こうりん (降臨) 11

最近、湿った大気が流れてきてると言うことで、不安定な天気が続いてる。
豪雨、雷、突風がセットでくる。
テレビでも、雨柱の映像がよく流れる。
青空のすぐ隣で、真っ黒な空から無数の白い線が地表に引かれてる映像は不気味だった。

この日、僕とアマテラスは、またまたショッピングモールに出かけた。
お昼前まではきれいな青空だったのに、フードコートでお昼を済ませて外に出てくると、雲行きが怪しくなってきていた。
雨が降り出す前に帰ろうと、ダックスに乗って走り出したら、雷が鳴り始めた。
黒い雲がどんどん迫ってくる。
冷たい風も吹き始めた。
これは来るな。
と思ったので途中のホームセンターに向かった。
駐輪場にダックスを停めて、駐輪場の屋根の軒下から二人で空を見上げていた。
黒い雲の下に灰色の雲が降りてきてゆっくりと大きな渦を巻き始める。
眺めていると、渦を巻くスピードが少しずつ速くなっていく。
灰色の雲の下に白い雲が降りてきて、渦を巻くスピードがさらに速くなる。
渦の大きさもどんどん小さくなっていく。
白い雲は、3階立ての立体駐車場の屋上階に上がれば、手が届きそうなほど低い。
渦の中心が上へと上がっていき、白い雲が吸い上げられていく。
稲光とほぼ同時に雷鳴が轟く。
こんな気持ち悪い空を見たのは初めてだった。
もしかして、竜巻でも発生するのかな、と思っていると、アマテラスが駐輪場の屋根の下から外に出て、駐車場に歩いて行った。
「危ないから戻ってきて!」
僕の呼び掛けに、ちらと振り向いて小さく頷くと、立ち止まり両手を三角形に合わせて空に向かって伸ばした。
雲の渦のスピードがどんどん速くなっていく。
物凄い速さで白い雲が吸い上げられていく。
アマテラスのミニスカートの裾が風で捲れ上がってショーツが丸見えになる。
稲光が光り、雷鳴が轟くのと同時に、アマテラスの額から両手の三角形の隙間を光の矢が渦の中心に向かって飛んで行った。
稲光とは別の光が、渦の中心に輝く。
直後、地響きのような唸り声と共に、突如、滝のような雨が一瞬降った。
駐輪場の屋根がたわむ。
真っ白に視界が奪われる。
外に立っているアマテラスは大丈夫だろうか。
僕はいても立ってもいられなくなって、駐輪場の軒下から飛び出した。
僕が飛び出すのと同時に、滝のような雨が、ぴたっと止んだ。
思った通り、駐輪場には今の雨でびしょ濡れになったアマテラスが立っていた。
雲の渦の中心から陽光が降り注ぐ。
雲は見てる間に霧散していき、夏の青空が戻った。
雨でTシャツと同じ生地でできたワンピースが濡れて肌に張り付き、下着を着けていないバランスボール大の乳房がくっきりと透けていた。
白いミニスカートも透け易い生地だったので、ショーツがくっきりと透けていた。
「アマテラス!」
僕の呼び掛けに振り向いたアマテラスは、長い髪を束ねた両手で扱くようにして、透けた乳房の前で雨水を搾った。
そして
「ふっ、あ奴め余計な事を。」
と言いながら、僕の方に歩いて来る。
その間に、濡れた服は乾いていき、僕の前に来る頃には、ワンピースの肌への張り付きも、雨水が垂れて透けていたミニスカートも完全に乾いていた。
「さぁ、帰るぞ。」
とアマテラスはヘルメットを被った。
「え、あ、うん。でも・・・。」
「大丈夫じゃ、今日はもう降りはせん。」
僕もヘルメットを被り、駐輪場からダックスを出して乗った。
すぐにアマテラスも僕の後ろに乗ると、両腕を僕の腰に回した。
バランスボールが背中と脇腹を、物凄い乳圧で圧迫する。
ミニスカートでバイクに跨るのもどうかと思うけど、移動手段はこれしか無いし、当人も全く気にしてないようなので、良しとしようか。

「あれはなんだったの?」
部屋に帰ると僕はアマテラスに聞いた。
「あれ、とは?」
「雲の渦の下でやってたこと。」
「あぁ、あれのことか。」
「竜巻でも発生するのかと思ったよ。」
「まぁ、そうじゃな。あながち間違いでは無い。あれはのう、龍神が降りてくるところだったのじゃ。」
「りゅ、龍神?」
「そう、龍神。」
「龍神がどうして?」
「若干、怒りモードであったの。ここのところの人間の環境破壊で。」
「龍神と話したの?」
「さよう、地球温暖化で異常気象が続発してて、それを自然が悪いように吹聴する。全て人間が悪いのではないか、と。」

黒い雲が天を覆い、渦を巻く。
走る稲光、轟く雷鳴。
荒ぶる神の降臨。
「待て!」
それを阻止する声。
「誰じゃ、我を邪魔する輩は?」
渦の中心で地表に凛として立つアマテラス。
「あ奴は伊勢に祀られておるはずだが?そうか、お前か、もう一人の天照。何故、汝れがそこに居る?」
戸惑う荒ぶる神の声。
「最近何やら現世が騒がしいと思うたら、封印から解放されたようだな。」
「お供の風神と雷神はどうしたのじゃ?」
「あ奴らか、汝れの姿を見て何処ぞで震えておるわ。」
「そう。汝れら、最近悪さが目立つようだが。」
「ふんっ!我らがこうして警告してやっておるのに、人間は一向に気づかん。そうは思わんか?」
「汝れの言う事にも一理ある。されど、我には現世の平穏を守る責がある。」
「にしては、大分衰えたように思うが?」
「二千年以上も閉じ込められていたのじゃ、鈍って当然よのう。」
「じゃが、乳がそこまで戻ったのなら、完全復活は時間の問題だな。」
「買い被りすぎじゃな、もう少し時間がかかるかも知れん。」
「にしては、早い回復だな。誰が汝れに力を注いでおる?」
アマテラスから光輝く帯が一人の男に繋がっている。
「そうか、あ奴か。汝れの力の源は。」
「彼に手出しすれば、ただでは済まぬぞ。」
「ふんっ、戯言を。我を誰と思うておる。龍神じゃぞ。そのような下衆な行いなぞせん。ま、どこぞの下劣な奴らがちょっかいを出すかも知れんがな。」
「そろそろ、立ち去る頃合だと思うがな。」
「良かろう、これは封印から解放された祝いじゃ。受け取るが良い。」
そう言い残して龍神は天に帰って行った。
直後、滝のような雨がアマテラスに落ちてきた。

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