名探偵コナン 作画監督の担当回数とアニメ制作事情
0.はじめに
お久しぶりです。RhyResと申します。
皆さんは名探偵コナンにおいて、下の画像のように作画監督が複数人クレジットされている回が増えていることにお気づきでしょうか？
作画監督が複数人になる理由は様々あるでしょうが、最も多いと考えられる理由が、制作スケジュールが逼迫し人海戦術的に作画監督修正を行っているというのが挙げられます。
作画監督の意味をWikipediaで調べてみると、
作画監督は、アニメーションの一つの作品を作る際、原画の統一を目的として立てられた機能。
つまり、作画監督の役割はアニメ制作の中で絵柄を統一させることです。
この定義から考えると、一話に作画監督が複数人いるという事は、それだけ絵柄がバラバラになってしまうという事になります。
2020年から、アニメ名探偵コナンの監督を務められている鎌仲史陽監督も、このようにつぶやいています。
名探偵#1106話『キッドVS安室 王妃の前髪(クイーンズ・バング)後編』をご視聴いただきありがとうございます😃✨
— 鎌仲史陽 (@Nobuharo1974) December 9, 2023
今回も前後編をコンテ演出させていただきました。昨今のアニメ制作事情のような原画さんと作画監督の数になってきましたが僕は作監は一人(せめて二人に)なるといいなと思っています。 pic.twitter.com/urPey8HwLi
名探偵#1106話『キッドVS安室 王妃の前髪(クイーンズ・バング)後編』をご視聴いただきありがとうございます。
今回も前後編をコンテ演出させていただきました。昨今のアニメ制作事情のような原画さんと作画監督の数になってきましたが僕は作監は一人(せめて二人に)なるといいなと思っています。
それでも作画監督を複数人にしないといけない理由は、やはり昨今のアニメ制作事情が厳しいということでしょう。
今回は名探偵コナンの歴史を、この作画監督の人数とアニメの制作事情という観点から振り返って見たいと思います。
※とは言っても、筆者が名探偵コナンを観始めた（読み始めた）のは2020年のコロナ禍で、それ以前の事はリアルタイムで追ってない上に、他のアニメを観る訳でもアニメ制作に詳しい訳でもないので、的はずれなことを言ってるかもしれません。ご了承願います。
1.作画監督別の担当回数
ここでは作画監督さんが何回、名探偵コナンの作画監督を担当したかをまとめました。
下の画像を御覧ください。
【補足＆注意点】
・ここでは作画監督のみカウントしています。よって、総作画監督、作画監修、作画監督補、作画監督補佐、チーフアニメーター、キーアニメーター等は含んでいません。
・1話に複数人の作画監督がいる場合は全員カウントします。
・映画やOVAは含みません。
・途中で名前変わっている作画監督さんもできるだけ通しで記録していますが、漏れがあればコメントで指摘してください。
・2024年は6月現在のものまでです。
・高解像度版は下のリンクからダウンロードできます。無断転載はご遠慮ください。
https://drive.google.com/file/d/1k-WicFcMDVjzChVZG2Je7lo6VTOqEbxH/view?usp=sharing
作画監督 担当回数ランキング上位10人（敬称略）
1位 佐々木恵子
2位 山本道隆
3位 かわむらあきお
4位 大友健一
5位 岩井伸之
6位 青野厚司
7位 むらなかひろび
8位 津吹明日香
9位(同率) 広中千恵美
9位(同率) 志村泉
以上の結果になりました。
とは言っても、1人作監が当たり前だった昔と、複数作監時にヘルプで入る事も多い現在では、1回の重みがぜんぜん違うと思うので、あくまでも参考程度にしてください。
作画監督担当回数全ランキング
2.作画監督の人数に見る、アニメ制作現場
先程の表からデータを加工したものが下の画像になります。
オレンジ色の折れ線グラフが、1年間に作画監督としてクレジットされた人数になります。
（同じ人が一年間に複数回作監をしている場合も、それぞれ1人にカウント。）
青い棒グラフが、1話あたりの平均作画監督人数になります。
（オレンジの参加人数を一年間のエピソード数で割った数。）
上のグラフから分かること
上のグラフから色々なことが推測できます。正直、私よりも知識や記憶が豊富な方が沢山いらっしゃると思いますが、自分の気になった部分だけ書いていきます。
ほかに気づきがあれば是非コメントしていただきたいです！
全体像
やはり一話あたりの人数、参加人数共に右肩上がりで増えているのが分かると思います。
初期（シーズン1～10）
初期は非常に安定しており、1話あたりの人数は常に1.2人未満です。
特に、シーズン4～5は1.02人と限りなく1人に近くなっています。
この頃は、『青の古城探索事件』『空飛ぶ密室 工藤新一最初の事件』『シンフォニー号連続殺人事件』『黒の組織との再会』『呪いの仮面は冷たく笑う(アニオリ)』『命がけの復活』『迷宮への入口 巨大神像の怒り(アニオリ)』が放送されたあたりの時期です。
中期（シーズン11～20）
このあたりから、名探偵コナンの制作事情に陰りが見え始めます。
シーズン11頃から徐々に1話あたり人数が増加し、シーズン14で遂に1話あたり人数が2人になります。
ちなみにシーズン14は作画崩壊としてよく挙げられる『殺人犯、工藤新一』『新一の正体に蘭の涙』『本当に聞きたいコト』で構成される「死羅神様の事件シリーズ」から始まります。また、この年の3月を持って月曜ゴールデンから撤退、土曜18時に移動することになります。
名探偵コナンにとっては苦難の時代とも言えるかもしれません。
この背景には、制作体制の変更が一つの要因として挙げられると考えています。
このシーズン14が訪れるまでに、
まず、監督がこだま兼嗣氏→山本泰一郎氏を経て、佐藤真人氏に交代になります。
また、色彩設計も中尾総子氏に変更されます。この頃中尾氏の色彩設計は、徐々に薄暗く淡い色になっていきます。
このころ、初期からキャラクターデザインを担当していた須藤昌朋氏が劇場版専任となり、とみながまり氏に交代します。とみながまり氏のキャラデザは須藤氏に比べて、丸っこく可愛い絵柄だと思います。
また、シーズン7の途中からアニメ制作が、ある種の温かみがあるアナログのセル画から、デジタルに移行しています。
つまり、シーズン13に向けて
・キャラクターデザインは可愛く
・色彩設計はどんどん薄暗く
・アニメ制作のデジタル化により(ある種の)温かみが消え
・(赤と黒のクラッシュに向けて)物語も暗く
なりました。
そして、シーズン13の『赤と黒のクラッシュ』シリーズ終了とともに、
監督は、於地紘仁氏（その後山本泰一郎氏に戻る。）
キャラクターデザインは、須藤昌朋、山中純子氏
色彩設計は、海峰重信氏
に再度変更されることになります。
（これにより、いわゆる今の絵柄にかなり近くなりました。）
このような制作体制の混乱、キャラクターデザインの変更によるアニメーターさんの適応の難しさ、視聴率低迷＆ゴールデン撤退による制作費削減(多分)の中で、品質が低下したのがシーズン14だと思います。
その後はある程度持ち直し、1話あたり人数が2人を超えることはありませんでした。
現在まで（シーズン21～29）
そして、シーズン14以降は比較的持ち直していた名探偵コナンの制作事情ですが、2019年に再び1話あたり人数が2人を超えることになります。
ここで急に増加した明確な理由はわからなかったのですが、個人的には
・紅の修学旅行(と劇場版)に制作リソースを持っていかれた。
・2018年のスタジオワンパック解散に伴うローテーションの減少。
の2点が主な原因だと考えています。
そして2020年、新型コロナウイルスの流行によって更に悪化する…かと思いきや、意外にも2019年から微減という結果になりました。コロナ禍によってそもそも新作エピソードの制作が停止、再開後しばらくは隔週で新作放送、劇場版の1年延期などにより、厳しいながらもある程度の余裕が生まれたと推測できます。（ちなみに筆者がコナンを見始めたタイミングです。）
制作事情が更に悪化するのは2022年。
1話あたりの人数が遂に3.40人と、初の3人超えとなってしまいます。
これは、『ゼロの日常』『犯人の犯沢さん』『警察学校編』(名探偵コナン枠だが普段より作画コストは高そう)といった、スピンオフのアニメ化が重なったことが主な原因だと考えています。(そしてスタジオレオ新グロス先による悪夢のような作画崩壊があったのもこの年です。)
そして2023年、2024年は少しずつ改善傾向にありますが、依然として1話あたり人数は3人を超えたままで、TMS本社回では作画監督が複数人というのがデフォルトになってしまいました。
さらに2024年は、劇場版『100万ドルの五稜星』も雑な作画が目立ってしまうという現状です。
2.5.【追記】劇場版の作画監督
おまけ程度に、劇場版の作画監督人数もグラフ化してみました。
とりあえず、アクション作監やエフェクト作監などもごちゃまぜです。
これをみると、やはり最近は人数が増えてきています。今年の100万ドルの五稜星は作画監督、作画監督補佐ともに過去最多です。
3.おわり
今回は「名探偵コナンの作画監督の人数と制作事情」という視点から記事を書いてみました。
正直、もっと詳しい方が沢山いるんだろうなとは思いつつ、自分で分かる範囲で書きました。ですので、詳しい方がいらっしゃればどんどん教えて下さい！
初期の頃とまでは行かずとも、もう少し安定した作画を見られれば良いのになぁと思う次第です。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
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