
 タバコに火をつける。
 退屈そうな表情で上を向き、煙を吐く。
 タバコをポイ捨てし、立ち上がる。
 ポケットに手を入れ、首を鳴らしながら歩く。
 楽しそうに喋りながら歩いてくる若者4人。
  下を向いたまま歩くたける。
 若者1と肩がぶつかる。
若者1「おい!」
 ガンを飛ばす若者たち、立ち止まるたける。
たける「あ?」
若者1「てめえ、どこ見て歩いてんだよ」
  首を傾げて、再び歩く。
若者「おい!」
   走る若者たち。
 たけるを捕まえ、胸ぐらを掴む。
若者「何しかとしてんだよ!オラ!」
 指の骨を鳴らし、若者の頬をパンチする。
たける「オレに触るな。殺すぞ」
  ガンを飛ばすたける。
若者1「てめぇ!」
 殴りかかる若者たち。
 
たける「卑怯だぞてめら!」
若者「うるせぇ!」
  蹴って蹴って蹴りまくる若者たち。
 ボコボコにされるたける。
  反撃しようとするも、数の暴力により隙が   ない。
   意識が遠のくように画面が暗くなる。
たける「くそ!クソ!クソ!、」
 俺は、オレはザコだ。強くなりたい。でも、なかなか慣れない。彼女とあった、この日までは

 近くを通る女子高生・さくら(20)
  現場を目撃し、向かって走る。

 ベンチの上で仰向けになっているたける。
 友達のトモダ(17)がやってくる。
トモダ「なんだ。またサボってんのか?」
たける「うっせぇ!お前だってサボってんじゃねぇかよ」
トモダ「まあな。しっかしなんだその面。ひどくやられたもんだな」
たける「うっせえな。今回はたまたまだ。オレは強くなりたくてこんなことしてんだけどさ
 なかなかうまくいかねえもんだぜ」
トモダ「うん、だろうね」
たける「うっせえな。クソが」
トモダ「ごめんごめん」
たける「ったく。まあでも憧れるんだよな。強いやつ見ると、オレもあんな風になりてえとか、どうやったら、あんなんなるんだろうとか」
トモダ「まあ男だったら一度そう思うかも」
たける「だろ?だから、俺はそれを探してんのさ。強くなれる方法」
トモダ「でもさ・・・」
たける「・・・なんだよ」
トモダ「なんでお前そんなに、強くなりたいんだ?」
たける「えっ?いやそれは・・・・・」
    黙り込む男子高校生。
たける「違った自分になりたい。からかな」
トモダ「違った自分?」
たける「ああ。そんな感じ」

 校舎裏でタバコを出し、火をつけようとするもライターがつかない。
 いくらスイッチを押しても火はつかない。
たける「クソが」
 素足履きでタバコを吸ってる女子高生・さくら。
 近寄るたける。
たける「あっ、悪い。火貸してくれる?」
さくら「は?」
たける「つかないもので」
  さくらはしかたなさそうにポケットからライターを取り出し、火を差し出す。
たける「あざーっす」
   タバコを吸う。
 たけるの制服を見る。
さくら「ウチの学校の人?」
たける「へっ?」
さくら「制服、明らかに違うから」
たける「あー。オレよそから来たもので」
さくら「なんでいるの?」
たける「ちょっと訳ありでね」
 マイペースに一服する。
さくら「気をつけなよ。見つかったたら、あん  た大変な目に遭うかもよ」
たける「ああ、用が済んだらすぐ帰るさ」
さくら「・・・へえ」
 一服する二人。
 笑い声が聞こえる。
 舌打ちするさくら。
 振り向くたける。
たける「きた・・・あいつらやっぱここの連中だったかちくしょう」
さくら「なんかされたの?」
たける「ああ、ちょいとかりがあってな」
さくら「・・・そういえば、あんたどっかで・・・」
  タバコを投げ捨て、突っ走る。
たける「おいゴラァ!!」
さくら「・・・行っちゃった」

 歩いてくる若者4人。体のあちこちに包帯やばんそうこうなどが、貼られている。
 頬にはあざ。
 たけるの叫び声を聞いて振り向く若者たち。
若者1「あいつ、この間の・・・」
たける「おめえら!誰にやられたかは知らねえがひでえ面だな?」
若者1「てめえに言われたかねぇよ!」
若者2「おめえもボコボコだろうが」
たける「うるせえ!今度は負けねえ!どっからでも来やがれ!」
若者3「口だけは達者だな」
若者4「またコテンパンにされたいか?あん?!」
たける「喋ってねえでさっさとこい雑魚ども!」
若者1「上等じゃねえかゴラァ!!」
  若者たちに挑むたける。
さくら「・・・」
 苦戦するも、なんとか有利になる。
たける「なんだよ。てめえらこんなもんか」
 背後から鉄パイプで殴られ、倒れる。

  目が覚めるたける、若者たちの笑い声が聞こえる。
たける「どこだ、ここ」
ぼやっとする視界が元に戻っていく。
カジノの遊びをしている若者たち。
ここは若者たちの縄張りの廃墟。
たける「てめえら」
若者1「あ、目が覚めたか」
 縄で縛られてる両手。
 必死に解こうとするも余計締まる紐。
たける「くそ!なんだよこれ」
 笑い出す若者たち。
 若者1が近寄り、たけるの顎をくいっとあげる。
たける「離せ」
若者1「ふんっ」
     いきなり殴る。
若者1「さっきの伊勢はどうした!」.
 たけるをタコ殴りする。
  高笑いする若者たち。
 吹き飛ばされる若者。
 振り返るたける。
たける「あの子・・・」
若者「あんたは・・・」
さくら「集団で殴りかかるなんて、男として最悪なんじゃない?」
若者1「やべえ。姉御だ。どうする?」
若者2「どっどうする?ったって・・・」
 震えながら、さくらに殴りかかりにいく若者3。
若者1「あっ、バカ!」
たける「おい!逃げろ!」
 赤い包帯を巻いた片手で、若者3の腹にパンチする。
たける「えっ・・・」
 一撃をくらい、倒れる若者3
さくら「次は、誰だい?」
 若者たちとさくらの戦いを唖然とした表情で見るたける。
 あっと言う間にさくらに倒される若者たち。
 一息つき、たけるを助けにいく。
さくら「大丈夫かい?」
たける「あんたは、一体何者なんだ?」
さくら「えっ?見ての通り。ただの高校生だけど?」
たける「いや、どこがだよ。あんたみたいなのテレビとか映画でしか見たことねえよ。赤い包帯なんかして、マジ何者なんだよ?」
さくら「質問多すぎ。ていうかまずお礼は?」
たける「あ、ありがとう、ございます」
さくら「素直でよろしい。てか取りにくこの縄」
  ナイフを手にし、背後から迫る若者2
たける「危ない!」
  瞬時にかわして、ナイフを奪い取り、若者2を気絶させる。
さくら「これ、借りるよ」
たける「・・・」
さくら「ふう、やっと取れた」
たける「改めて聞くけど、あんたは何者?」
さくら「しつこい」
たける「じゃぁ、言い方変えて、どうしてあんなに強いの?それにその包帯は?」
 たけるの顔面を殴る女子高校生。
さくら「同じこと、何度も言わせるな」
たける「だ、だからっていきなり殴ることは」
 黙ったまま外に出るさくら。追いかける。
たける「待ってよー」

 若者たちのところにリーダー・高倉(18)が通る。
若者たちの姿を見て舌打ちし、足元にいた若者3を蹴り上げる。
転がる若者3。
高倉「みっともねえな。無様にやられやがって」
  廃墟を出たさくらとたけるを睨む。
    ××××
 さくらの後を追うたける。
 うっとうしそうなさくら。
さくら「いつまでついて来んだよ!気持ち悪い」
たける「いや、姉御が認めてくれるまでは・・・」
さくら「認める?なにを?てか何だその呼び方?!やめて欲しいね!」
 早歩きする。走り出してさくらの前に行き頭を下げるたける。
たける「お願いします!僕を、弟子にしてください!」
さくら「はあ?」
たける「オレ、姉御みたいに、強くなりたいっす!」
さくら「・・・なんでそんなに強さにこだわるわけ?」
男子高校生「そ、それは・・・」
 立ち止まる。
さくら「なんの目的もなしに、ただ強くなるってだけじゃ、なにも身に付かない。そんなの、ただの自己満だ」
たける「・・・・」
  さくらはマイペースに去っていった。
 足を一歩一歩踏み入れながら必死についていくたける。

 横断歩道で立ち止まっているさくら。
 柱付近で立ち止まり、さくらについていくたける、振り向かれるとあからさまに知らんふりする。
 青信号になると、突然走り出すさくら。
 慌てて追いかける。
××××
 さくらとたけるの追いかけっこは続く。
 鞄から生徒手帳を落とすさくら。
 手帳を拾い、中を見ると驚いた表情をするたける。

 倒れている若者たちを蹴る高倉
高倉「おいおい!いつまで寝てんだよ!!」
若者1「うう」
高倉「だらしねえな。女にやられたのか?」
若者1「すんません、でもあの女かなり強くて」
 蹴り上げる高倉。
高倉「恥かかせやがって。で?あのアマどこのもんだ?」
若者2「うちと・・・同じ学校のもんです」
高倉「ほう、そうか」

 鳥居に身を隠して覗き見るさくら。
  誰もいないことを確認し、一息つく。
  タバコを取り、火をつける。
たける「姉御ー!!」
  ビクッとするさくら。
 外を確認すると、たけるがいる。
たける「姉御ーー!!」
さくら「(小声)マジかよ」
たける「これ、おとしてますよー!!」
 生徒手帳を上げて叫ぶたける。
さくら「あっ?!」
 振り向くたける。
たける「あっ!いた!もうそんなところにいたんすね」
鞄の中を確認する。
 階段を登り、たける生のところに向かう。
 階段を下るたける。
たける「はい。これ落としてましたよ。てかやっぱ姉御だったんすね。同じ学年なのに、俺よりも年上だったなんて」
  たけるをぶん殴るさくら
さくら「勝手に見んなボケェ!」
  転がるたける。
たける「いってえ、すいません。でも確認は必要でしょう?」
さくら「いや。なんの?、」
たける「誰のか見ないとわかんないっていうか」
さくら「あんた根はお利口さんなんだな」
  手を差し出すさくら、握力が強い。
たける「いててて!ありがとうございます」
さくら「強さに憧れるあんたの気持ちはわかるよ。あたしだってそうだだが、これだけはいっておく。あたしはあんたを助けた。ただそれだけだ」
たける「あなたも強さに憧れてるんですね。あんなに強いのに」
さくら「・・・あたしは」
 赤い包帯を巻いた拳を見つめる。
さくら「ズルしてるだけさ。強いのは自力じゃない。これのおかげ」
たける「それが、強くなるものですか?」
さくら「先輩からの貰い物だけどな。これをつけて事で私は強くなってる。わかったか」
  神社を出るさくら。
たける「あなたは、どうして戦うんですか?」
 立ち止まるさくら。
さくら「私も、強くなりたいから。かな」
  その場を去っていく。
  後ろ姿をただただ見つめる。
 ××××
 壁に寄りかかり、青空を呆然と見るたける。
たける「あっ!」
 ポケットから生徒手帳を取り出す。
たける「やべえ」
 さくらが通う高校へやってくるたける。
たける「姉御いるかな」
 頭をかく。
 倉庫から激しい物音が聞こえる。
 倉庫に向かう。

  さくらが高倉にやられている。
高倉うちの手下が世話になったな。姉ちゃん」
   血だらけのさくら
さくら「絶対モテないでしょ?ブ男」
 蹴り上げるボス、転がるさくら
光景を見るたける。
たける「姉御!」
高倉に拳をぶつけるさくら。
さくら「あたしの拳が効かないなんて」
高倉「女にやられるほど俺は雑魚じゃねえ!」
  震えるたける、ほとんど動けない状態のさくら、咳をする。
高倉「あいつらは強え強えいうからよ。期待してたけど、話にならねえレベルだな。おまけに、変な包帯巻いてて、はずかしくないのか?ええ?!カッコいいつもりかよ」
たける「くそ!」
 地面を叩く。
 さくらが言っていた言葉を思い出す。
さくら(バトンを渡されたからよ。これをもらったからには、私は強くなる。強くなって、暴力や、いじめに合ってる人たちを、助けたい。ただそれだけ。でも、これを託された時、あたしはこれに誓ったんだ。強くなるって)
   走り出すたける。
たける「うおおおお!!」
高倉「!?」
たける「てめえ!女の子を傷つけて!それでもてめえは男なのか?!」
高倉「んだてめえは?!」
たける「うるせえ!」
 殴り合いになるも、高倉に追い詰められるたける。
高倉「雑魚が、勝手に割り込んでくんな。ボケ」  
   足止めするたける。
たける「姉御には手を出させねえ!姉御が、姉御が強くなると誓ったように、オレも、オレも強くなる!」
高倉「なに訳の分からないことを」
たける「俺は、俺はお前を許さない!」
 拳をぶつける。よろめく高倉。
たける「うおおお!!」
高倉「調子にのんじゃねえ!」
  ボコボコにされる。
   さくらの包帯が赤く光る。
さくら「やめろ!」
高倉「ああ?」
さくら「てめえの相手は、あたしだ!」
高倉「いいぜ。こいよ!」
  目にも止まらぬ速さで走るさくら。
高倉「何?!」
   拳をみぞうちに入れる。
 もろにくらい、吹き飛ばされ。気を失う高倉。
 倒れるさくら。
たける「姉御!大丈夫ですか?」
さくら「だから、姉御じゃねえっつうの。痛えな。敬語もやめろ」
たける「じゃあ、なんて呼べば」
さくら「手帳・・・みたんだろ?」
たける「さくら・・・さん」
さくら「それでいい」
たける「あっ、そうだ。手帳。届けに来ました・・・あっ違う違う持ってきた」
 手帳を差し出す。
さくら「あんた、面白いな」
 クスッと笑う。
たける「でも、これからもさくらさんについていきたい!よかったら友達に」
さくら「・・・そうだな」
 赤い包帯を見せるさくら。微笑む。
さくら「あんたに、これを渡せるといいな」
 



 END