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塗料メーカーで働く 第十七話 コンテスト

  1989年11月2日(木)午前10時頃に 技術部の居室の電話が鳴った。

 受話器を取った川緑は 「はい こちら技術部です。」 と言うと 「川緑さん やりましたで! スクリーニングに生き残りましたで!」 という菊川課長の熱気のある声が聞こえてきた。

 この日の1ヶ月程前に 川緑は電気化学実験の結果を基に 硬化性を改善したUVカラーインクを試作して 電線メーカー各社へサンプル提出していた。

 その後 営業の北野係長と松頭産業社の菊川課長は 電線メーカー各社を訪問し インクサンプルの評価結果を聞いていた。

 菊川課長は 電線メーカー各社では この1ヶ月間に 塗料メーカーやインクメーカーから入手したUVカラーインクインクサンプルを評価するコンテストが行われていたと言った。

 彼は 電線メーカー各社でのコンテストは UVカラーインクの候補品を絞り込むための1次のスクリーニングで それに 川緑の試作したインクは生き残ったと言った。

 彼は 続けて 藤河電線社からの情報では 今回のコンテストに参加した塗料メーカーやインクメーカーは総数15社で その内スクリーニングで残ったのは5社だったと言った。
 
 最後に 彼は 「川緑さん 電線メーカー各社さんは 今回のインクサンプルに満足してはいません。
更に硬化性の良いインクを要求しています。 これから1年から2年かけて 彼等の希望するインクを追求するそうです。 ここが踏ん張りどころです。 がんばりましょう。」と言った。

 菊川課長の話を聞いて 川緑は 自分の立てた設計思想は間違ってはいなかったと感じたが 今後のことを考えると 課長以下 実務一人の開発体制は 心もとないと感じた。

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