【with wedding vol.20】ウェディングの経営者は若い方がいい。

※株式会社リクシィ代表安藤が寄稿したウェデングジャーナル
連載号:2019年3月号 第98号 の内容を転載しております。

ネット業界ではオッサン、ウェディング業界では若い方

前回、スマホ世代とウエディング業界の常識・非常識について紹介をさせていただきましたが、今度は、世代間ギャップについて触れてみたいと思います。私はいま38歳で、20歳で起業をしているので社会人経験としては18年になります。20代の時から、「20代で上場企業の役員なんて若い」と言われ続けてきて、30代になっても同じようなコメントをいただくと「もう全然若くないし」と心の底で思っていたわけですが(笑)、世間の常識ではそういうことなのだと思います。

リクシィを起業したのが35歳の時ですが、起業家としての35歳は全く若くありません。むしろ少し遅いくらいだと言われており、自分と同じくらいに起業した方々は皆、年下ですし、リクシィも23歳の大学生社長の会社に仕事をお願いしていたりもします。インターネット業界では自分は明確にオッサンです。ところが、ウエディング業界となるとほとんどの会社の社長が50代・60代で、私は若い方になります。

インターネット業界は変化が激しく、instagramのように新しいサービスも次々とでてきます。かつ、情報がオープンなので、むしろ若い方が有利とすら思います。instagramの相談を我々にいただくことは多いですが、instagramを素で使っていないとわかるわけがないということで、若いと苦も無くできるわけですが、オッサンになると努力しないとできないわけです。私もビジネスパーティなどで20代前半の女性と出会えたら、とにかくどんなアプリを使っているのか、instagramをどんな風に使っているのか、結婚式をどう思っているのか、結婚式をinstagramで探すとしたらどうやって探すのかなど、気持ち悪がられない範囲で(笑)、とにかく教えていただくようにしています。

世界は、加速度的に変化していて、結婚や結婚式に対する価値感も大きく変わっていくのは当然なわけですが、オッサンはこれもヒアリングをしないとわかりません。例えば、とある恋愛に関する調査レポートで、「20代男女のうち70%以上に交際相手がいない」「20代男性は40%以上が異性と付き合ったことが無い」というデータが出てきたりします。さすがにそれは無いんじゃないかと思ってしまうわけですが、疑って時代遅れになるリスクをとるのか、鵜呑みにして肌感覚と違う事実を頭で理解するのか、2択を強いられます。重要なのは自分で確かめること。私の場合は、20代男性5人に、「最近こんなニュースあるけど本当なの?」と聞くようにしています。その5人からは「さすがにそれは無いですよ」というリアクションが返ってきました。ただ、データが間違っていることは考えにくいとすれば、「特定の群に偏っていそうだなあ」「断絶が大きなセグメントがあるんだろうなあ」「でも思っていたよりもその群は大きそうだなあ」のような観点が芽生えてくる、自分の知り合いで異性と付き合ったことが無いという知人を思い返し、そういう人がきっと昔よりも増えているのだろうという具合に自分の感覚とデータでの理解を接着させるのです。この感じは、自社のサービスをどこにターゲティングするのかのヒントになったりします。

ですが、こんなまどろっこしいリサーチをしなくても、若者の方々は、感覚的にわかっているはずなのです。オッサンたちは、自分の常識を毎回疑わないと自信がないので時間がかってしまいますが、若者はそんなプロセスは不要だと。この差は決定的に大きいなと感じてなりません。レポートをただ信じれば良いなら、話は簡単なのです。社員に調査結果をまとめてもらえればそれで賄えます。ですが、上述の通り、レポートだけでは意味が無いのです。感覚を身につけるという観点では、自分がイメージできる状態にならなければ、状況を掴んでいるとは言えないでしょう。なじみのない国で地名もわからず、知り合いもまったくいない中で、お金だけ渡されて事業を起ち上げてこいと言われるくらい難しいことなのだと思います。

結婚式は、20代、30代が産業を牽引するべき業界

調べたわけではありませんが、いわゆる大手企業の社長で30代の方というのはほとんどいらっしゃらないなと思います。役員クラスでもわずかでしょう。株主であるオーナーとなると皆無のような気がします。ウエディングジャーナルのイベントに登壇される方々も40代以降の方が多いなという印象です。私ももうその域です。ですが、お客様目線になろうとしないとわからないくらいのギャップがそもそもあるわけで、最も良い解決策は、近い世代の人が社長をやることなんだろうと思っています。「自分は代表取締役会長になって、あなたを代表取締役社長にする」ということでは意味がありません。「あなたに代表取締役社長をやってほしい、私はタダの取締役になってサポートするから」というスタイルが産業全体として必要になるのではないか、と思っています。

デジタル化で世界がどうなるか人類は未体験であり、結婚式のユーザーも20-30代である以上。その感覚に触れている方が指揮する方が良いわけです。ただ、もちろん経験不足・力量不足はあるでしょう。そこを経験豊富な方が下の立場から支えるのが最もワークするような気がしてなりません。副社長でも平の取締役でも何でも良いと思います。若い社長がやるべきと思ったことに迷いなく突っ走れるよう、邪魔な小石を取り除き、立札を置いて、ナビをして行く。そのような経営体制が、この業界の会社の1つの理想かなという気もしております。

さいごに

絶対そんなことにはならないだろうという気持ちで書いておりますがゆえ、この内容を真に受ける方はいらっしゃらないと思いますが、理想としてはこうだという意見は自分の想いです。事業継承の話を相談させていただくことはありますし、M&Aで売り先をどこにするかの相談をさせていただくことも増えてまいりました。この市場環境で新店を出し続けることも得策ではないなと思いますし、かといってホテルやレストランに進出することが巧い手であるとも言い難い(必要なスキルが全く違うという意味で)。私としては、供給過多であることが明確な以上、統廃合は遅かれ早かれ起きるなと予想するわけですが、その時、強烈な光を放つ、若いリーダーの会社が台頭することを望むばかりです。とはいえ、私もこの業界では若い方だと思いますので、老け込まずにがんばりたいと思います。

安藤 正樹 - Masaki Ando
株式会社リクシィ代表

花嫁の不安を“トキハナツ”式場探し「トキハナ」を提供するウエディングプラットフォーム事業、ブライダル企業の事業をサポートするブライダルコンサルティング事業、ブライダル特化の人材紹介サービス「リクシィキャリア」などを提供するブライダルビジネスサポート事業を柱に展開。
ブライダル業界の構造改革、結婚式であふれた世界を創ることを目指しています。

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note:https://note.mu/masakiando


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