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【読書メモ】公民連携パークマネジメント 鈴木文彦著


どのような問題意識でこの本を書いたのか?


老朽化する公共施設の一つである公園も、財政逼迫の中で公民連携による整備が必要性を増している中で、成功事例とそのロジックを明らかにする。

そもそも公園はどのような位置付けでどのような状況なのか?


公園の機能や種別は法律で色々定められているが、どのようなコンセプトで運営するかは個別に決めるもの(地元のための団地の一角の公園、近隣都市から集客する葛西臨海公園、グローバルに集客する大阪城公園)。
例えば人口動態から考えれば、高度成長期は子供が増える中で遊び場が不足していることから滑り台、ブランコ、砂場が設置された児童公園が整備されたし、今後は高齢者の居場所機能、運動やリハビリニーズが高まっていく。
一方で、こうしたコンセプトが曖昧なまま開発を進めることで、ありがちなのが地域コミュニティvs広域集客 の対立。
公園を整備する普通建設事業費は年々減少しているがそれでも3000億円前後で推移しており、維持管理費は老朽化もあり年々増加し普通建設事業費と同等程度で推移。一方、維持管理費の大半は税金と補助金で構成されている。
公園に対するニーズは刻々と変化しており、子供の遊び場から、高齢者の健康増進やカフェ・バーベキューやランニング、防災等多様化している。

そもそも公園は今後どうなるべきなのか?


財政逼迫の中で支出を抑えつつ多様化するニーズに応えるためには、既存公園を公的負担なしにリニューアルする必要がある。また、後述の公園を軸とした街にまとまりをもたらす公園まちづくりが理想的。

稼ぐ公園の稼ぐとは何を意味しているのか?


公民連携により公園の付加価値を高めて、その価値向上分を民間と自治体に配分すること。

そもそもなぜ公園活用で公民連携しなければならないのか?


財政が逼迫する一方で多様化する公園のニーズ変化の対応は自治体リソースだけでは対応できない。そこで公民連携することで、自治体は良質な公園を確保しつつ予算を削減でき、民間は収益を稼ぐことができ、地域住民はエリアの魅力が上がる三方よしが成り立つため。

公園活用に際しては色々な事業スキームがあるが、どのような判断基準で選ぶのか?


顧客ニーズにダイレクトに応えるか、文化教育等普遍的価値重視するかで大きく分かれる。前者であれば民間事業者は収益確保が見込まれるが、後者の場合は収益が稼げるかどうか不透明。ゆえに、顧客ニーズに対応する場合は民間事業者が独立採算で事業リスクを引き受ける手法(管理許可、設置許可、負担付き寄附等)にするし、普遍的価値を重視する場合は行政が事業リスクを引き受ける手法(指定管理者、業務委託、リース、サービス購入型 PFI)にする。

park pfiとは何なのか?


2017年から始まった制度で、 PFI法ではなく都市公園法の制度。趣旨は、これまでも公園活用は民間事業者が20年超の長期で収益施設を設置し独立採算で収益を稼ぎ公園維持費やエリアの魅力向上に貢献してきた事例はあったが、こうした動きを全国で加速するためにパッケージ化したもの。

稼いでも地域住民の生活の質が上がらなければ公園という公共空間を民間に利用されているだけにならないか?公園の周辺への波及効果はどのように考慮すればよいのか?


旧浅草公園のように、浅草寺を中心とした集客力のある狭義の公園があり、その近くに仲見世のような公園集客の恩恵を受ける収益施設が配置され、東京スカイツリーを含む公園、街路、河川で構成される浅草エリアのまとまりを生み出す、といった街の一体化が理想的。
筆者は公園と分散した街にまとまりをもたらす公園整備を公園まちづくりと定義している。

示唆


徒歩から船運、鉄道、自動車と交通手段が移る中でまちの重心も変わってきたところ、人口減少時代の中でまちはコンパクト化に向かう中、時代は再び徒歩を中心とした歩けるまちづくりに向かいつつある。その中で脚光を浴びるのは歴史のある旧市街エリアであり、センスのある事業者が再生に着手すれば輝く地域は多くあるのだと思う。その際に軸となるのが集客の核となる公園整備であり、まちの歴史や環境と上手く調和したものを整備することが求められる。

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