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ベース初心者ですと言い続けて4年

「趣味でベースをちょっと弾きます、初心者ですけど」

いつもこう答えてしまうのは、自分の腕前に自信がないからだ。自分でベースが上手いと思ったことは一度たりともないし、もっと言うとベース弾けますともあんまり言いたくない。いやーまあ弾くっていうか、全然初心者なんですけど、ちょっと友達と曲を合わせてみたりしてます、へへ、みたいな逃げの回答ばかりしてきた。

だけど今年はちょっとした飛躍の年になった、と言ったら過言だが、一歩進んだなという確かな感覚があった。
この感覚を忘れたくないので書こうと思う。

ベース歴

ベースとはバンドの中で低音を担う、ギターよりちょっと大きい弦楽器である。なんでそんな初歩的なことを言い出したかというとベースを始めたときの私はそんなことも知らなかったからだ。

中3の秋くらいに友達から、高校からバンドやりたいからギターかベースやって、と誘われた。違いが全くわからなかった私は両方の楽器の体験教室に行き、「ギターは和音だけどベースは単音なので弾くのが楽そう」という理由でベースを選んだ。無事ギターもキーボードも見つかり、「コバルトサンデー」というガールズバンドを組んだ。

それから2年間、とにかく楽しいバンド活動をした。YUI、椎名林檎、ポルノ、木村カエラ、いきものがかり、いろんなコピーをどんどんやった。毎週死ぬほど狭い部室に集まり、壁にTAB譜を貼って壁を向きながら練習した。飽きるとすぐにパートを交換して遊んだ。いつも「曲になる」ことを目指してやっていて、難しいソロは潔くカットした。BPM180の8ビートがキツくて4ビートに変えようとしてメンバーに却下された。ベースの出音で気にしてたのは音量だけだった。

でも楽しくて楽しくて、あの頃の私たちは最強だった。2年間で5回くらいライブをやって、最後は文化祭の後夜祭でデカいステージで矢井田瞳の「My Sweet Darlin'」をやって、コバルトサンデーの活動は終わった。


社会人になって、友達に誘われて軽い気持ちで社会人軽音サークルに入った。見学したときみんなの上手さに若干引いたことをよく覚えている。
だから私は「ベース弾けます」とは言えなかった。
コバルトサンデーでの活動を「高校のときちょっと触ってて…」と言いわけみたいに伝えて、すごく恥ずかしいような悔しいような気持ちになった。こばさんのみんな、ほんとごめん。

その瞬間から私は「ベース初心者」になった。


今年の進歩

それから4年、ライブが出来ない期間も挟みつつ、ゆるゆるとベースを続けてきた。いくらライブに出ても初心者ですと言い続け、実際特に上手くなった実感もなかったのでライブ後褒められてもヘラヘラしていた。というか褒められる内容も「本当に楽しそうに弾くよね」「コーラスがきれいだった」が多かったのでつまりそういうことだろう。
だけど今年は3つの大きな出来事があった。

①スピッツ
スピッツは私が小学生のときから大好きなバンドで、だから歌声の大好きな女の子に誘ってもらったときは嬉しかった。メンバーとLINEでヤイヤイ候補を出し合って、大盛り上がりで曲を決めた。
なのに初回のスタジオで全然弾けなかった。暗譜できてなかったのだ。迷惑をかけたことが恥ずかしくて情けなくて今思い出しても泣きたくなる。

こばさんでは初回の練習までに暗譜という概念はなかった…っていつまで言ってるんだこんな言い訳。もうベースを再開して4年目だ。

とにかく猛反省して落ち込んで帰って、それから毎日必死で練習した。何度も何度も通して弾いてたらようやく覚えられてきた。これまでの「わたしは初心者だからできない」と思ってたのはただの練習不足だったと気づいてまた死にたくなった。

本番は楽しかった。楽しかったが自信はなかった。ボーカルが本当によかったのでこのバンドで大好きなスピッツを壊さず伝えられたら嬉しいな、みたいな気持ちだったと思う。打ち上げで「まえりちゃん本当にベース上手くなったよね、こう言うと上から目線みたいだけど」と褒められてすごく嬉しかったけど、でもお世辞だろうなと思ってた(ごめんね)。

打ち上げ後友達の家に行ったら、友達が今日の動画を再生しはじめた。弾けてないのを再認識するの嫌だなあと思いながら大きいテレビで動画を見ていたら、思ったより全然ちゃんと弾けていた。「弾けてんじゃん」と言われてあ、あの子の言葉もお世辞じゃなかったんだとようやく受け止められた(ありがとうね)。

猛練習すれば私でも弾けるんだとわかった瞬間だった。
そんなことみんな知ってるんだろうけど。


②tricot
今いちばん好きなバンドは?と聞かれたらtricotと即答する。2016年頃その存在を知って以降、東京神奈川で開催された主催ライブはほぼ全部行ってるし、去年のツアーは大阪も行った。
でもtricotは変拍子を多用する不思議な曲構成のバンドなので、自分が演奏することはできない、というかそんな機会は来ないと思っていた。だって無理だし。

だけど、友達にtricotをやろうと誘われて私はベース下手だからと断ったとき、「本当にtricotが好きな人とやりたいんだ」と言われて私はびっくりしてしまった。本当に好きかと聞かれたら自信を持ってYESと言える。そういうのでいいのか、と。

そうして1曲ライブでtricotをやることになった。組んでから一度延期したこともあって練習期間はたっぷりあったので、スピッツでの反省も活かして何度も何度も通して練習した。最初は全く理解してなかった曲構成も徐々にわかってきて、本家のライブに行くときの見方も変わってきた(この練習期間中にtricotのライブは3回行った)。

緊張して迎えた初合わせ、なんと、人生でいちばん手ごたえがあった。ほっとして楽しむ余裕ができて、1曲だったこともあって細かいところも詰めながら進めることができた。3回目の練習では時間も余ったので頭を振りながら演奏する練習もした。
本番も楽しかった。頭はいまひとつ上手く振れなかったけど、あの疾走感はちゃんと私が大好きなtricotだった。

私が神聖視しすぎてるのかもしれないが、私がtricotをできる日が来るとは…と感慨深かった。

ギターの躍動感がすごい

③相対性理論
理論は昔からいつかやりたいと思っていたバンドだった。意を決して絶対この人に歌ってほしいと思っていたボーカルに声をかけたら二つ返事でOKしてくれて、ギターもドラムも、メンバー全員が理論ファンという最高のバンドが組めた。

しかし理論はベースが今までやったどのバンドよりも目立つ。ある曲では主役のように目立ち、また別の曲は今まで弾いたことない速さのフレーズがあり、さらに別の曲は変拍子なのに楽譜も弾いてみた動画もなくて耳コピしなくてはいけなかった。怯えながらもこれまでの教訓を活かしてとにかく、とにかく音源に合わせながら通し練習をした。(普通すぎる)

その甲斐あって、練習でも細部を詰められたし、本番でも楽しくかつ自信を持って弾くことが出来た。今までのライブでいちばん笑顔は少なめだったと思うが、それは真剣だったからで、友達が撮ってくれた写真の中で真顔でベースを弾く私を私は誇りに思う。

打ち上げでベースがめちゃくちゃ上手い先輩に「あんなフレーズも弾けるようになったんだね」と言ってもらったとき、心が震えた。そしてその瞬間、もう初心者を名乗らなくてもいいかもしれないな、と思った。

ちなみに翌日ライブ動画をイヤホンをつけて見てみたらちょっとゾッとする出来だったので(特にベースが目立つ曲)、本番後に当日の動画はイヤホンで見ないこと、というのも教訓に付け加えておこうと思う。


これから

このnoteを書きながら、人生でコピーした曲のプレイリストを聴いていた。コバルトサンデーから最新の理論まで実に47曲、全部合わせて3時間もあって、うん、ちょっとグッとくる。

私がベース初心者と名乗ろうがベーシストと名乗ろうが、知ったこっちゃないかもしれない。でも私の中では確実に一歩前進だなと思えた。
まだまだコピーしたいバンドもあるし、スラップだってやってみたいし、音作りだってできるようになりたい。「ベースが得意」と言えるまでの道のりは長いけど、伸びしろがたくさんあるということにしておく。

尊敬するギターが上手い友達が「みんな毎日30分練習すればいいのに」と言っていて、それが心にぐっさりと標識のように突き刺さっている。毎日は出来ないかもしれないけど、私だって練習すれば弾けるようになるんだというこの感覚を忘れずに、これからも練習あるのみで楽しく弾き続けたい。


精進精進!

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