教員採用試験の人物評価(面接・模擬授業・場面指導等)での合格は,第一義的には,印象(impression)と説得力(persuasiveness)で決まります。

今日は,ある面白い結論から,お話を始めてみましょう。

教員採用試験の人物評価(面接・模擬授業・場面指導等)での合格は,第一義的には,印象(impression)と説得力(persuasiveness)で決まります。

教員採用試験においては,「印象(impression)と説得力(persuasiveness)」が圧倒的な力を発揮します。


まずは,この「印象(impression)と説得力(persuasiveness)」のうち,「印象(impression)」について,考えてみましょう。

印象とは,「好き嫌い」の最大の根源であり,人が行う選択という行為の最大の要因となります。

教員採用試験で言えば,印象とは,一目見て(first look)で,採用側の面接官が受験者を,「好きになれそうかどうか,一緒に働きたいと思うかどうかという外見」であり,ルックスであり,雰囲気です。

また,さらに,印象は,15分~30分程度,面接で対話することにより,表現された「受験者の姿,表情,立ち居振る舞い,語り口」などで総体的に感じられる受験者の人柄としても感じられます。


わかりやすく,芸能人(テレビタレント)で考えてみましょう。

テレビタレント(俳優・女優を含む)は,それぞれ,一目見て,カッコいい,イケメン,美人,かわいいというルックスを持つ人もいます。

そういう,美人・イケメンが大好き!というファンの人もいるでしょう。

でも,芸能人のすべてが,美男美女というわけではありません。

美男美女ではないけれど,ドラマなどで,ものすごくいい芝居をして,最高の役作り,最高の演技をする俳優・女優もいます。

年齢も様々で,若いタレントもいれば,中年,あるいは,高齢のタレント(俳優・女優)もいます。

いずれも,ドラマなどでの配役において,素晴らしい演技を披露してくれることが多いものです。


教員採用試験も同様で,受験者の性別,年齢,容姿は様々です。

一般的には,若い人の採用が多いというのは事実ですが,40歳代,50歳代の人が採用されないわけではありません。

一般的には,容姿端麗でルックスのいい人が合格する可能性が高いのはある程度事実ですが,合否を決定づける要因とまでは言い切れません。

教員採用試験でも,一目見て,そして,15分~30分対話してみて,その人の「人となり」(役作り)が好感が持てるものであれば,その受験者は,ほぼ確実に合格します。


テレビタレント(俳優・女優)の話に戻ると,私たち,一般の視聴者は,タレントの私生活や本当の性格などは知りません。

でも,ドラマなどで,タレントが演じるその姿を見て,そのタレントを評価し,好きになったり,ファンになったりします。

私たちが見ているのは,タレントの正体ではなく,タレントの演技であり,タレントの仕事ぶりなのです。

教員採用試験でも,ほぼ同様です。

たかだか,15分~30分の面接では,採用側の面接官は,あなたの本当の性格や,あなたの本当の人生や,あなたの本当の想いを,100%理解することは不可能です。

でも,あなたの15分~30分間の面接で,あなたの社会人・職業人としての振る舞いを見ることはできます。

面接で試されているのは,あなたの人間性ではなく,あなたが教師として,どう振る舞えるかの演技力と言うことができます。


またまた,テレビタレント(俳優・女優)の話に戻りましょう。

ドラマでものすごく清純で真面目で真摯な役を演じている俳優・男優が,私生活でも,清純で真面目で真摯な性格で生きているかどうかは,一般視聴者にはわかりません。

特に,大きなスキャンダルでもない限り,俳優・女優の性格や私生活は,プライバシーに属しますし,ブラックボックスの中にあります。

一般視聴者にとっては,テレビドラマの中のある役を演じているその姿が,その役者を判断・評価する唯一の手段です。

そして,その役者の仕事は,役を演じることですから,その演技が上手であれば,その役者の評価が上がるのは当然のことです。

その役者の私生活は,特段のスキャンダルでもない限り,役者の評価には連動しません。


教員採用試験の面接の指導を約20年間やってききて,教員採用試験の面接と,テレビタレントが一般視聴者に評価されることの同類性(アナロジー)が見えてきました。

教員採用試験の短時間の面接では,受験者の性格のすべて,人生のすべて,想いのすべて,人格のすべてを評価・判断することは,絶対にできません。

教員採用試験の短時間の面接で評価されるのは,その15分~30分で対話したときに表現された,受験者の社会人・職業人としての振る舞いであり,人となりであり,同僚にしたいか・部下にしたいかという印象です。


教員採用試験の面接を受験する人,あるいは,面接の指導者は,あまりにも,真実(受験者の本当の性格・人格,人生,想い,志)を重視しすぎます。

もちろん,それらも重要です。

でも,そういった受験者の真実が本当の意味で評価・判断されるだけの面接時間もありませんし,採用側に真実を見極める評価能力・判断能力があるわけではありません。

教員採用試験の面接は,テレビのドラマと同じです。

教員採用試験の面接の受験者は,テレビのドラマに出てくる俳優・女優と同じです。

教員採用試験の面接の面接官は,テレビの一般視聴者とよく似ています。

面接は,受験者の真実の性格・人格を映し出すには短すぎます。

面接は,受験者の仕事上の(社会人・職業人としての)振る舞いや人となりを評価・判断するものです。

面接官は,面接では,第一義的には,印象で評価・判断する以外には,確実な評価方法は持っていません。

教員採用試験の面接で,百発百中で,合格を勝ち取りたいのであれば,テレビのドラマに出てくる俳優・女優のような役作りと演出と演技が必要です。

面接で,百発百中で,合格を勝ち取らせることができる面接の指導者は,演出家であり,プロデューサーでなければいけません。


演出家やプロデューサーは,俳優・女優の人間性を変えようとしているのではありません。

演出家やプロデューサーは,俳優・女優が,与えられたある配役を最高に演じるように指導する役割を担っています。


演出家やプロデューサーは,モラルを説きません。

演出家やプロデューサーは,演出を最高のものにします。

演出家やプロデューサーは,既にある真実と戯れません。

演出家やプロデューサーは,演出の中に真実をつくります。

演出家やプロデューサーは,文字や内容だけで,演出の指導はしません。

演出家やプロデューサーは,視聴者(観客)の心理を読んで,演出の指導をします。


イケメン俳優なら,イケメン俳優の演技の仕方があります。

イケメンでない俳優なら,それにふさわしい演技の仕方があります。

若い女優なら,それにピッタリの,あるいは,それに意外性を加える演技の仕方があります。

高齢の女優なら,それを武器にした演技の仕方があります。

面接も全く同じです。

ドラマの演出家・プロデューサーの方式で,面接を指導すれば,確実に合格します。

上手く演出された演技は,バレることもありません。

上手く演出された演技は,必ず,オーディエンスの感動を勝ち取ります。

面接で合格を勝ち取るのは,実は,簡単なことなのです。

テレビタレントなら,ティーンエイジャーでも簡単にやってのけていることをやればいいだけの話です。


河野正夫は,常に,演出家・プロデューサーの役を徹底して,指導しています。


次に,「説得力(persuasiveness)についてお話をします。

教採の面接における「説得力」を簡単に定義すると,次のようになります。

採用側の面接官が信じてくれるようなストーリーを語ること。

ここで重要なのは,「信じてくれるような」というところです。

たとえあるストーリーが真実であったとしても,それが信じてもらえなければ合格にはつながりません。

真実であることは,短時間の面接においては,大きな力を持ちません。

真実らしく聞こえることが,短時間の面接においては,大きな力となります。

教員採用試験の面接の受験者の多くは,ここのところをはき違えているようです。

真実を言えば,通じると思っています。

もっとはき違えている人は,なんでもいいからこじつけを言えば,なんとかなると思っています。

こういうはき違えをする人は,面接で,どんどん不合格になります。

そして,その不合格を毎年,繰り返します。


具体的にお話をしてみましょう。

例えば,志望動機です。

不合格になりやすい人が述べる志望動機は以下のようなものです。

小学校のときの恩師に憧れて。

XX県は自然に恵まれて。

XX県は研修が充実していて。

XX県の教育施策に感銘して。

こういう志望動機は,採用側の面接官は,まず信じません。

こういう志望動機は,不合格に直結します。

小学校の恩師に憧れたのは,もしかすると真実かもしれませんが,それが志望動機で,一生の仕事を教師にしたというのであれば,小学校を卒業以来,その恩師に会ったことがあるのでしょうか?

恩師がご存命でなければ,致し方ありませんが,ご存命で,いまも,教師をしていらっしゃるのであれば,教師を目指す立場になって,その恩師と,「教師対教師」で話してみたいとは思わないのでしょうか?

本当に,教師になる志望理由が「恩師に憧れて」なのであれば,教師を目指す立場として,恩師と教育談義を楽しみたいのではないでしょうか?

多くの人は,恩師に会いに行く手間もかけていません。

せいぜい,教育実習のときにちょっと話したくらいです。

こんな志望動機を誰が信じるでしょうか?

単なるこじつけです。


XX県は自然に恵まれているから,そこで教師になるなんて信じる面接官はいませんよ。

日本のどの都道府県だって,豊かな自然があります。

XX県だけ自然に恵まれているなんてあり得ません。

そして,こういうことを言う人に限って,あまり自然には興味がありません。

その県に,どんな国立公園・国定公園があるのかも,植生も何も知りません。

こじつけだからです。


研修が充実しているからなんていう志望動機は,もってのほかです。

そもそも,教師になるというのは教えるという仕事をするためになるのであって,研修で勉強するためになるのではありません。

また,教員の研修は,法律上の義務であって,どの都道府県でも,研修はそれなりに充実しています。

それでも,ある県の研修が充実しているというのであれば,その県の研修を他の県の研修と比べてみたのですか?

比べたことなどないはずです。

こういうと,愚かな人は,「だって,その県の教育委員会の人が,『うちは研修も充実しています』と説明会で言った」と言います。

もちろん,その県の教育委員会は,そういうことを言うかもしれませんが,それは,採用側のアピールとして言っているだけで,受験者側がおうむ返しに使える言葉ではありません。

ほとんど,「つまらないものですが」と贈り物を差し出した人に,「つまらないもの,ありがとうございます」と受け答えるようなものです。

こういう人が,不合格になる典型例です。

そもそも,社会的な会話のマナーさえ,わかっていないのですから。


愚かな指導者に限って,「その県の教育施策に触れろ」とアドバイスするそうです。

本当に愚かなことです。

もちろん,その県の教育施策に本当に感激し,その施策に関して,その県の教育委員会がやっている公開授業(研究授業)やシンポジウムや研修会などに何度も参加し,報告書や実践報告などを読み漁っているというのであれば,まだわかります。

でも,ほとんどの人は,その県のパンフレットで見ただけ,ちょこっとホームページで見ただけくらいなのに,その施策に感銘を受けたなどと語ります。

はっきり言います。

教育委員会の人は,その施策の主催者であり,担当者とも言えます。

その施策の実践例を見たこともない,受験者が,その施策に感銘を受けてなどと言っても,信じてもらえるはずがありません。

とりあえず,施策に触れておけなんて言う愚かな面接指導者の助言を聞いていると,不合格になりますよ。


説得力の根幹は,あなたの話が信じてもらえるかどうかです。

真実であるかどうかは,はっきり言って関係ありません。

と言っても,特に,ウソをつけと言っているわけではありません。

しかし,聞き手である面接官に信じてもらえることを言う必要があります。

これは,ユニークな経歴を持っている人には絶対,かつ,必須の合格条件です。

民間企業で長期間,働いたあとで,教師を目指す。

もともとは,中学校・高校の専門教科の志望だったのに,小学校を目指す。

長い間,教師経験にブランクがあったけれど,教師に復帰する。

一見すると不利に見えるバックグラウンドがある。

こういう人は,採用側の面接官が納得する「転職理由」を示す必要があります。

でも,実際は,こういう人が語る「転職理由」は,ほとんどが「こじつけ」です。

だから,不合格になるのです。

こういう人の転職理由を,私が「こじつけ」だと言うと,こういう人は「でも真実です!」と高らかに宣言します。

だから,不合格になるのです。

真実かどうかではなく,採用側がその転職理由を信じてくれるかどうかです。


ちょっと無茶苦茶なたとえをしましょう。

もし仮に,あなたが,血を流して倒れている人のそばで,血がべっとりとついているナイフを持って立っているとします。

ほとんどの人は,あなたが犯人だと思うでしょう。

もし,本当にあなたが犯人でないのであれば,なぜそこにいるのか,なぜそのナイフを持っているのか等について,ものすごく説得力がある説明をする必要があるでしょう。

こんな時に,あなたが,「わたしは,いつもこういう不思議な場面に遭遇するのです。」とか「これまで経験したことのない経験をするのが好きなのです」などと言っても,誰も信用してくれないでしょう。

ちょっと無茶なたとえだったかもしれませんが,ユニークな経歴がある人の,転職理由の確立は芸術のようなものです。


真実を語るだけではなく,真実を語りながらも,採用側が納得し,「なるほど。そういう理由で教師を目指しているんだね。よくわかりました。是非,教師として頑張ってください。応援しますよ!」と言ってもらえるような転職理由でなければなりません。

ユニークな経歴・バックグラウンドがある人は,説得力のある転職理由を述べることが必要です。

でも,何度も言いますが,こういう人に限って,こじつけしか言いません。

そして,面接官に信じてもらえず,不合格になります。

これが,コミュニケーション理論やレトリック理論を理解していない人(受験者&指導者)の悲劇です。

コミュニケーション理論やレトリック理論は,ある語りが真実であるかどうかを,さほど重視しません。

コミュニケーション理論やレトリック理論が重視するのは,その語りが聞き手を説得することができるかどうかです。

納得してもらえない語りでは,それが真実であるかどうかはどうでもよいことです。

ウソをつけとは言いません。

でも,信じてもらえない語りに価値はありません。

説得力のない語りは,語るだけ時間の無駄です。

相手を説得できない語りは,「百害あって一利なし」なのです。


ちょっと無茶なたとえとして,血がべったりのナイフを持って立っている人の話をしました。

ドラマや映画などでは,この人はその場で警察に逮捕されますが,有能な弁護士が出てきて,この人の無罪を勝ち取ります。

有能な弁護士は,裁判でこの人が無罪であるわけを,真犯人ではないわけを,雄弁に語ります。

この語りが,こじつけではない,説得力のある語りです。

血がべっとりと付いたナイフを持って立っている人は,有能な弁護士が必要なように,不利な経歴・バックグラウンドを持ちながら教員採用試験を受験する人は,有能な教採合格コンサルタントが必要です。

そんな方は,是非,河野正夫のコンサルティングを受けてください!


河野正夫
レトリカ教採学院

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