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北陸応援割の本質を見極める

今年の1月1日、新年明けてすぐ能登を大きな震災が襲いました。ニュースでは200名近い方が犠牲になったと報じられています。令和6年能登半島地震で被害にあわれた方のお見舞いを申し上げます。

現在被災地の復旧・復興に向けて、日本政府も多くの対応措置を行っています。その中のひとつとして、先日、能登半島への観光支援「北陸応援割」が発表されました。北陸応援割は、早ければ3月頃からゴールデンウィーク前の4月下旬までの期間にわたり、石川・富山・福井・新潟の宿泊事業者に対して、宿泊料金の半額(1人1泊につき最大2万円上限)を補助する支援策です。特に被害の多かった能登地方では、さらに手厚い支援が検討されています。

こうした施策は、コロナ禍のときに、飲食業や観光業を支援するための施策として「GoToトラベル」や「全国旅行支援」という名称で展開されるようになりました。今回は、令和6年能登半島地震への支援策としても実施が決まった、この観光支援の枠組みについてお話したいと思います。


観光支援で宿泊料金が水増しされる!?

ネットニュースのコメント欄を見ると「こういった応援割を実施しても、旅館やホテル、観光事業者は、元の宿泊料金を上げてしまうので実質割引にはなっていなではないか」といった意見があります。

たとえば今まで1泊2食付きで1万5000円だった宿泊料金が、旅行支援や観光支援の対象となった場合、2万5000円や3万円に引き上げられるということが起こっており、割引を適用しても結局宿泊者側の負担は割引前とそう変わらないじゃないか、という意見です。

事実、多くの事業者は宿泊料金を上げるでしょう。利用者目線で見れば、支払う料金は旅行支援の開始前と変わりません。そのため宿泊事業者が支援制度を悪用しているという見方に陥りがちなのですが、今回私は「それは違うな」ということに気づいたので、その本質をお伝えします。

被災損失の穴埋めが目的

今回の震災は、年末年始の書き入れ時に発生しました。北陸4県の1月の宿泊施設のキャンセル件数は約17万件にものぼったそうです。予定していた予約はすべてキャンセルとなり、年始の書き入れ時に、見込んでいた売上はゼロになったのです。さらに建物の一部が損壊し、電気やガス、水道などが止まって使えなくなるなど、設備面でも問題が発生しました。

売上がないにもかかわらず、施設の復旧のために従業員には出社してもらう必要がある。そもそも、従業員の生活を考えると給料の支払を止めるわけにはいかない。それ以外にも、営業停止期間中の水道光熱費やキャンセルによる食材のロス、損壊した建物や設備の修理費用の負担等、1月だけで多額の赤字を出したであろうことは容易に予想がつきます。それに対処すべく借金をするのでしょうが、仮に融資が得られたとしても、その返済の目途が立てられないというジレンマに陥ってしまいます。

今後も事業を継続しようとすると、事業者は、この1月に発生した赤字を、2月以降の宿泊代に上乗せしてバランスを取るしかありません。しかし、それをすると宿泊料金が上がり、観光客の回復に水を差す結果になってしまう。だから旅行支援なのです。旅行支援という制度は、その価格転嫁分を政府が肩代わりするという仕組みだったのです。

旅行に行けば支援になる!

被災地支援には、募金やボランティア、物資を送るなどさまざまな形があります。そして、今回の旅行支援を利用して能登に観光に行くことも、とても大切な支援の一つになるのです。

旅行割を利用しても、支払う額は被災前の宿泊料金と変わりません。つまり利用者にとって何のメリットもありません。でも、それでいいんです。上乗せされた宿泊代に対する割引分は、国から事業者に対して支払われる復興支援費用だからです。

自分が1泊するごとに、国は割引額に相当する復旧費用を事業者に支払っているということです。それは、事業者の売上の一部となり、今回の被災によって受けた損失を穴埋めするために使われます。税金は、元をたどれば国民全員が出し合ったお金です。だから、見方を変えれば、みんなのお金が能登の地域復旧のために使われているということ。

そのことを理解しておけば、旅行支援は何も悪い制度ではないし、事業者も得をしているわけではない。自分が旅行に行くことで、その地域の復旧にエンジンがかかるのですから、どんどん旅行に行って欲しいと思います。

さぁみんなで冬の能登へ行こう!

冬の能登はおいしい食べ物がたくさんあります。カニも魚も一番おいしいのがこの時期ですよね。ぜひ旅行支援を使って、宿泊しながら現地へ行ってください。そうすることで、町がにぎやかになり、お宿にも、地域にも、お金が回ります。加えて自分の宿泊代とは別に、政府から補助金が支払われます。それは震災で受けた傷を癒すために使われ、地域の経済を回復させるために循環し始めます。

そんな循環の輪を意識して、ぜひこの制度を利用して遊びに行ってみてはいかがでしょうか。地元の方も、きっと喜ばれると思います。

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