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日がな一日言語学

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#手話

手話通訳付き対面発表覚え書き

学会会場の設備の問題が今回はなかったけど、久々の対面会場発表だったので、手話通訳も入るときの流れで自分が気をつけていることを書いておく 待ち合わせ場所と打ち合わせ場所 接続確認 照明調整 ろう者の座る位置と手話通訳の立ち位置 音響調整 通訳打ち合わせ 1.待ち合わせ場所・打ち合わせ場所 行ったことのない会場だと、どこで待ち合わせにするのか、打ち合わせはどこにするのか、で結構迷う。特に季節が暑いとか寒いとかの苛烈な時期だと、外で待ち合わせにしてしまうと、仕事前に

silent、フィクションで障害を扱うことによせて

silentが終わった。いろいろあったけど「優生」のことは、さすがに看過できなかった。それ以外はまあ、アップデートがあったのかなと思って見た。豊川悦司が孤独なろうの青年を演じて手話ブームを起こした「愛していると言ってくれ」が1995年だというから、四半世紀を経て、何が起こるか確認しなければと思っていたこともあり、silentはリアルタイムでないにせよ、週1のペースで拝見した。 声でしゃべれない人を扱うと画面が見てもらえる「聞こえない人」を扱うと言うより、「(声で)しゃべれな

「もうろうをいきる」上映会

去年の夏に公開になったドキュメンタリー映画「もうろうをいきる」。近所で上映会&監督のお話があるという情報を公民館だよりで入手して、万難を排して出かけた(万難というか、子守りを夫にお願いして、だけど)。 この映像作品は、主に7人の盲ろう者とその家族・支援者の日常を切り取ったものとして構成されている。 聾ベースの盲ろう者も何人か登場した。こうした人たちは、口話が得意ではないので、見れば(聞けば)わかる。彼らは手話を主に使う。そして、支援者は触手話でコミュニケーションを取る。と

丸山正樹(2018)「龍の耳を君に」東京創元社

「デフヴォイス」が出たときは、こういう取り上げ方があるんだーと思ったものだけれど、今回はその続編が出版された。出版されたとき、アメリカにいて、そのあと帰ってきて手に入れたけど、アメリカで課題が見つかって読むものがたくさんありすぎて、結局今頃になって読んだ。 主人公は、コーダ(Children of Deaf Adults:親がろう者の子ども=手話が母語となることが多い)で、前作で手話通訳士として仕事を始めた男。自身の出自から、ろう者とそのコミュニティについて複雑な感情を持ち

「ろう者の祈り」とは何か

「ろう者の祈り」という本を読んだ。最近出版されたものだ。 筆者は、朝日新聞の編集委員中嶋隆さん。彼が、新潟のNPOにいまーるの臼井千恵さんと、手話通訳士で日本語教師の鈴木隆子さんを中心に取材して執筆した本。 さて、この本の主題は ろう者は日本語が第二言語なので、ばかにしてはいけない に集訳される。 ろう者コミュニティの話も出てこないし、手話を公用語にしたエンパワメントの話も出てこない。ただ、日本語を改めて学び、なんとかマジョリティである聴者社会でやっていきたいという

アメリカで手話通訳は放送されるか

アメリカ大統領就任演説に手話通訳がついていなかったことで騒然となっていたか?アメリカの大統領就任演説に手話通訳がついてたとかついてなかったとか問題になっているようだけれど、アメリカにいて、手話通訳養成をしている大学にいて、それが話題にはなっていなかったのでどういうことだろう…と思った。 なんと1/21~24の間で6000RTに届くかという勢いのこのツイート、私は疑問を持ちました。「アメリカのみならず世界中のろう者が騒然としている」というのは、自分の観測の範囲で観察できなかっ