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陸の孤島で燃え上がる?税務署員の恋愛!

 前回に引き続き、国税専門官の研修の話
 陸の孤島のような研修所に閉じ込められて、ストレスを感じながら研修を受ける。僕は運動したり、女子とヘラヘラ話しながらストレス解消してきた。真面目なみんなは、よく勉強をし、当然ストレスが溜まる。それが試験後爆発する。
 狭い世界に押し込められてストレスにさらされた男女が、試験後に頭のネジがおかしくなって、恋愛が多発する
 これは大袈裟な話を作っているのではない。実際に税務署員内には「税大マジック」という言葉が存在する。税務大学校にいる多数の男女が「税大マジック」にかかって、研修中に恋に落ちる事が、経験的に証明されているのだ

 まずは大阪局の爽やか君。爽やかな話し方、ちょっと小柄だけど背筋がピンと伸びている、性格もさっぱりしたナイスガイ、勉強も要領よく、顔も薄い、どこから見ても僕とは違って爽やかだ、まるで税務署員には見えない。
 そういう彼と付き合っているのは、これも税務署員には見えない、女優とはまでは言えないけど、アイドルグループにいそうなレベルの可愛さだ。性格もアイドルのように明るく爽やかで、非の打ちどころもない。さすが恋愛偏差値の高い爽やか君は、性格の良い美人と付き合う。性格の良い美男美女が付き合っていると、そこだけ別世界のような気がして、入れない。両者はまさにお似合いで、周りも認めている。こうなると結婚も前提だ。
 その彼が研修所内では易々と浮気をする。相手は本命彼女とは違って、低血圧っぽい感じの血色の悪い、タバコを燻らせる、ちょっとアンニュイな女性だ。そういうのが好みだったのか。それなら、それで本命と別れても仕方ないのかな、と思ったら、全くの浮気らしい。得意げに不倫話をするだけではなく、浮気相手の性癖までペラペラ喋る。
「女がする◯◯ってさ〜、結局◯◯◯だろ〜、すごいんだよ〜」
 下品過ぎだ。書くこともためらわれたが、この信憑性を高めるために必要とを考えて書いたが、結局◯で自主規制する。とにかく下品だ。とても税務職員の話す言葉ではない
 そのあたりで、彼に対する印象がだいぶ変わった。お前なにやってるんだ、ちっとも爽やかじゃないな。ちっとも良い奴じゃないな。最初はあまりに爽やかで立派で、とても僕には敵わないすごい奴だと思ったけど、もうすっかり軽蔑するようになった。

 次のプレイボーイは同じ班の人だった。東京出身で高学歴で洗練された、育ちが良いおぼっちゃま君。顔もかっこいい。同じ班なのでよく喋る機会があり、彼のそれまでの恋愛体験は聞いていて、かなりのプレイボーイだと思っていたが、彼は試験が終わるまでは大人しく勉強をしていた。試験が終わった途端、彼は変わった。いや、変わったのではなく、彼の本性だったのかもしれない。
 彼が狙ったのは、いかにも税務署に入りそうな大人しい黒髪ロングの女の人。それは分かる。プレイボーイは意外と自分とは違う、自分になびきそうもない真面目な女の子にいれあげるものだ。僕が驚いたのは、彼の豹変ぶりだ。今までは温厚で、理性的でスマートな人だと思っていたが、試験が終わると目つきが変わった。豹変という言葉の本来の意味は、もちろん豹に変わるわけではないのだが、彼は獣に変わった。豹に変わった。
 試験が終わってから、研修所を出るまでの期間はそう長くはなかったと思う。相手の女性は他の局の人だ。つまり研修が終わると同時に遠距離恋愛になってしまう。合理的に考えれば恋愛は発生しにくい。しかも相手はプレイボーイとはタイプの違う真面目な黒髪の女性だ。恋愛は成功しそうもなかった。その可能性の低さがハンターとしての彼の本性を刺激し続けたのかもしれない。彼は最後の日までアプローチを続けた。食堂では彼女を常に探し、研修目的で半日バス移動する時は彼女の隣に座り、話続けた。それでも僕は、真面目な彼女は一時の熱情には動かされず、冷静に合理的に考えて、彼をふり続けるものと思っていた。ところが、ハンターはハンターだった。研修が終わるほとんど最後の日に、彼から「付き合う事になったよ」とスッキリした顔で報告があった。すごい。その執念に脱帽をした。これぐらい、一生懸命にならないとプレイボーイにはなれないのか、僕には無理だと思った。

 次はプレイボーイなのか変態なのか分からない人の話。こう言っては何だが、見た目もそんなにカッコよくない。銀行を辞めて転職して税務署員になった彼は、すでに結婚をしていた。結婚をしていたのに、前職の銀行の同僚と不倫をしていた。「お椀型のおっ◯いがたまらないんだよね」と言いふらしていた。これには閉口した。なぜ、不倫をする人は黙っていられないのか。楽しく静かに1人で「お椀型」を楽しんでいれば良いじゃないか。でも、上の大阪局の偽爽やか君もそうだが、そういう人達はマウントを取りたくてやっているようだ。俺、こんないい女とやっちゃってんだぜ、って言いたいのだと思う。
 そんな彼が、とある別の局の女性を好きになった。すぐに告白して、すぐ断られた。そこでどういう断られ方をしたのか知らないけど、彼はいきなり減量を始めた。痩せれば付き合えると思ったらしい。カロリーメイトと水だけの生活で、2週間でげっそり痩せた。その後、その恋は成就しなかった。相手の女性の良識に安心したけど、彼のその熱意は何?っていうのが記憶に残ってしまった。怖いよ。やっぱりそういう人は変態なんだと思う。病気なんだと思う。

僕はあまり不倫とかは良い事ではないと思っている。というか、多分嫌いなんだろう。姉がいた僕は女子と話すことに抵抗がなくペラペラ話すことはあるけれど、それで何かをするつもりは毛頭ない。意外と真面目な方である。当時は今の妻と付き合って数年目であり、盛り上がってはないが、かといって浮気をしようという気はさらさらなく、税大マジックにかかっている同僚たちを冷ややかな目でいていました。

 いろいろ書きましたが、ちゃんとした恋愛もあったはずです。しかも圧倒的にそちらの方が多いはず。でも何年経っても覚えているのは変な恋愛話ばかりです。

 次号も恋愛話は続く

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