万華鏡 第一曲『常世の理想郷』2

星に住まう生命

【生命育む蒼い星 ヤチマタ】
 住まう知的生命は古来より人間のみにあらず、獣人族、鬼神族、遣鵄族と呼ばれる『人』も共に暮らし、数多の生命が生存している太陽系惑星の一つである。
 蒼い月を衛星としている【ヤチマタ】は、表面積の殆どを海が満たしており、北極南極を除く計七つの列島及び大陸が点在し、欧州大陸を除き、各列島及び大陸を一つの国家が統治している。

―――東北領:平舞領立図書館 『生命記録』より一部抜粋


【各種族の概要】
 【ヤチマタ】に生存し、現文明を築く知的生命は『人(ヒト)』及び、各国の人口の凡そを占める『人間』である。かつては人間よりも人々の生息数が多かったが、底を知らぬ人間による数々の侵略行為により人々の総数は減少の一途を辿り、現在における人々の数は現人間の総人口の1000分の1程とされる。
 以下にはそれぞれの種族における特徴を記していくものとする。
 
人(獣人族)
 古来より蒼い惑星【ヤチマタ】に住まう種族。人の中では最も多い。
 外見は狼や犬、猫が直立歩行のようになった生命であり、人間のように二足歩行で歩き、両手で道具などを使い生活している。身長は大きくなっても1m程度であり、人間や遣鵄族と比べると年齢は一年に二歳加齢し、寿命の限界は最大でも50年程度とされる。
 生きる為に犠牲を出してしまう重い責任と真正面に向き合い、生命に対して感謝の念を捧げて生きる、という意識が強い傾向にある。【万物に生命は宿る。その生命が手を取り合い調和する未来】を道徳心としており他の生物や人と共に生きていたが、世界各地に出現した数で上回る『侵略魔獣・人間』らによって大半を滅ぼされ、真紀2710年現在においては、雅楽とトゥッティ、コーラスに住まう者達しか残っておらず、その殆どが雅楽『平舞領』を占めている……。
 人間を侵略魔獣として恨んでいる傾向にあるものの、総ての人間を排他している訳ではなく共に生きようとする者に対しては認め受け容れており、現在も尚、鬼神族や遣鵄族らと共に暮らしている。
 個体差によるものの卓越した身体能力を持ち、地上での活動において右に出るものは居ない。嗅覚や視力、聴力などにおいても人間を遥かに上回っており知能も高い。彼らは人間と同等かそれ以上に高い技術力を保有しているものの、それを外部に見せる事は殆ど無い。
 
人(鬼神族)
 古くから蒼い惑星【ヤチマタ】に住む人型種族。
 人間と酷似した姿をしているが男女共に美形で、虹彩異色症の瞳を宿し、額からは宝石のように美しい角を生やしている。外見に関わらず非常に怪力で、防護壁であろうとも打撃で木っ端微塵に可能な程。
 病原菌に対する強い体性も有り、二本角を持つ種や、異国では蝙蝠のような翼を宿すものなどが挙げられるものの、基本的にはどれも同じであるとされている。
 性格としては曲がった事を非常に嫌い、正しさを求め続けており、誠実である事を常としている。
 寿命は最大で600年程とされ、一年に一歳加齢するが、これはある一定の時期までの模様で、外見は25歳までは人間と同じように成長していき、それを契機に外見は非常に緩やかに加齢していく。300歳にて外見は30歳となり、以降は400歳にて40歳、500歳にて50歳……という具合で加齢が進行し、凡そ外見が60歳になると寿命の限界で亡くなる場合が多いとわかっており、これを越える個体等は確認されていない。
 個々で多少異なるものの、基本的には獣人族と同じく【万物に生命は宿る。その生命が手を取り合い調和する未来】であるべきという思想と道徳心を有しており、雅楽では人やカガビト、果ては人間らと共に平舞にて暮らしており中心的存在であったが、侵略魔獣・人間らの反逆と侵攻を受けて応戦。生き残った人々を護りながら共に平舞へと逃れた。
 だが、多くの生命を護れなかったのも事実であり、後悔と共に事実は生き残った者達から次の世代へと代々語り継がれており、弱き生命を護り、他の生命を妨げる邪を滅す意思がとても強い。故に、怒りや憎しみを他の種族よりも強く発する体質のようであり、一度暴れれば元凶を消し去るまで見境無き暴虐を揮(ふる)う惨事となる事案も確認されている。
 人の中では個体数が非常に少ないものの、その秘めたる力故に人間らからも恐れられており、神楽侵攻の際も傷を負わせられたとしても殆ど生命を失う事は無かった。
 他の人や人間と比べて子供が出来にくい体質である為、世界的に見ても残っている数は少なく、雅楽での生存している者が最も多く、次いでトリオ連盟、トゥッティの順となり、前述以外の国家では既に駆逐されたとされる。   
 彼ら彼女らは無用な争いを避けるべく人間の姿をして暮らしており、雅楽『東北領:平舞』では人々からの信頼からか、彼らが領域の重役と立場となり、非常に頼られる存在となっておりそのままの姿で居る者も多い。
 人間に対しては信頼などしていない者も多いが、全員が悪ではなく誰かの為に真っ直ぐに生きている者も居る事を知っており、相手を見る目に優れている。
 力に恵まれている故に道具や技術を開発する技術には劣るものの、知識への好奇心は強く、建造技術や武器・道具の鍛錬・製造技術や扱い方に優れており、神具の製造などは彼らが担当する。鬼神族手製の道具や食器、陶器類等は隠れた人気を誇っている。
 
 
 
人(遣鵄(けんし)族)
 古くから蒼い惑星【ヤチマタ】に生息する人型種族。
 人間と類似しているものの、任意で背中に何らかの色の鳥の如きエネルギー翼と尾羽を顕現させて空中を自由に飛翔する。この際、額にもエネルギー状の鉢金が展開し、眼も同様のバイザーで保護される。尚、展開するこれらの色は個体によって異なる。
 普段は無用な争いを避けて迫害を逃れる為に、鬼神族と同様人間の姿をして生活している。
 また、聴力と視力が非常に発達しており、夜間や暗闇においても視界を確保し対象を捉える事が出来る。聴力への攻撃などに対しては自らが持つエネルギーで形成した半透明の障壁を展開して対処しているとされる。尚、脳から発する固有の音波により10~20km圏内の遣鵄族と疎通する事が可能。多種族らが盗聴しても解析不能の為に無駄とされる。
 これらの事から、空中における機動力に優れており、外見に左右されず脚力も非常に強い。その上、武器や道具の扱いに長けており特に潜在的に弓術や射撃を得意とする者が多数を占める。
 人口は獣人族より少なく鬼神族より多いが、人間らの迫害によりその数は他の人々と同様著しく減少して減少してしまっており、現在も尚、研究目的として拉致され、殺害される事件が発生している。
 人の中では警戒心が最も強く慎重で、簡単に多種族と相容れる事は無い。殊更、人間に対しては不信感が根強い。その分、個体差にもよるがずる賢い者も居るものの、誠実に生きる者が大半であり、心を許した相手には尽くす者が多いとされる。また、生涯を同じ番で過ごす事で有名。
 寿命は人間と同程度であり、一年に一歳加齢する。
 基本的に集団で過ごす事は無いが、必ず人が営む街で生活するらしく、雅楽でも生存している者の殆どが平舞で生活している。
 
 
侵略魔獣・人間
 言わずと知れた世界を蝕む『人間』である。
 大陸に住まう者達や人種、個人により思想は異なるものの、基本的に自らの知能を高め欲求を満たす為、自身の快楽の為に他を犠牲とする事を至上の悦びとする。
 かつては人間にとっても女性が神聖視され大切な存在とされてきたが、現代においてそのような価値観を持つ者は非常に少ない。単体や肉体的には大した力は無く、非常に脆弱な存在である。故に、自らの知能を発展させてあらゆる知識と技術を得て、自らの生息領域と繁栄を安定させる為侵略行為を続ける。更に、先述の通り知能も含むそれらを高めるべく他者を見下し、敵対し滅ぼし合う事を強く好み、非常に好戦的な種族とされる。
 『中央領:大和歌』や『西南領:神楽』の教育機関に使用される教科書では、人々を、人間未満である事を意味する『亜人』と蔑称する旨を記述し、『人間こそが総ての生命の頂点に君臨し、神に最も近い存在であり、亜人はその心身を人間様に差し出すか、愚かにも逆らい淘汰されるかのどちらかしかない」』と身勝手な思想を振り翳す事をよしとする記載が為されており、この思想を絶対崇拝する者が多い。
『東北領:平舞』はこの記述、思想に対して抗議を続けている。
 ―――しかし、彼ら人間の中にも、自然に神の存在を見出し、その移ろいと共に生きる者、他の生命と共に生きようとする者、自らの快楽ではなく誰かの為に生きようとする者等、真っ直ぐに生きる善人は確かに存在する。
 人々にも悪人は居る。それも忘れてはならない。
 
 
 
・カガビト(香香人)
『万葉国:雅楽』にのみ生息が確認された人間に属する固有種。だが、殆どその存在に関する記録や情報は残っていない。
 彼らは人間と同じ姿をしており、かつては人々や人間らと共に暮らしていたとされる。
 だが一方で、人間を激しく嫌悪していたとも推定されている。
 決して人間と相容れる事無く、服従もせず懐柔もされずに逆らい続けた為、古代雅楽を治めた大和歌政府の人間からは【まつろわぬ者】とも呼ばれ反逆者の烙印を押された……。
 これ以上の詳細な記録は残っていない。現在の所、人間でありながらも人々と共に暮らしていた彼らが人間と同じ括りにされる事を恥じ、または恐れ、当時の人間らが総ての記録を存在諸共抹消したという説が有力視されている。また、当時の人々が彼らを庇い、敢えて一切の記録を残さなかったという説も囁かれている。

―――東北領:平舞領立図書館 『生命記録』より抜粋


はじめまして、くま機士です。 駄文ではありますが、あわよくば私の描く物語が、激動する世の中で 一生懸命に生きる誰かの心を照らせれば、これほど幸せな事はありません。 もしも宜しければ応援の程、よろしくお願いいたします。