こうりん (降臨) 9

僕がアマテラスと出会った時に、「なぜ祠に入っていたのか、言いたく無い。」と言っていた。
もう話してもいいと思ったのか、ぽつりぽつりと話し始めた。

父イザナギは亡き母イザナミがいる黄泉の国から帰ってきた時に、穢れを祓うため禊を行った。
河の水などで体を洗って、清めるのじゃ。
左目を洗った時、あろうことか父は二度、目を擦った。
一度目に擦って産まれたのが我で、二度目に擦って産まれたのが妹じゃ。
我も妹もどちらもアマテラスなのじゃ。
神界にも双子は要らぬ。
どういう訳なのか知らぬが、妹がアマテラスとして、陽の当たるところに出て行った。。
姉のアマテラスである我はずっと陰の道を歩んできた。
誰にも知られず、じっと過ごしていたのじゃが、疑心暗鬼に囚われた妹のアマテラスは、私を封じ込めさせた。
我は、人知れず山奥に封印された。
妹のアマテラスが畏れたのは、我の力だった。
神力では、我の方が妹のアマテラスよりもはるかに強大だった。
それはお互いの乳の大きさを比べれば一目瞭然だった。
我は数千年もの間、一人孤独でいた。
ある日、小さな地震が起きた後、豪雨が祠のある一帯を襲った。
数日にも及ぶ豪雨で、祠のある山が土砂崩れを起こした。
地震で地盤がゆるんでいたのも影響したのであろう。
祠は大量の土砂と共に川の近くまで流された。
流される途中、祠は木っ端微塵になり、我だけが土砂に放り出された。
もしこのまま誰にも見つけられず割れてしまえば我の命も尽きていたであろう。
じゃが、奇跡が起こったのじゃ。
誰も来ないと思っていたところに、汝れが来て、土砂に埋もれた我を見つけてくれたのじゃ。
それだけでなく、我を連れて帰って、禊までしてくれた。
そして九死に一生を得た我は今ここに居られるのじゃ。

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