私を思って

「ねぇ、この花の花言葉って知ってる?」
私は近くにいた君に問いかける。
それでも君はこっちを見てはくれない。
「いきなりなんだよ。」
手を動かしたまま君は答える。
不機嫌そうな物言いに思わず胸が痛む。
「別に。」
「まぁいいや。」
そういって君はある程度花に水やりをして、おもむろに立ち上がると、ズボンについた土を払った。そしてやっと私の方を見たあと素っ気なく呟いた。
「じゃあ、また明日。」
「うん。また明日。」
君が少しずつ遠ざかっていく。
君の髪がおもむろに揺れる。
それと同時に優しい匂いが花をくすぐった。小さくなった君の後ろ姿を見ながら思う。
君は本当に何も知らない。何も分かってない。気づいてもいない。いや、私に興味すらない。というよりも、君は私のことがとても嫌いなんだろう。知っていた。そんなことずっと前からわかっていた。
それでも私は君に恋に落ちた。
この想いが報われることは絶対に無いけどそれでも…
そう考えた時また胸が少し痛む。
私はそれ以上は何も考えずに花を見た。
「この花の花言葉前にも言ったんだけどなぁ。」
「私を思ってよ、ばか。」
思わずこぼれた本音は誰に気づかれるわけでもなくただ静かに消えた。


その他


花  パンジー
花言葉 「私を思って」

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