『磯臭い』に付随する話~地球は広いけど、やっぱり狭い~


海の塩分濃度が違うことが原因で、磯臭くない海がこの地球上にある、ということを私はこの間知った。

場所によって海の色が違うことも、生息している魚が違うことも知っているのに、どうして海の塩分濃度が世界中でそう変わらないと思っていたのか。己の想像力の欠如にもはや脱帽。

お風呂かプールだとでも思っていたのだろうかね、私は。
そんなわけないだろって。

地球は7:3で海のほうが陸地より広い。公然の事実である。
塩分濃度が変わるほどに、その7割の海は広い。
一方で、つまり人間は、この地球上の3割程度にしか生息エリアがないのである。

いくら、地球がでかいったって。
約78億人住むには、陸地、狭くない?

もちろん、陸地だってとても広大で、生きている間にすべての土地はもちろん国を巡ることもなかなか難しい。
47都道府県ですら、下手したら難しい。そして海底ほどではないにせよ、まだまだ未知のエリアだって沢山ある。

でも、それでも。

やっぱり陸地の3割に人がおさまっているから、狭くもあるのだ。
そう思わざるを得ない出来事が、この磯臭くない街に来てから起きた。

私は今回、知人が全くいないエリアに来た。特にこのご時世にはちょっと不安になることもあるくらいに、とにかく知人の全くいないエリアに来た。

そのつもり、だったのだけれど。

地球って狭いねぇーって、思わず声が出てしまった。
なんと、昔の知人がこっちに住んでいたのだ。
それも20年前に住んでいた土地の知人が、こっちにいたのだ。
3次の繋がりの知人ではない。1次の繋がりの知人が、いたのだ。

記憶の中の彼は、まだ幼稚園に入ったか入っていないかくらいの幼児で、ニヤッと笑うやんちゃな男の子。
二十数年ぶりにスマホの小さい画面に映る映像で見た彼は、笑顔にその当時の面影を残しつつも、当たり前だけど二十数年分成長していて、立派な青年になっていた。

そしてきっとたった一人で来たであろうこの土地で、しっかりと、とあるスポーツで活躍していたのだ。

便利な時代になったもので、母経由でその事実を知ってから数十分後には直接彼と連絡が取れていた。

そこで分かったのだけれど、彼の活躍する地は、私の住む街からは少し遠い。普段の私の移動手段である自転車では、到底移動できない距離だ。
残念だなぁ、まぁでもそのうちに。。。と半ば今シーズンの彼の活躍を見るのを諦めていた時、突如としてその近くに行く予定ができたのだ。(もちろん自転車で行くのではない)
しかも頑張れば彼の活躍する場も見られる日程で。

これは行くしかないぞ。なにかに、行けと言われている。

初めて使う交通手段、慣れない街、全てに少し緊張しながら向かった。

と言いたいところなのだけど、現実はなかなかに私らしい一日だった。
当日は寝坊に始まり全力ダッシュで駅に向かい、道中爆睡からの、おいしいランチに夢中になり若干遅刻。急いで会場に向かうも(地図見れない人にこそありがちな)感覚的ショートカットの末に迷子になって、いろんな人に道を尋ね、目的地にたどり着いた時には、試合開始時刻を10分ほどオーバーしていた。

そして、その10分が本当に、本っ当に惜しいと思うほどに、目の前を駆け抜ける彼の姿はとっても格好良かった。そしてとても逞しく、輝いて見えた。

あぁ、地球上の陸地が狭くて、本当に助かった。

もしも、陸地と海の割合が逆だったら、私はこうやって彼の姿を見ることができなかったかもしれない。

知人が誰もいないと思って移動してきたこの場所で、まさか20年越しにあんなにも成長した彼の姿を見ることができるなんて、そしてこんなにも感動することができるだなんて、それこそ私は想像をしたことがなかった。

私も頑張ろう、そう思わせてくれる存在が身近にいる事は、こんなにも心強いのか。

ちょうど、一人であることに寂しさを抱えていた自分に気づいた時で、やっぱりこの地球は広いのかも、と思い始めた今日この頃。
でも、その広さは、たった一人の存在で狭くもなるのだ。

次回彼の活躍する場に行くことができたら、今回(遅刻したせいで)買い損ねたグッズを今度こそ買おうと思う。
実は、もうどうしようもなく私らしいミスなのだけど、なんと今回は相手チームのサポーター席を買ってしまったのだ。隣で全力で相手チームの応援をするサポーターを横目に、ひっそりと、本当にひっそりと、彼のチームを、そして彼の活躍を応援していた。

だから次回こそは、彼のチームのサポーター席で、ユニフォームをしっかり着て、タオルでも振り回して、大声で思いっきり応援したい。
そして今回は、私が彼からたくさんのエネルギーをもらったから、次は少しでも応援が届けばいいな、とそう思う。

その『次回』の場所は今回と同じかもしれないし、もしかしたら違う場所かもしれない。

でも、それがどこであれ、少なくとも地球上だろうし、さらにその3割の中のどこかだろうし。ね。行ける行ける。どこへだって、行ける。

この地球が、狭いなと思えている間は、私は無敵なのだ。

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