義母も女だと思ったとき(その9)

義母は認知症でも、昔のことを頻繁に思い出していた。

誰でもそういう傾向はあるみたいだが、義母は楽しいことよりも辛い思い出を反芻しているように見えた。

ある日、興奮気味に愚痴をこぼし始めたことがあった。

「(鹿児島の)家の電話が通じないからって、○子(義母の娘)が誰かに頼んでウチまで様子を見に来させたことがあったのよ。あの時は受話器が外れてて、携帯(10人に1人も持っていなかった時代に義母は携帯電話を持っていた!)も電池切れで繋がらなかったのよ。でもね、そういうことをされたことが悔しかったのよ。(年寄りだと思って)馬鹿にしてね。腹が立って、しょうがなかったわ!」

義姉の心配は、もっともだと思う。

でも、義母の悔しさも十分感じられた。

義母は学生時代の話もよくしていた。

ある日、二人でバレーボールをTVで観ていると、「私はバレーボールをしていたのよ。9人制でね。でも、背が低いから前衛はやらせてもらえなかったの。いつも後衛でね。その代わり、後ろから大声で指示とかして偉そうにしていたのよ。自分では出来ないくせにね。」などと言っていた。

この話は何度聞いたか分からない。

恐らくアタック攻撃などしてみたかったのだろう。

勉強はクラスの中で誰よりも出来たのに、背は一番低かった。

そのことが義母のコンプレックスだったのだ。

🐶本日もいそろくさんのイラストを使わせていただきました🌸



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