あやふやで、不確かな(読書感想文)
嫉妬するって幸せなことなのかもしれない。
宮田愛萌著「あやふやで、不確かな」を読んだ。
4組のカップルがコミュニケーションの壁に直面しながら何だかんだ着地点を見つける話。
コミュニケーションは難しい。言葉足らずで思いを伝えられなかったり、余計な一言で相手を傷つけてしまったり。
仕事や友達の人間関係全体に通じる事も多く、恋愛に疎い私でも4組それぞれに共感しながら読むことができた。
中でも、真澄と優羽というカップルの「嫉妬」の話がとても印象的だ。
真澄の事が好きな優羽。しかし、自分(優羽)への嫉妬心を理由に、付き合えないと真澄に言われてしまう。その時の優羽の返しがとても良い。
「真澄くんって、それ、私のこと好きなんじゃなくて?」
「目が離せなくて魅力的な人なんだと思って、ずっと気になってるんでしょう。私はそれを好きって呼んでるよ」
理屈としては飛躍しているし、やや強引な気もする。だけど、優羽の芯の強さと真っ直ぐな優しさが際立っていて心地よい。
人は生きている以上、いつも誰かとの競争をする。そしてどの世界でも上には上がいる。上を知る度に誰かを羨ましがり、嫉妬する。そんな自分が嫌になり劣等感に苛まれるというスパイラルだ。
だけど嫉妬は、凄いと認めているから生まれる。憎らしくても、どこかでそうなりたいと思っている。そう考えると、大きく括れば「好き」と言ってもいいのかもしれない。
昔も今も嫉妬深い自分が嫌いだ。でも、それも「好き」という感情から生まれるんだと思うと、なんだか自分が愛おしくなった。
https://www.gentosha.co.jp/book/detail/9784344042599/
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