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家族の彼方 2

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母に会ったらどうしようか。ハグしてあげよう。手を握ってやろう。そう思っていた。いつものように建て付けの悪い玄関引き戸を開けるとただいまと言った。冷たい廊下の向こうに居間がある。前に来た時はテーブルがあった場所に介護用のベッドがあり半身起こしている母は痩せて小さくなっていた。ハグし、手を指を握る。横浜から。家族四人分のハグだよ。母は少し泣いた。横浜から秋田まで六時間と少し。この距離は遠く、何かに理由つけて足が遠のいていた。2021年の大晦日。パンデミックの狭間と思われる年末、誰もが故郷に帰りたがっていた。そして俺もその一人。12/1に脳梗塞で倒れた母、それが俺が此処にいる理由。
この日、長男である俺、③弟、父、母、そして長らくこの家にいる④弟、五人が揃った。

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