ガチャ合成育成モデルの呪い

パルワールドのヒットについて

今まさに話題となっているパルワールドですが、すごい勢いがありますよね。

もちろんゲームが当たるかどうか、成功事例は運要素も大きいので、再現性がない部分を分析すること自体はあまり意味がないですが、パルワールドでは昨今のヒットしているパッケージゲームが導入している要素である、オープンワールドクラフト&ビルド、そして収集&育成の要素を取り入れた上で、しっかりと全体が整うような設計になっています。(遊ぶとハマる仕組み)

【パルワールド】

このあたりは、もう少しプレイを進めながら掘り下げていって記事にしてみたいとは思っています。

もちろん、ゲームとしての根本のコンセプトが受けた、というのは前提としてあり、ここの部分は運要素が大きくて分析しにくいものではあります。

ただし、しっかりとユーザーに何をどうやって楽しんでもらうのか、を考え尽くされた設計であるという事は伺えます。

では、逆にパッケージゲームではなく、F2Pをメインとしたアプリゲームでは、どういった楽しさを詰め込めば良いのでしょうか?ということについて解説していきたいと思います。




ガチャ合成強化モデルの呪いについて

かつて、ガラケーのブラウザで遊べるブラウザソーシャルゲーム、通称ソシャゲの売り上げが爆発したきっかけがあります。

それがガチャ合成育成モデルというものになります。この記事を読むような方なら、ほとんどの方が知っていると思いますが、このモデルをざっくり説明すると、ガチャでキャラクターのカードを引いて、それをどんどん合成してキャラクターを育成するモデルのことになります。

【ガチャ合成育成モデルイメージ】


このモデルが発明されてから、どのソシャゲにも瞬く間にこのガチャ合成育成モデルが取り入れられていき、ソーシャルゲーム業界全体の売上を大きく伸ばしていきました。

これだけこのモデルが爆発的に普及した理由としては、このガチャ合成育成モデルが、簡単に横展開できるようなものだったからです。

このガチャ合成育成モデルは、言ってしまえば、ガチャを入れて、その出てきたカードを合成させて強化する仕様さえ入れてしまえば、幅広いゲームで適用できるものでした。そのため、ソーシャルゲーム業界全体の売上は爆発的に伸びました。これがソシャゲバブルと呼ばれるものになります。

私がこの業界に入ったタイミングでは既にソシャゲバブルのピークを過ぎていたので聞いた話になりますが、当時は右も左もガチャ合成育成モデルを入れろ、という流れが非常に強かったそうです。

その後、ガラケーのブラウザソーシャルゲームからアプリゲームへと時代が移っていってからも、このガチャ合成育成モデルはずっと残り続けてきて、今ではもはやアプリゲームでは当たり前の要素として認識され、語られることすらなくなっています。

ただ、一方で、このガチャ合成育成モデルの成功体験にとらわれてしまったせいで、アプリゲーム時代以降勝ち残れなかった企業はたくさんあります。

最近出たタイトルも含めて、売れているゲームは当たり前にガチャ合成育成モデル自体が入っているのですが、もはやそれだけで売上が上がることはありません。強力なIP等を使って一時的に売り上げたとしても、結局売上がすぐに低迷してしまう現象に悩まされていることが多いです。

一方で、ここ数年出たタイトルで、ヒットしたあとも継続して売れ続けているタイトルも中にはあり、端的に言うとガチャ合成育成モデル頼りだった企業は、そこから先の+ αの発明をできずに沈んでいってしまったとも言えます。

では、ガチャ合成育成モデルの次の新たな成功モデルはないのか?というと、実はそうではないのです。

その前に、そもそもアプリゲームの面白さとは何かについて解説していきます。

アプリゲームの面白さとは?

そもそも「売れる」F2Pアプリゲームの面白さはどういうものなのでしょうか?
前提として、アプリゲームで課金額が大きな層は30~40代であるため、売上を狙うならこの層をターゲットにする必要がありますが、この層は忙しくてじっくりとパッケージゲームをやる時間が取れないことが多いです。

つまり、ゲームとしてはスキマ時間に手軽に遊べることが必要です。もちろんアプリゲームの中でも、世界観やグラフィックにこだわって、パッケージゲームのようなクォリティのゲームもありますが、開発に膨大な費用がかかりますし、世界観やグラフィックにこだわる方向で品質を上げていくと、高グラフィックのオープンワールドで価格も安いパッケージゲームとの競争にさらされることになります。

なので、F2Pのアプリゲームとしては、基本的には手軽さを担保した上で、ずっと遊び続けられるような別の仕組みが必要になります。

そうなるとアプリゲームでこだわるべきは、世界観やグラフィックと言うよりは、ポチポチ遊びながら楽しい体験を提供する必要があります。

アプリゲームはクリアしないで遊び続ける前提の運用のため、キャラや攻略コンテンツをどんどん追加する運用スタイルになります。そのためには、キャラクターの育成を終わりにさせないように、キャラクターの育成を深くしたり新しいキャラクターを追加して、楽しみの一つである成長実感を欠かさず提供する必要があります。
もう一つは、他のユーザーとの競争や協力関係を楽しみとしたゲームの遊び方を提供します。なので、この成長実感と競争の部分をいかに手軽に体験できるようにするかがF2Pゲームの目指す方向性となります。 

この体験を提供することに特化した、ある形式のモデルがあります。

成功モデルの模倣状況について

その「ある仕組み」のアプリゲームジャンルについてですが、ここ数年、主に日本以外のパブリッシャーから出ているもので、超大ヒットまでは行かなくても、コンスタントに売上を叩き出しているものです。

その仕組み自体に名前が付いているわけではないので、ここでは「無限成長モデル」と名付けて説明していきます。

例えば、2023年にリリースされたタイトルのうち、最高月商順に並べた上位10位までのタイトルがこちらなのですが、

【2023年リリースタイトルの売上(最高月商)ランキング】
データ参照: #セルラン分析 /ゲーム株『Game-i』
https://game-i.daa.jp/

上位に有名IPや高グラフィックなタイトルが並ぶ中、グラフィックが割とシンプルなドット勇者というタイトルが4位にランクインしているのがわかるかと思います。

無限成長モデルの仕組みは、このドット勇者にも適用されており、ガチャ合成育成モデルほどのインパクトは無いにせよ、アプリの売上を着実にかつ継続的に生み出す仕組みになっています。

それ以外にも、この無限成長モデルを採用しているいくつかのタイトルの直近の売上推移のグラフも載せますが、売上が安定しているのがわかると思います。

【無限成長モデルのタイトルの月次売上推移】
データ参照: #セルラン分析 /ゲーム株『Game-i』
https://game-i.daa.jp/


それもあって、数年前から日本のゲーム会社も無限成長モデルを採用しようとしているケースは散見されてきましたが、概ね上手くいっていないものが大半でした。

ここからがポイントで、
「成功モデルを真似しているハズなのに、なぜ上手くいかなかったのか?」
ということがまさに、今回の「ガチャ合成育成モデルの呪い」に当たる部分となります。

先ほどお話しした通り、ガチャ合成強化モデルの仕組みというのは非常に真似をするのが簡単な発明でした。一方で、これから説明する安定した売上を上げる仕組みというのは、表面上の仕組みだけ導入しても安定した売上を継続できない仕組みになっています。


日系企業で導入がうまくいかない事情

無限成長モデルの具体的な詳細は次回の記事で紹介しますが、設計の特徴としては下記の4つが挙げられます。
①深い育成設計
 ⇒キャラ単位でも育成が完了しないくらいの超深い設計と高インフレ設計
②サーバー制
 ⇒インストール時期ごとにサーバーでユーザーを分割して後発ユーザーも初期ユーザー同様の体験ができる仕組み
③大量のコンテンツと育成軸
 ⇒段階的にやることが尽きないような設計と、育成に飽きないような育成軸の多様化
④緻密なバランス設計と徹底的な分析
 ⇒大量の要素をしっかりと成立させるような緻密なバランス設計と徹底的なデータ分析による改善の繰り返しを、タイトルを変え、市場を変えて行っていく運用スタイル

日本企業は割と①〜③まではわかりやすいので導入するのですが、一度失敗すると諦めて撤退してしまうことが多い印象で、④を徹底しているところはほぼない印象でした。

というのも、公には、無限成長モデルを作るためにはこれくらいデータ分析をしているとか、これくらい徹底的な設計をしてるというような詳細な情報はあまり出回ってないので、ここにコストを掛けるという意識があまりないのです。

その結果として、日本企業の無限成長モデルのゲームは上手くいっていないものがほとんどでした。

特に日本企業の場合は、この無限成長モデルを導入しようとしていた時点でもかなり後発だったので、もうすでに何回も試行錯誤して失敗を積み重ねてきた中国や韓国のタイトルと戦っても、当然中々勝てないのです。

また、アプリゲームの市況が苦しくなっているにもかかわらず、無限成長モデルの調整が完了した完成形を前提とした戦略を立てていても、実際はユーザーの離脱ポイントを洗い出しての改善がやりきれていなかったり、ユーザーを維持するために必要な量のコンテンツを提供できていない、ということは多く起こっていました。

その結果、求められる成功の水準は高いが実際は想定した売上が上げられない、ということが起こります。

すると、そもそもこのモデル自体がダメだよね、ということで、次回作以降の改善の余地が許されずにそのまま諦めてしまうケースを多々見てきました。

これはタイトルにもあるとおり、仕組みさえ導入すれば上手くいった「ガチャ合成強化モデル」の呪いではないかと考えています。

実際、パルワールドも4本目でヒットを出しており、それまでの3本のノウハウがあったからこそ花開いた部分も大いにあるはずなので、アプリゲームでもそういった水面下の努力の積み重ねをする必要があったのです。

最近中国や韓国のアプリゲーム会社の方が好調な理由は、中国や韓国はこういった設計を徹底的に行い分析を実施して、タイトルを変え市場を変えてPDCAを回してきたからと言えます。

では日本ではどうかと言うと、パッケージゲームはさておき、アプリゲームにおいてはこういったノウハウの蓄積を中国や韓国の会社に比べると積極的に行なっていないように見受けられます。

これには、日本特有の事情も関係しており、日本企業の場合は認知度の高いIP(アニメや漫画など既に知名度のある知的財産など)が豊富にあり、それらを活用したタイトルが多いため、ゲームの設計よりもIPの力に頼る形に重きを置いていることや、そもそも無限成長モデルを適用しようにも、IPモノは知名度が高いのでリリース初期に多くのユーザーを取りきってしまうことが多々あり、徐々にユーザーを集めて改善して売上を伸ばす運用スタイルが合わないという事情も多少なりともありました。

とはいえ、現在のアプリゲームのなかである程度の地位を築いている、この無限成長モデルをしっかり取り入れて収益を上げる余地はまだまだあると考えていますし、弊社も無限成長モデルに特化した共同開発やコンサルティングも提供しているので、後発でもアプリゲームで収益を上げたい、とお考えの方はぜひ一緒に、アプリゲームでの安定した売上を省コストで実現していきませんか?

次回の記事で、具体的な無限成長モデルの設計手法について説明します。

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