日がな一日言語学

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「危機言語としての日本手話」

「危機言語としての日本手話」

高嶋由布子(2020)「危機言語としての日本手話」国立国語研究所論集18, 121-148. http://doi.org/10.15084/00002544 論文が出ました。待ってても誰もこれを書いてくれないので書きました。 この論文は,手話研究を始めて以来,上のような状況がずっと続いていて,毎回説明するのに疲れてきて,仕方ないので自分で書きました。落ち着け,とりあえずこれを読んでくれ,と言えるものが欲しかった。(とくに言語学者に) 日本手話が消滅危機言語なのではない

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「もうろうをいきる」上映会

「もうろうをいきる」上映会

去年の夏に公開になったドキュメンタリー映画「もうろうをいきる」。近所で上映会&監督のお話があるという情報を公民館だよりで入手して、万難を排して出かけた(万難というか、子守りを夫にお願いして、だけど)。 この映像作品は、主に7人の盲ろう者とその家族・支援者の日常を切り取ったものとして構成されている。 聾ベースの盲ろう者も何人か登場した。こうした人たちは、口話が得意ではないので、見れば(聞けば)わかる。彼らは手話を主に使う。そして、支援者は触手話でコミュニケーションを取る。と

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丸山正樹(2018)「龍の耳を君に」東京創元社

丸山正樹(2018)「龍の耳を君に」東京創元社

「デフヴォイス」が出たときは、こういう取り上げ方があるんだーと思ったものだけれど、今回はその続編が出版された。出版されたとき、アメリカにいて、そのあと帰ってきて手に入れたけど、アメリカで課題が見つかって読むものがたくさんありすぎて、結局今頃になって読んだ。 主人公は、コーダ(Children of Deaf Adults:親がろう者の子ども=手話が母語となることが多い)で、前作で手話通訳士として仕事を始めた男。自身の出自から、ろう者とそのコミュニティについて複雑な感情を持ち

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「ろう者の祈り」とは何か

「ろう者の祈り」とは何か

「ろう者の祈り」という本を読んだ。最近出版されたものだ。 筆者は、朝日新聞の編集委員中嶋隆さん。彼が、新潟のNPOにいまーるの臼井千恵さんと、手話通訳士で日本語教師の鈴木隆子さんを中心に取材して執筆した本。 さて、この本の主題は ろう者は日本語が第二言語なので、ばかにしてはいけない に集訳される。 ろう者コミュニティの話も出てこないし、手話を公用語にしたエンパワメントの話も出てこない。ただ、日本語を改めて学び、なんとかマジョリティである聴者社会でやっていきたいという

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当事者による手話の言語学の研究発表

当事者による手話の言語学の研究発表

先日は、京大の京都言語学コロキアム(KLC)に日帰り出張をしてきた。私の古巣、Y研あらためT研に、私がギャロ―デット大学にASLを学びにいったときに知り合ったろう者のKさんが、研究をしたいということで出入りしていたのだ。 ろう者の研究環境は、本当にがんばらないと手に入らない。まず情報保障(手話通訳や要約筆記)の提供を受け入れてくれる場所でないとダメだからだ。その上、ろう者の「育ち」つまりこれまでの教育の問題で、彼らはほかの定型発達の院生と比較されたら、やはり知識や批判的な思

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The Land of Enchantment

The Land of Enchantment

ニューメキシコ州は、「魔法の土地」という2つ名が付いている。昨日は「逢魔が時」と思いながら人気のないキャンパスを越えてたら、なんだか見たことのない色になっていた。写真じゃ伝わりにくいかもしれませんが。 すでに1600mの高地、見える山は3000m級。住宅街の外側には、砂漠に耐えるサボテンや低木が生える岩と石の風景が広がっている。空はたいてい青くて遠くて宇宙みたい。 そんなニューメキシコ州は、1600年頃にスペイン人がやってきてサンタフェに街をつくり、1821年にスペインか

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花を育てる語

花を育てる語

先日から、「プロトリーフチャンネル」というのにはまっていて、ベランダ園芸にせいがでます。というか、庭仕事はそんなにやってなくて、単に動画を見ていた…。ただただ手際よく説明しながら作業もすすめるおじさんの話芸に魅了されていたのですが、どうやら結構有名な人だったらしく、NHK趣味の園芸にも出ていたらしい。逸材発見と思ったけどすでにみんなの金子さんだった。ぜったいフィラーを言わないとか、大事なことは2回言うとか、高いプレゼン技術ってどういうものかについてとても勉強になる…というわけ

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キツネはワンワン

キツネはワンワン

大福丸の最初のことばは「パパ」だったとは思うのだけれど、「ワンワン」というのもほぼ同時に覚えた語だった。当初、タブレットで見せていたミッフィーのアニメーションに出てくるスナッフィーっていう犬(ミッフィーはウサギのくせに犬を飼っている)のことだと思っていたけど、おそらくミッフィー動画を見たいという意味で定着し、親がタブレットをいじっていると手を伸ばして「ワンワン」と言っていた。最近はなんでも語尾に「チ」がつくので「ワンワンチ」といっている。 同じくミッフィーのおもちゃである入

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モチ語

モチ語

1歳児はモチのようなので「大福丸」と呼んでいる。彼女の話すことばは「モチ語」という名前で呼んでいる。モチの妖精だか妖怪だかよくわからないけど、とにかくもちもちしているからである。 さて、モチ語の特徴は、ときどき日本語の借用があるということである。しかしどうも日本語とはかなり違う。 たとえば「パパ」。どうやらこれは理解しているようで、初期の頃は「ぱぁぱ」とか言っていたのが、下降調の「ぱぱー」になり、最近はなぜかよくわからない接尾辞がついて「パパチ」といっている。 この語尾

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アメリカで手話通訳は放送されるか

アメリカで手話通訳は放送されるか

アメリカ大統領就任演説に手話通訳がついていなかったことで騒然となっていたか? アメリカの大統領就任演説に手話通訳がついてたとかついてなかったとか問題になっているようだけれど、アメリカにいて、手話通訳養成をしている大学にいて、それが話題にはなっていなかったのでどういうことだろう…と思った。 なんと1/21~24の間で6000RTに届くかという勢いのこのツイート、私は疑問を持ちました。「アメリカのみならず世界中のろう者が騒然としている」というのは、自分の観測の範囲で観察できな

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