こうりん (降臨) 14
女神の日常
彼は朝からバイトに出かけた。
部屋から歩いて10分とかからぬコンビニじゃ。
我が来てから散財が過ぎたようで、申し訳ない気がする。
朝起きてまず朝食の準備をしながら洗濯。
朝食を食べ終えると洗い終えた洗濯物を干す。
それから朝8時から昼12時までバイト、帰ってから、バイト先で買ってきた弁当を食べ、朝食の片付けと洗濯物の取り込み、それが終われば勉強。
夕方から夕食の準備、夕食を食べてその片付け。
夜は我と褥を共にする。
なんと目まぐるしい一日であることか。
少しでも日頃の感謝を込めて我に出来る事はないものか。
そうじゃ、食後の洗い物や片付け、洗濯などは出来るかも知れぬ。
買い出しも、今まではバイクとやらでショッピングモールに行っておったのが、我が来てからは、我がバイクの後ろに座る為、荷物が積めなくなった。
仕方なく今は、日常の買い出しは歩いて15分程の所にあるスーパーに歩いて行っている。
もちろん我も一緒じゃ。
この買い出しも出来るかも知れぬ。
と言う訳で、この事を彼に提案してみた。
「それは助かるよ、ありがとう。迷惑かけちゃうね。」
と申し訳無さげに言う。
「いやいや、迷惑をかけておるのは我の方じゃ。遠慮などするで無い。」
「じゃぁ、お願いしようかな。」
と今現在に至っておる。
まず、洗濯じゃ。
これは簡単。
洗濯物と洗剤を洗濯機という四角い箱に入れてスイッチと言うボタンを押すだけじゃ。
朝、彼が食したあとの食器洗いは、ちと手間がかかる。
乳が邪魔で手が洗い場まで届かぬ。
仕方無く乳を押し潰すように洗い場にくっついて、ようやく洗う事が出来る。
それでも、服の乳の前がびしょ濡れになってしまう。
まぁ、乾かすのは一瞬じゃが。
その後、止まった洗濯機から洗濯物を取り出して、ベランダに干す。
洗濯干しは好きじゃ。
陽光を浴びながら、彼の着ていたものを干す。
服だけでは無く、下着も。
我のものは我の力で瞬間乾燥じゃ。
大家に見つかると困るでの。
天気が良く無い日は、室内干しじゃが、匂いが堪らん。
よって、彼のものも我ものと一緒に瞬間乾燥じゃ。
洗濯が終わると近くのスーパーに買い出しに出かける。
部屋を出入りする際には、彼の容姿を借りる、念の為。
スーパーでの買い物も好きじゃ。
色んなものがあって楽しい。
食材を見ていると、中にはこの時期にこんな物が、と思う物もあるが。
彼と一緒に来始めた頃は、我の乳を好奇の目で見ていた者も多く居たが、最近ではめっきり減った。
レジとやらで代金を支払う。
コロナとか申す病気のせいで、セルフレジに変わった。
自分でお金を機械に入れるようになった。
スーパーから戻ってくる途中で、彼の容姿に変わって部屋に入る。
買ってきたものは全てとりあえず、冷蔵庫と言う中が冷たい箱に入れる。
買い出しが済めば、午前の用事は終わる。
彼がバイトから帰って来るまでの間は、我のテレビの時間になる。
テレビとは、厚みが我の乳首の長さよりも薄くて、縦より横が少し長い板状のもので、中に人が入って居て、話したり動いたりしている。
ボタンがいっぱいついたリモコンと言うものの、ボタンを押すと、中に入っていた人が変わる。
初めは不気味で不思議でならなかったのだが、彼が説明してくれたので安堵した。
何を言っているのか分かりにくかったが、妖怪の類いで無い事は分かった。
良く見るのは、食するものを作る番組と言うものだ。
実際にやって見せてくれるので分かり易い。
この番組のおかげで、彼に食させるものが増えた。
あとドラマと言うものも見るのだが、わざわざ日常を再現する意味が我にはよう分からん。
色んな出来事があるが日常で普通にある事じゃしの。
12時を回って12時30分までには彼がバイトから帰って来る。
バイト先で買ってきたものを食するのを見ておると、心が休まる。
バイト先であった事等を我に話しながら。
それから彼は、ベッドがある部屋の机で勉強を始める。
我は勉強の妨げにならぬよう、そっとベッドから彼を見ている。
夕方になるとまた、慌ただしくなる。
ベランダに干してある洗濯物を取り込み、畳んで仕舞う。
それから夕食の準備じゃ。
まず、炊飯器で米を炊く。
火を使わずして炊けるのが不思議じゃ。
次は肴じゃ。
今日、テレビで見たものは食材が足らぬので明日以降に作る事にする。
今宵は、昨日見た麻婆豆腐なるものを作る。
味はテレビの分量を真似る。
我は味見が出来ぬので、テレビを信じる事にしている。
試しに食した者が、美味い、と言っておるので間違いはなかろう。
夕餉の準備が整うと、彼を呼ぶ。
彼は食すとかならず、美味い、と言ってくれるので、作り甲斐がある。
白飯と肴をばくばくと食べる。
「暑い時に辛いのは効くよね。」
と、汗を流しながら食べる。
「何か食いたいものはないか?」
と聞くと彼は
「冷しゃぶなんかいいな。」
と言ったので
「あい分かった。」
と応えたが、まだ番組では見た事が無いので探さねばなるまい。
と思っていると彼がテレビのリモコンを操作して、ゆーちゅーぶなるものをテレビに映した。
またまたリモコンを操作して、作り方の番組を映した。
作り方が数え切れない程ある。
彼はその内の一つを大きくした。
「これが冷しゃぶの作り方だよ。」
「これがそうなのか。」
何時も見ている番組と若干違うようだが、実際に作っておるし、味もちゃんと分量が出ておるので問題はなかろう。
「分かる?」
と彼が聞いてきたので、こう答えた。
「明日は一番上手い冷しゃぶを準備して待っておる。」
「そうかぁ、今から楽しみだなぁ。」
今宵の褥の彼は、特別熱が入っておった。
我が先に降参したほどじゃった。
いやいや、我の一日の行いを記すつもりが、少々外れてしもうた。
夕餉の後、彼が勉強している間に、夕餉の後片付けをする。
時によっては明朝の準備もしておく。
その後、浴室と言う沐浴の設備で沐浴の準備をする。
沐浴は、もちろん彼と一緒にする。
浴室でお互いを清め合うのじゃが、我の知っている沐浴とは趣を異とする。
シャワーと称するものから雨のように出る水を浴びる。
ボディソープと言う液を泡立て、全身に塗るのじゃが、特に乳と陰部に塗られるのが一番心地良い。
彼は男根に塗られると心地良いらしい。
沐浴の後は、二人でまったりと過ごす。
テレビを見たりゆーちゅーぶを見たり。
我もゆーちゅーぶの見方を覚えた。
後は褥じゃ。
彼との行為が我の力の源なのじゃ。
動く事はもちろん、放出されることも然り。
彼のバイトが無い前夜は、夜通し行う事も珍しくない。
朱美と言う可哀想で卑猥な人形の付喪神に教えてもらったのじゃが、褥の際に、口と乳でしてやると、彼は喜ぶらしい。
と言うので、一度試してみた。
我が男根を口に入れ、また乳に挟むと、最初は驚いていたが、喜びようは尋常では無かった。
それ以降は、毎夜口と乳も使っている。
口内や乳に放出されても、口内であれば飲めば良いし、乳なら拭って舐めれば良いから問題は無い。
後は、我が上の体位で交わったまま、眠る。
我は眠る必要は無いのじゃが、彼を我が体で感じておると心が休まる。
彼も我が乳に包まれて眠るのが嬉しいらしい。
そうじゃ、忘れておった。
あと掃除というものもある。
部屋の掃除、浴室の掃除、洗い場の掃除。
彼からは、あまり力を使わない方がいいね、と言われておるのだが、これだけは力を使って済ませる。
一番面倒じゃからな。
これが我の一日じゃ。
人である彼と、神である我とがいつまでこのようにしていられるのか定かでは無いが、あわよくば彼が人生を全うするまで、添い遂げたいと思うておる。
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