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多様性とストーリー

ストーリー(物語)を語ることの重要性はよく知られています。聖書のような古典から、近年のビジネスにおける「ストーリーテリング」まで、私たちは物事を理解し、伝えるためにストーリーを利用します。

ストーリー vs 結論

自己啓発本はどれも同じことが書かれていると揶揄されることがありますが、様々な領域において、多くの書籍やお金にすらならないnoteやブログによって、同じ知識や教訓(結論)が伝えられています。

これは、何を言ったか(結論)が同じでも、どのように伝えるか(ストーリー)がことなればそれは別の主張であり、誰もが自分のストーリーこそが正しく、伝える価値がある、と信じているからではないでしょうか。

自分のストーリーと相手のストーリー

多様性を受け入れられない人や、自分のやり方を他人に押し付ける人がいます。このような人々は、「相手のストーリー」という概念が欠如していて、あらゆる物事を自分が納得できるストーリーを通じてしか受け入れられないのだと思います。

行き過ぎると、相手のストーリーを強制的に自分のストーリーに書き換えようとしてしまいます。これは相手にとっては道理に合わない「理不尽」となります。

ストーリーと共感

他人に共感できたと思ったときには、自分のストーリーを押し付けてしまっている可能性があることに注意が必要です。

共感にはシンパシーとエンパシーの2種類があると言われます。私は作家のブライディみかこさんの定義が好きで、よく引用します。

つまり、シンパシーのほうはかわいそうな立場の人や問題を抱えた人、自分と似たような意見を持っている人々に対して人間が抱く感情のことだから、自分で努力をしなくとも自然に出て来る。だが、エンパシーは違う。自分と違う理念や信念を持つ人や、別にかわいそうだとは思えない立場の人々が何を考えているのだろうと想像する力のことだ。シンパシーは感情的状態、エンパシーは知的作業とも言えるかもしれない。

ブレイディみかこ.ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー(新潮文庫)(p.77).新潮社.Kindle版.

シンパシーは自分のストーリーを通じて相手を理解することであり、エンパシーは相手のストーリーをそのまま理解することだと言えます。

親切の押し売りや偽善と言われる行動がありますが、これは、自分のストーリーを通じて相手に共感したシンパシーによるものだと思います。

読書とストーリー

読書、特に小説を読むことは、共感力やコミュニケーション能力を高めると言われます。これは、自分のストーリーではなく、他者のストーリーが世の中に存在していることを理解できるからではないでしょうか。

ビジネス書や実用書は、太字や見出しなどの視覚的な表現によって「結論」がはっきり伝わるように書かれています。これにより、結論を見るだけで筆者のストーリーではなく、自分のストーリーに置き換えて理解することができます。

一方、小説は文章のみで物語全体を通して著者のストーリーを徐々に理解しなければなりません。これが、読者にとって他者のストーリーを受け入れる練習になります


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