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「サイエンスコミュニケーション手段としての地上波テレビ」受講録

国立科学博物館「科博オンライン・セミナー~サイエンスコミュニケーション初級編~」

「サイエンスコミュニケーション手段としての地上波テレビ」
講師:桝太一さん

上記の講座を受講したので、備忘録まで内容を書き留めたいと思います。
自分なりの解釈が含まれているのと、全会話を覚えているわけではないので部分的なものになりますが、ご了承ください。

テレビの特性

サイエンスコミュニケーションの窓口として、様々なコンテンツがあり、この中で地上波テレビの位置づけは

【狭く・深い】学会、サイエンスカフェ 
       本・雑誌、SNS
【広く・浅い】学校教育、地上波テレビ

広く浅く、情報発信ができる位置である。

テレビという情報発信媒体の特性として、

①普及率が高い(1000万人近くに同時リーチできる)
②一方で受動的(①のうち全員が興味のある人ではない)
③他分野を伝えるノウハウの宝庫

上記を挙げられていた。

③の例について、特に科学コミュニケーター(SC)は全部の分野で活用ができるとのお話があり、
番組の一例として

音楽×科学
(音楽を科学する NHK の番組でしたっけ・・?覚えていらっしゃる方いましたら、教えてください・・)

バラエティ×科学
鉄腕ダッシュ

を取り上げ、科学と他分野との組み合わせについて、実際の番組に触れ、活用を紹介。

そういった番組を届けていて実感すること、
科学者ー興味のある視聴者  の外側に、たくさんの人がいること

世の中の人は、科学を必要としていない人が多いことに気づくとのこと。

テレビは②でも挙げた通り、一方向であり
Coサイエンスコミュニケーションではないのではないか(双方向ではない)
という声をよく聞く。

桝さんは、上記(テレビは双方向ではない)について「そうじゃない!」と伝え、テレビの役割は
外側の人たちを、内側に巻き込むこと=サイエンスコミュニケーションだ
この役割が、テレビが持てる役割であるとのことだった。

SC手段としての、テレビが持つ課題

ただ一方で、SC手段の1つとして、テレビが持つ課題もあげており

①サイエンス基盤を持つ人材の乏しさ
→メディア=文系という固定概念の打破や、人材流入をする必要性
これは桝さん自身がロールモデルになりたいとのこと。

②視聴率(視聴者)から受ける制約
→双方のリテラシーの向上が必要。より好循環を生む。
 送り手もテレビ局で専門家や詳しい人が話すなど、必要がある。

③科学者(専門家)とのコミュニケーション不足
→人材や技術の交流、相互理解などこれから改善していきたい!

上記課題をクリアしながら、サイエンスコミュニケーションの手段として地上波テレビを活用していくお話だった。
サイエンスゼロや、ダーウィンが来た! などの科学番組も例にあげられていた。

質問コーナー

Q.関心層と無関心層へ向けた企画をしているのか?

A. 関心層と無関心層について、はっきりと区別できるものではなく、グラデーションだと桝さんは考える、とのこと。

例として「野球」をあげ、草野球・高校野球・プロ野球のようにグラデーションになっているから文化として普及している。
「科学・サイエンス」については、ここが分断されてしまっている。
"これ以下はサイエンスじゃないよ”と高尚なもののように、科学者側が切ってしまっているのが問題。
科学者側がグラデーションに歩み寄るべき。

”文化にする”において、「スポーツ」と「科学」は似ている。

テレビで伝えるために、わかりやすく伝えるために編集をしている。その編集に問題があったりもする。
なので、科学者側が、伝えるときに噛み砕いて伝えるようにして、
そこまでパッケージにして、企画・提案を行う
とよい。とのこと。

Q.外側にいる人たちへ向けて、知識の押し売りにならないように工夫している点はなにか

(ありがたいことに私の質問を取り上げていただけました・・!)

科学を必要としていない人達=外側へいる人たちに向けて、サイエンスコミュニケーションで内側に巻き込むために、
伝える上で気を付けている点や、知識の押し売りにならないように工夫している点があれば教えてほしいと質問しました。

A. 科学は押し売りになりやすい。
トランスサイエンスな問題でもあるが、科学がすべてではない。
非科学的なものを、間違ったものだと伝えないこと
例として、コウノトリのお話をあげられた。

否定するのではなく、結果を伝えたあとで
じゃあどうするのかをすり合わせしていく
ことが、ポイント。

Q. 専門外の質問がきたときはどう対応しているか?

A. 専門外の話は、むしろチャンス!
視聴者に近い目線を持てるからこそ、強みとしてとらえる。

NHKスイエンサーの制作ディレクターである、村松 秀さんの言葉を引用され、
「理系であることは武器じゃない」
理系であることは弱点である→なぜなら視聴者目線に気づくことができないから。
というお話をされた。

Q. 「テレビ」で「科学」を伝えるときに気を付けていること

A. 自分が何を伝えたいか、ではなく
この受け手に何を伝えればよいか
、を考える。

サイエンスコミュニケーションの場では、これが逆。
自分が伝えたいことを伝える→これが良い番組であればOK
しかし、テレビはそうではない。
広く一方的な発信になってしまうからこそ、受け手側・利用者から逆算する必要がある。

どの時間帯に、誰をターゲットに伝える番組なのか。
テレビはむしろ、それしかやっていない!

サイエンスコミュニケーションでは、むしろ、そこが欠けている。

サイエンスコミュニケーションには多様性があり、
テレビと個人(youtube等)では役割が異なる。

広く浅く → テレビ
狭く深く → 個人(youtube)

この層を担っているとのこと。

テレビには公共電波を使う責任があり、枠が固まっている。
こうしたテレビの裏側や形を学び、科学コミュニケーションの手段として活用していくよう、SCとして桝さんは担っていくとのこと。

最後に、受講している私達(SC側)へ、
みんながそれぞれのグラデーションの、いろんな部分を担っていきましょう!
というお話で講義が終わった。

感想

テレビで伝える仕事をしているからこそ、、桝さんは本当に伝え方がうまく非常に理解しやすくて感動した。。
例を出すのがとてもうまくわかりやすい。。

関心層・無関心層を、グラデーションという表現をしたことが印象に残っている。
その例えとして、野球をあげたことも自分は納得しやすかった。

科学の関心層について、自分の中では
①興味があり、積極的に参加している
②興味はあるが、参加できていない
③興味はない

ざっくりこのようなイメージで、②の潜在的需要へ向けた活動を意識していた。
(4つの事象に分類した先生のお話があったはず・・)

(③にもばらつきはあるが、まったく興味がなくて科学を必要としていない人にはどんなに根気強くアプローチしても双方にとって無意味になってしまう。)

実際、私の頭の中では、X軸・Y軸に分類されて明確に線引きされていたイメージだったわけだが
そうではなく、分類はグラデーションなのだ。

どちらにも行き来することもあるだろうし、内容によっても異なる。
そしてそのグラデーションそれぞれへ、アプローチする手段は異なるし、それぞれが担っている。

今後のSCとしての活動にあたり、媒体を個人のSNSやyoutubeにして情報発信しているSCは多いと思う。自分自身もそう。
どのグラデーションに自分が位置してて、どこに分布する人へ向けて、その人はどんな情報なら欲しいか?
を深堀して、活動しなければと感じた。

テレビという特殊な手法を使った、科学コミュニケーションアプローチだったけれど、根本はそれぞれが科学コミュニケーションとして
社会のどの部分を担い、どのように活動していくか、というお話で非常に勉強になった。


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