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マルチプレイがユーザーと開発運営にメリットをもたらすカラクリ


ゲームアーキテクトの米元です。
今回は、社内メンバーが執筆した記事を公開させていただきます。



マルチプレイとマネタイズ


アプリゲームを運営するにあたって、ゲームの継続的な運営のためにも、マネタイズは非常に重要ですよね。
アプリゲームのマネタイズにおける最も重要な財源は、やはりユーザーの課金です。

また、アプリゲームには、RPGの中でもMMORPGというゲームジャンルが確立されているように、現在多くのアプリゲームでマルチプレイ機能が導入されています。
今日のゲームに欠かせないマルチプレイですが、このマルチプレイ機能の導入が、ユーザーの課金行動の促進に繋がっていることをご存知でしょうか。

 

課金はゲーム内の効用を高めるための行動


まず前提から立ち返ってみましょう。
なぜアプリゲームのユーザーは、課金をするのでしょうか。
理由としては、新しいキャラが欲しいから、新しい武器が欲しいから、キャラクターを強化したいからなど、様々な理由が考えられるかと思います。

これらに共通して言える行動理由があります。
ユーザーがゲームに課金するという行動の理由、それは、ゲームから得られる効用を高めるためです。
新しいキャラや武器などを入手したり、キャラやデッキを強化するといった行動によって、ゲーム内で得られる強さや楽しさといった効用を高めるために、ユーザーは課金します。

 

では、マルチプレイは、ユーザーの課金行動にどのように影響するのでしょうか。この影響を調査した研究結果があります。
この研究ではリアル(ゲーム外)では知り合いではない人とのマルチプレイは、純粋なゲームの勝ち負けを楽しみ、他のプレイヤーへ様々な感情を抱くことなどが関連し、勝負に勝つために自身を強化しようとするため、ユーザーの課金行動が促進されるという結果が分かりました。

 

《参照した研究》
スマートフォンゲームのオンラインマルチプレイは課金を促すか? (jst.go.jp)

 

リアルで知り合いである人と、リアルでは知り合いでない人とのマルチプレイを比較した時、知り合いでない場合のマルチプレイの方が、ユーザーの課金をより促すということになります。

また、マルチプレイを導入することの利点は課金行動を促進させるだけに留まりません。先程例に挙げた「リアルで知り合いかそうでないか」に関わらず、新規顧客の獲得、さらにはユーザーがゲームから離脱することを防ぎLTVを向上させる働きまでも持っています。

 

マルチプレイによるLTVの向上の例


それでは、マルチプレイが実際どのようにユーザーのLTVを向上させるのか、リアルでも知り合いである人とのマルチプレイを想定した流れを見てみましょう。


①マルチプレイがあることで、友人を巻き込んでプレイするようになる

マルチプレイがあることで、友人間でアプリが話題に挙がりやすくなり、既プレイ勢が未プレイの友人を誘いやすい環境ができ、アプリの認知に繋がる(新規顧客の獲得)

アプリ内に、マルチプレイでしかクリアできないような難しいコンテンツを作成できるようになり、課金率が向上する

マルチプレイによって、協力して挑戦してもらう想定でコンテンツを作成できるようになるため、コンテンツの幅が広がり難易度の高いコンテンツが生まれる。またマルチプレイの有無にかかわらず、難しいコンテンツでは課金率が上昇する(課金行動の促進)

③友人との協力プレイでゲームからの離脱が起こりにくくなる
コンテンツが一人では諦めてしまうような難しいものでも、友人と協力して挑むことで、ゲームからの離脱が起こりにくくなる。(ゲームへの定着)

④友人間で仲間意識が形成されて、ゲームを継続的にプレイするようになる。
時間が経つにつれて、周りが同じゲームをしているからゲームを継続的にプレイしようという仲間意識が形成される(LTVの向上)

 
このような流れで、マルチプレイを土台としてLTVを向上させ、継続的なプレイも見込むことができます。
では、実際にマルチプレイがLTVを向上させた例も見てみましょう。

 

マルチプレイでユーザーに多くのメリットをもたらした例


ここでは、マルチプレイがLTVの向上に効果的であると考えられる例として、マルチプレイでユーザーに多くのメリットをもたらした大ヒットした某アプリゲームの例を取り上げます。

 

①幸運値が最大のモンスターを持っていることが、マルチプレイでより効果を発揮する

・幸運値が最大のモンスターがいれば、クエスト終了時に宝箱がボーナスで2個多く手に入る
・マルチプレイでフレンドのモンスターも幸運値が最大だった場合、そのフレンドのボーナス分も追加で受け取ることができる
・4人とも幸運値が最大であった場合、2個×4人分=合計8個も宝箱が手に入るようになる

この例では、幸運値が最大のモンスターを作ること自体が、ユーザーにとって大きな壁になります。しかし、それを乗り超えて幸運値最大のモンスターを作り上げた先には恩恵がたくさん待っています。そして、マルチプレイで幸運値が最大のモンスターを持ってクエストに挑むと、さらに大きな恩恵を受けることができます。この、最大限の効用を得るという目的があるため、幸運値が最大のモンスターを作る道のりがどんなに長かったとしても、ユーザーは離脱することなく続けられます。

 

②ソロでは難しいクエストも、マルチプレイでクリアできる

・難しいクエストに挑戦する時に、ソロで適正キャラを4体揃えるのは難しい
・マルチプレイで他の人が適正キャラを持っていれば、必要な数が揃ってクエストに挑みやすくなる


この例を見ると、「一人でクリアするのが難しいクエスト」という壁があっても、マルチプレイで自分に足りない部分を仲間に補ってもらいながらクエストに挑戦することで、クエストに挑む敷居が低くなり、さらに友人とプレイするため、ゲームがより楽しいものになります。
また反対に、マルチプレイで自分が友人をサポートする場合でも、他のユーザーの役に立つことにより、英雄感(他人から成果が認められ、自己満足を得て英雄になったかのように思える感覚)を得られるため、ゲームをプレイすること自体や、キャラ・武器の強化へのモチベーションにも繋がります。


課金で成長し壁を乗り越える


このように、今回例に挙げたアプリゲームでは、ソロプレイでは超えることの難しい壁でも、マルチプレイを活用することでその壁を乗り越えさせて、ユーザーを成長へと導き、結果としてLTVを向上させることが出来た、ということになります。

以上のことから、マルチプレイがユーザーと開発運営にメリットをもたらすカラクリとは、マルチプレイが、アプリの認知を拡大し、顧客の課金行動を促進し、そしてゲームからの離脱も防ぎ、LTVを向上させる働きをも持っているからということがお分かりいただけたかと思います。

マルチプレイによってユーザーのLTVが向上することは、アプリゲームを既に運営している方にとっては、既にご承知であり至極当然のことだったかもしれません。しかし、マルチプレイの強みを活かせていないアプリゲームというのも、多く存在しています。
今回紹介させていただいたアプリゲームの例が、マルチプレイを生かしたコンテンツ作りの参考になれば幸いです。


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