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TISLR通訳コーディネートの話②

そもそも通訳というのは、守秘義務があるのだが、それに抵触しない範囲でこれをどこまで書けるかよくわからない。通訳者は絶対書かないだろう。どこで働いたかを黙っている。

個人的に、ここは書けるだろうという判断をして公開情報をまとめていこう。

学会は4日間。パラレルセッションはない。通訳準備はなんと学会の始まる2日前からはじまる。ポスターセッションは通訳準備も通訳もないので、ステージ発表の選ばれしプレゼンターだけが、通訳の打ち合わせに参加する。

通訳打ち合わせは、その発表にかかわる発表者と通訳者が一同に会して、発表の肝であるとか、用語の確認だとか、読み合わせをするような場である。普段の通訳打ち合わせはそこまで大人数にならないが、ここぞとばかりに(?)会議室で10人とか20人が机を囲んで円卓会議をやるような状態で打ち合わせが2日間みっちり行われたわけである。オンラインの発表者もいたので、円卓会議にならなかった人もいたようだ。いずれにしてもコーディネーターの仕事は、時間割表を作って人がそこに参加するようにすることだろう。まあ時間割なんてものは発表者がいつ来れるかに依存して決まってしまうので、あとは通訳者のフォロー、コマヅカイ、気遣い、である。会場の準備が裏で行われていたが、当然、手話通訳が目で見るものである以上、空間設営に重要な鍵を握るので、通訳者やコーディネーターが言うべきことは言わなければならない場面があるに違いないのである。

通訳は当然、プレゼンターの使用言語が起点言語になる。そして、各言語の通訳者が中継ぎかアンカーになる。学会で使える言語は、英語、アメリカ手話、日本手話、国際手話である。日本手話の通訳者のなかには英語が読める人はいるが、英語を聞いて日本手話にする経路は使わない。間に英語から日本語への経路が入ることがある。また、日本チームはろう通訳者を使うので、日本語から日本手話に聴者の通訳が通訳したのを、ろう通訳がステージ上で通訳することがある。そのほかに、アメリカ手話や国際手話を直接日本手話にするろう通訳がいる。(これは会場で見ていればわかる人にはわかることなので書いておこう)

アメリカ手話で発表するろう者が発表者だと、アメリカ手話から、英語・国際手話、英語から日本語、日本語から日本手話という経路で通訳することと、アメリカ手話を起点に、英語、国際手話、日本手話と同時に行けるときがある。手話から音声にする通訳や、手話の通訳はステージの上または一番前にいるのだが、日英通訳はブースにいる。日本語音声は、レシーバーで聞く。でも、日本語音声が会場に流れるときは英語音声がレシーバーから流れるという仕様で、ちょっと戸惑いが生じた。例えば、日本手話の発表者がいると、これは直接英語に行かない。日本手話から日本語、日本語から英語、英語からアメリカ手話と国際手話といった具合である。日本手話からアメリカ手話に通訳できるろう通訳者もいたので、日本語から英語、を経由しないで、日本手話からアメリカ手話、アメリカ手話から国際手話みたいな経路が取られていたこともある。

長いリレーが挟まるときは、プレゼンターにある程度待っていて欲しいわけだが、これがまた、なかなか待つのは難しいのである。何日目かに、司会者にそれをお願いしてみたがあまりうまくいかず、ローカルコミッティの先生に「STOP! CHECK the INTERPRETERS」とかなんとか書いた札を掲げてもらうという作戦をしていた。これは、大阪の民博がホストしてきた国際会議でずっと問題になってきたことで、結局、アナログな方法を使うしかないようだった。

(たぶんつづく)


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