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【超短編】不安

私は今、恐ろしいことを考えてしまった。

もし、もしもあなたが過去に戻れるのなら、
あなたは戻るのでしょうか。

幾年もの間、私を愛していると伝え続けたあなたが、
もし戻るのならば、いつに戻るのでしょうか、と。

思い返せば、何度も何度も迷惑をかけた。
仕事がなんだ、家族がなんだと泣きついた。
あなたにとっては関係ないよね、そんなこと。
自分の手が届かないことで泣かれたって。

あなたの22回目の誕生日には、花束をあげた。
あの時は、「こんなのもらったことないよ」って、困った顔してたね。
後先考えずに選んでごめんね。

この前なんて、私が「明日服を見に行きたい!」って言いだして、
早起きまでしてくれてたのに、「やっぱり今日は行かない」
なんて、わがままでごめん。


もし、もしも私が過去に戻れるのなら……


となりで朝日を浴びて、目覚める私を見つめる23歳のあなた。
意味のない妄想で泣き出す私。
困った顔で私を包み込むあなた。
わからないよね、ごめんね、ごめんね。

「もし、もしも過去に戻れるならどうする?」
「君がいるのに….?」
今まで見たこともないような、悲しい表情をされた。

私はなんて愚かなことを考えていたのか、ここで初めてわかった。


私が過去に戻れるのなら……
数秒前の言葉を取り消したい。



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