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ゴボウを持ってキリンで駆け抜けよう

ここにキリンで駆け抜ける時に使われることになるゴボウがある。 ここにゴボウを持って駆け抜ける時に乗ることになるキリンがいる。 両者の距離は今、7500kmと12年離れている。 「次のサボテンを右に曲がってくれ」 実家がゴボウ農家の退魔精神科医、山岸宗一郎はドライバーに告げた。その界隈では「魔断の宗一郎」と呼ばれ、恐れられた、あの男だ。今日も義眼のダイアモンドがキラリと光る。 「次も右だ。その次も右。」 宗一郎の隣にいるのはメーリアだ。青白い顔でぐったりとしている。彼とメーリ

    • 揮発性メメント・モリ

      昨日、よく行く喫茶店の金魚が死んだ。 不味い珈琲を入れる店で、いつまでたってもエスプレッソの言えないウエイトレスがいる。俺はそれでもエスプレッソを頼み、無愛想なウエイトレスはそれを置いていく「エソプレッソとなります」もう本当はエソプレッソなのかもしれない。金魚は死んだ。 こうしてエソプレッソを飲みに来るのもこれで最後になるだろう。窓からは外の冷気が染み出している。向かいの薬局に鎮座しているテトラちゃん人形は、昨日よりもわずかに右に傾いていた。世界は変化しているのだ、俺はここ三

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