東大英語リスニングの対策

今回は東大リスニングについて書きたいと思います。僕自身英語がかなり苦手ですのでリスニングの勉強には苦労しました。そして満足のいくレベルのリスニング能力を身につけることができませんでした。しかし、戦略的な面を工夫することで自分の実力を最大限に発揮し、できる限り高得点を取る計画をたてました。その結果リスニングの難易度が高くなったと言われる2018年で26点 2019年で22点 2020年で24点と いづれも自己採点の結果ですがリスニングが足を引っ張らない程度までにはなんとかなりました。あらかじめ注意していただきたいのはあくまでもこの記事は東大リスニングの戦略に重点を置いた記事ですのでそれを踏まえた上で読んでください。そもそも英語が全然できない人がこの戦略ばかり磨いても得点は伸びないと思います。

まず東大リスニングの難しさについてです。これは実際に東大で受けた人しか分からないことですが、教室によって聞き取りやすさが異なります。これはもうどうしようもないことです。東大受験の教室は科類ごとに分けた後アイウエオ順に割り振られますので苗字で大体どの会場になるかが分かります。身の回りに東大に合格してかつ苗字が似ている人がいればその教室の音響について聞いておくと役立つと思います。実際にいなくてもネット等で情報収集することが可能ですので東大受験が終わって間もない今可能でしたら情報取集しておくことをおすすめします。僕が受けた理三の会場は今年から農学部ではなく正門近くの法学政治学系総合教育棟という建物でした。一教室80人収容の大きさでやや聞き取りにくかった気はします。この聞き取りにくさを詳しく説明しますと
①音が小さい
②ごもごも喋っているのど聞きにくい
③アメリカ英語以外の訛り イギリス英語など やや聞き取りにくい英語を話す
という点があげられます。特に現役生はこの情報を知っているかどうがで本番の心持が変わってくると思います。要するに本試験は思っている以上に聞き取りにくいです。それでも合格者は得点してきます。聞きやすい音源だけでなく、音を小さくしたりイヤホンを使わない練習も可能ならしておいた方がいいと思います。音声が聞き取りにくく焦ってしまうと英語を聞き取る集中力にも影響しますのでこの本試は聞き取りにくいという情報は常に意識して動揺しないようにしましょう。

次に東大リスニングの問題についてです。東大リスニングの問題には3ABCの3種類あります。年度によって異なりますが大体Aが講義内容 Bはその講義を受けた対話文 Cはラジオの放送やエッセイといったやや具体的な内容の聞き取りになっています。このような3種類のリスニング試験を行う目的は何でしょう?あくまでここからは僕の推測ですが、Aのような講義はあるテーマについての講義が行われ、そのテーマの概要が掴めるかを問う問題です。大学の一般教養で学ぶような心理学や社会学をテーマとした講義内容をちゃんと聞けるのか?要するに英語で授業受けれますか?ということが問われていると思います。Bはその講義を受け複数の人物がそのテーマについての意見をそれぞれ言い合うディスカッションを聞きその人物がどのように考えているのかが把握できるかを問う問題です。グローバル化が進む現代は日本人だけでなく様々な人と意見交換をする機会が東大に入ったらあると思います。そんな中まずは相手の意見を聞いて理解できるかどうかの資質が問われているのではないでしょうか?Cは講義というよりかはもう少し身近なトピックがテーマです。大学での学びに限らず様々な英語を聞きとれるかが問われていると思います。これらの出題意図を踏まえて対策を考えてみましょう。

まずAからです。講義内容は基本的に主張が一貫しています。今年のリスニングの内容でしたら庭師型と大工型の対立する2種類の子育て論についてでした。これが理解できるかでリスニングの得点が大きく変わります。1Aの要旨要約問題ではありませんがこのレクチャーは要するに何について言いたいのか?これを意識して聞くことが大切だと思います。普段のリスニングの練習でこのような要するに何を言いたかったのか?というのを自分で簡潔にまとめる練習をするといいかもしれません。少しレベルは高いですが有名なものでTEDという優秀な人たちの様々な講演を聞けるものがあります。語彙レベル的に全ての内容を聞き取るのは難しいですが、この論旨をくみ取る練習には使えます。また講義内容も幅広いトピックを扱っていますので自分が興味のある内容を楽しみながら聞くことができます。


そしてAの設問についてです。Aの設問の多くはこの全体の主張が分かっているかを聞く設問が多いので、この論旨を意識した聞き取りを行うことで明らかにその主張と方向性が違う選択肢を選ばなくなります。例えば環境保全のための対策の講義内容があり設問で
「次のうち著者の意見に最も近いものはどれか?」
という問いがあったとします。選択肢を見たときに
都市開発を進めるべきだ
日本はもう自然を取り戻せない
といった明らかに趣旨と異なる意見を選ばなくなります。そして逆に筆者の主張に合う選択肢が答えの可能性が高いとなるわけです。
注意点としては全ての問題が筆者の主張通りに答えればよいのではなく not mentionといった言われていないもの 
least likelyといった筆者の主張とは逆のものを選ぶ質問もあるのでそこは設問文をしっかり読んで答えてください。

続いてBです。Aと講義内容についてのディスカッションなのでAの論旨が分かっていないとBも解答が困難です。ディスカッションの主軸はAの内容について賛成or反対です。例えばAの内容で先ほどように環境保全のトピックがあったとします。それを聞いて生徒Xは僕も賛成だ なぜなら~というように主張が展開されます。一方それを聞いた生徒Yはいや日本経済発展のためには開発は仕方ない というように対立する意見がでてきます。中にはもちろん一部賛成一部反対のような意見もありますが、大切なのは登場人物がトピックに対してそれぞれどのような意見をもっているのかを把握することです。Bの設問はXさんはどう考えているか?Yさんはどのような意見か?のように複数の登場人物の意見を問うタイプが多いです。その応用としてXさんとYさんの意見で共通していることは何か?や登場人物が全員関心のあることは何か?といった問題もあります。これも同様に誰がどんな意見なのかを聞き取れることで解答可能になります。

最後にCです。この傾向が続くかは分かりませんが、CはAやBと比べて具体的なこと、細かいことが聞かれることが多い気がします。年代や数値といった数字を聞いたり具体例で列挙されていないものを答えろといった設問となります。これらの問題に答えるためにはABのような趣旨を掴むことを意識した聞き方ではなく下読みをして解答根拠になりそうなところを頭にいれて聞く意識が必要です。

以上が各大門で聞き取りの際に意識すべきことでした。次はリスニングの設問の作られ方です。ある程度リスニングの勉強をした人なら内容は分かったはずなのに正しい選択肢を選べなかったという経験があるのではないでしょうか?実際に僕がそうでした。もちろんリスニング能力が足りないことが原因であることもあるのですが、選択肢に騙されて間違うという事態があります。なぜ選択肢に惑わされるのでしょうか?僕はここ5年程度のリスニングの選択肢を研究しました。古すぎる問題は簡単すぎるので主に2015年以降を研究しました。正しい選択肢以外の作られ方は主に以下のパターンです。
①本文中に一言も出てきていない全然関係ない選択肢
②本文中に選択肢の一部のwordsは出てきたが、内容に傷がある選択肢
③内容的には間違っていないが、設問の解答にふさわしくない選択肢

①は正直間違っていることを見抜くのは簡単です。そもそも言われてないのであてずっぽうで選ばない限り選ぶことはない分かりやすいfakeの選択肢です。問題は②③です。

②は曖昧にしか内容が聞き取れていなかったり、断片的にしか聞き取れていなかった場合に選んでしまう可能性があります。1回目の放送の後選択肢を選ぶ際に迷ったら解答根拠を明確にするために迷った選択肢の箇所を重点的に聞きましょう。
選択肢にあるwordを話してはいるがその後否定している
そのwordは放送されたけど別の内容についての言及である
といったfakeの選択肢のパターンがありますので本当に聞こえたwordが選択肢として正しいのかを検討するように2回目で聞き直しましょう。

③は内容が聞き取れていても設問にきちんと答える意識がないと間違えてしまうことがあります。実際に例を出してみます。本試験の2014年の3Aの問1を使います。問題やスクリプトは赤本やネットから確認して下さい。
設問文はこのようになっています。
Why were there no zoos in prehistoric times?
ア Because wild animals were frightening.
イ Because wild animals were thought to be sacred.
ウ Because wild animals were a normal part of everyday life.
エ All of the above.
さすがにここにスクリプトは載せられませんが、選択肢アイウの全て本文中で言われていることで間違いではありません。しかしアイは動物園がなかった理由ではなく、昔の人が野生動物に対して抱いていた感情ですから
言っている内容が正しくても設問の解答にはならない選択肢です
このような選択肢を選ばないためには設問文の要求をよく読んで答えることが大切です。もちろんリスニングの試験は時間がなく余裕がないので難しいことですが、いかに下読みの段階で設問文を頭に入れるかが重要になります。

下読みについてです。2018年度から選択肢の数が4つから5つに増え時間的な制約が厳しくなりました。やや逆説的ですが、英語が苦手な人ほど他の大門の解答時間を早めて下読みに時間をかけるべきだと思います。今年の入試は僕は下読みに10分かけました。個人差はもちろんあると思いますが、下読みがどれだけ十分にできたかどうかによってリスニングの点数を左右されるといっても過言ではないと思います。下読みの際に僕がやっていたことは
①設問のキーワードを頭に入れる
②聞かれている内容がgeneral なことなのかspecificなことなのかを把握
③話の全体像を大まかに予想
の3つです

①は設問におけるキーワードを頭に入れることです。更に言ってしまえば記憶してしまうことです。言語能力によってこの文章の短期記憶力は個人差はありますが、日頃から訓練を行わなければ能力は向上しません。イメージはリスニングの試験が始まる直前に問題冊子を見なくても5問のキーワードがすべて思い浮かぶ状態にする感じでしょうか。もちろん全ての問題にキーワードがある訳ではありませんが放送が流れている間は放送内容を聞くことだけに集中できるよう極力問題を見るタスクをしなくて済むようにすることが目的です。

②は設問の内容が全体像にかかわるgeneralなことなのか細部を問うspecificなことなのかを把握します。このことを東進の宮崎先生の東大リスニングの教材から僕は学びました。generalな内容を問う設問なら①のキーワードを把握して設問に答えるために聞くというよりかは全体像を掴むことを意識し、該当箇所になったら集中力のギアをあげるイメージです。specificなことを問う設問は全体像を捉えることよりも解答箇所がどこになるかをより意識します。ここ最近多い設問形式はnot mention型の言われてないものを選ぶ設問です。このタイプは放送文が終わってから解答するより放送文を聞きながら消去法で解く方がベターだと思います。細かい内容ですと放送文が終わった時には内容を忘れてしまう可能性が高いです。かといってずっと設問文に集中してしまうと肝心な放送文を聞くというタスクが疎かになってしまいます。リスニングの難しさはこの集中力がその時に欠けてしまえば解答が絶望的に不可能になってしまうことです。数学の問題とがですと焦っている時はその問題を飛ばしてそのあとのまた挑戦するということが可能です。しかしリスニングは全受験生が英語の試験開始45分後から30分続けて解答しないといけません。普段から聞く集中力を養う訓練をするとともに集中力のキレ オンオフのメリハリをつける訓練が大切だと思います。この問題に応じた準備をしっかりと行い、聞くことに集中する時と問題に解答するときのスムーズな切り替えが必要なことは東大リスニング特有の難しさだと思います。

③は半ばその人の今までの読書経験等によると思いますが、話の展開を予想することで内容が頭に入ってきやすくなると思います。リード文や設問を利用してこのあと話がどう展開されるのかを予想します。東大リスニングのテーマは一般論というよりかは一般論に対して異議を唱える話であったり、新分野の研究といった革新的なテーマが多い気がします。このようなテーマを正確に予想することは困難ですが、教育論、芸術論、科学論といった程度の予想は可能だと思います。裏を返せば下読みをして何もテーマの検討がつかない人はそもそも英語に触れてる数が少ないことを意味することになります。リスニングとはいえ英語の試験ですから個人の今までの英語経験が実力になります。リスニングに限らず英語の総合力を上げていくことがリスニングの成績向上につながることは間違えないと思います。

各予備校の模試のリスニング問題について
あくまでここ5年の問題を傾向であり、今後も同じとは限りません。また年度によっても難易度は大きく変わりますので参考程度にしてください評価は僕の主観に基づく3段階評価です。

駿台 東大実戦
難易度 ☆☆(標準) 質 ☆☆☆(良好)
東大本試に近いかはさておき一番オーソドックスな出題が多いと思います。模試を受けた後音源のCDの配布をやめてしまったため復習しにくい点が少し欠点

河合塾 東大オープン
難易度 ☆☆☆(難) 質 ☆☆☆(良好)
普通に難しいです。河合のレベルで高得点がとれれば相当な実力の持ち主です。もちろん実施年度によりますので平均点等と見比べて判断して下さい。試験後には音源のCDを配布してもらえるので復習もしやすいです。

代ゼミ 東大プレ
難易度 ☆(易) 質 ☆☆(標準)
特に第2回のもので顕著なのですが、めちゃくちゃ簡単です。放送文が簡単というよりかは選択肢の作りが簡単なので極論を言えば音声を聞かなくても勘で半分以上は正解できるだろうという問題です。

東進 東大本番レベル模試
難易度 ☆~☆☆(易)~(標準) 質 ☆☆(標準)
代ゼミほどではありませんが簡単な問題が多い印象です。やはり簡単さの原因は設問が簡単なことです。

ここで恐ろしいことをお伝えします。例年秋模試は河合塾、駿台、代ゼミの順番で実施されることが多いです。実はこれリスニングが難しい順に並んでいます。そして最終の東進の本番レベル模試がセンター後にあります。実際は難易度が全然違うにもかかわらず模試の成績表のリスニングの部分だけを見るとリスニングの成績がどんどん伸びているかのように錯覚してしまう可能性があることです。残念ながらリスニングの成績は短期的に伸びるものではありません。もちろん例外もありますが模試の成績だけを見て自分の能力を判断してしまわないようにしましょう。良かった模試の結果を信じたい気持ちは僕もよく分かりますが、東大本試で痛い目に合わないよう謙虚に努力を積み重ねていきましょう。

東大リスニングの教材についてです。
基礎的なリスニングの勉強に使う単語帳のCDとかではなくここでは東大リスニングの演習用の教材についてのみ話します。過去問や模試の問題を除けば10年前でしたらキムタツ一択でした。しかし2016年に鉄緑会から東大リスニングの教材が発売されました。古い東大英語の勉強法のサイトを見るとキムタツがおススメと書いてあることが多いと思います。しかし僕から言わせてもらうとクウォリティーは雲泥の差です。キムタツ先生が嫌いな訳ではないのですが、キムタツをおススメしない理由は
①設問の作り、選択肢の作りが雑
②内容が偏っている(文化系がやたら多い)
③単語がやや難しい(これはキムタツ系の英語教材全般にいえる)
です。一方鉄緑会の教材は
①設問 選択肢のつくりが良質 本試に近い
②内容が面白い 幅広く扱っている
③いろんな訛りの英語が入っていて多彩な英語を聞く練習になる
僕は鉄緑の教材が断然おすすめします。もし鉄緑の教材が終わってしまったならキムタツもやってもいいと思いますが本試験の前にやるのはおススメしません。たとえるなら鉄緑がセンター国語の過去問、キムタツがマーク模試の国語の問題集といった感じでしょうか もちろん色んな英語を聞くという観点でみれば為にならない英語なんて存在しませんが、東大リスニングでの戦略を磨くなら本試験、模試の過去問、鉄緑の教材以外ですと難しい気がします。ここ5年で東大リスニングはかなり難化していると思います。センター英語が8割レベルだった僕が現役の頃(2014年)東大を受けて16点くらいとれてしまうレベルでした。古い情報を信じすぎずこのnoteを読んでいる方々が最新の東大リスニング対策を行い、本試験で良い点を取れることを願てます。

そして最後になりましたが、僕が東大リスニング対策をする際によく参考にしていた東大生の方が書かれた東大ブログの記事のリンクを貼っておきます。この記事の内容と重なる部分が多いのはもちろん僕が参考にしていたという理由もありますが、真剣に東大リスニングを研究した結果同じような結論にたどり着いたという理由も大きいと思います。この方は非常に東大英語に長けている方であり、リスニングの記事以外にも参考になる記事がたくさんあると思いますので是非見てみて下さい。
(本人の許可を頂いております)

難化が続く東大リスニングは今まで以上に戦略の重要さが高まっています。必ずしも僕と同じ対策をすれば上手く行く訳ではありませんが、各自研究を重ねて東大リスニングで得点ができる作戦をたてることが大切です。もちろん純粋な英語を聞き取る練習、単語文法といった基本的な要素も疎かにせず総合的に東大英語の得点向上を目指していって下さい。

2020年3月2日 片山湧斗

追記
現在私は医学部予備校レユシールという予備校をプロ講師と共同経営しており、東大理三志望の受験生を中心に医学部受験生を指導しています。実績のあるプロ講師と高い学力を誇る東大理三生講師による完全個別指導により医学部合格まで徹底的にサポートする予備校となっております。また医学部予備校という名称ではありますが、私自身の経験を活かし、理科三類以外の東大受験生の方も多数指導しております。特に独学での勉強が困難な東大現代文の添削指導は多くの東大受験生の方に受講していただいております。興味をもっていただいた方は以下のリンクから当予備校のホームページをご参照ください。

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