アートとしてのシンプルな香水
香水の特徴の一つとして、香りが徐々に変化するという点がある。どのような香料を使うかはもちろん、どのくらいの量を配合していくかで香水の香り方は全く異なる印象になる。そこが調香師の腕の見せ所だということだ。
もちろん肌にのせる使用者の体質や、気候の変動で同じように香ることは皆無と言って差し支えない(天然香料の場合はとくに)が、基本的には、グラデーションのように徐々に折り重なりながら変化するものであったり、階層のようにはっきりと分かれて時間差で香るようなものなど、それぞれに想定された設計がされている。
香水はアートだという言葉があるが、油絵のように計算しながら塗り重ねていくところといい、鑑賞者によって様々な受け取り方、変化があると言った意味では、確かにその通りだ。調香師は芸術家だと言えよう。
ところでアートにはとてもシンプルで誰が見てもあまり印象の変わらないものもあったりする。
香水も最近、特に日本ではシンプルな調香のものが多く登場し好評のようだ。
古来から香道が親しまれてきた日本も、近代以降下火になってしまった。最近は香害という言葉もあるように強く複雑な香りは受け入れられづらい環境にある。
いわゆるシングルノートと呼ばれる香水が使いやすい時世にあるのだ。
ニッチフレグランスが増え、選択肢が大幅に広がった現在ならではの香水の選び方として、一日の時間帯に応じてシングルノートを数本使い分けていくというのも非常に面白い選択肢になるのではないかと思う。
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