私は仕事ができない人間である
学生生活において避けては通れない行事として文化祭がある。
無論私は嫌いである。
そりゃ確かに自分のシフトがある(存在認知される安心感)、土・日を潰してまでやりたくないということもあるが、なんといってもその準備である。
(話がそれてしまうからあまり深入りしないが、自分のシフトでない時間帯は家に帰るわけにもいかず共に行動するクラスメートもいやしないから、一日中休憩スペースの椅子に腰を下ろしもっぱら読書やスマホゲームに浸るだけであった。)
文化祭ともなると学校全体をあげての大準備となる。
わざわざクラTぃ?!(おそらくクラスTシャツのこと)なんぞを着て作業をする。
私のクラスはお化け屋敷をするということになり、私としてはこれで二年連続同じ催し物であった。それ故事の成り行きがいやでも想像される。
まぁ仕事できない私は手持ち無沙汰になるわな。
取り敢えず教室の机やら本棚やらを廊下に出したはいいものの、さてこれから作業に取り掛かるのか…。
Lineの内容からおおよその全体像は把握出来るようになっている。
その後、徐々に作業らしくなってきた。
なんかわからんが、動いている人、作業している人は忙しそうに作業している。
しかし存在するのだ。少なからず。私と同じような人間が。
このようにして仕事できない者達はただつっ立っている。もしくは許されているスマホをいじる。
これは三年次の準備でのことである。
私が当たり前のように準備できず壁にもたれかかっていると、前で作業に勤しんでいる女子達の中に、体育委員を務めるそれこそ私の骨などポックリいけそうなゴリゴリの女子が、それまでお互い話したことなどないにも関わらずこう私に喋りかけてきたのである。
「おぃこらぁ。こらぁそこのつっ立ってる男子。こらぁ。」
(無論私の名前など知る余地もない。)
はじめ私はその非常識な口の利き方にまさか私が言われているとは思いもしなかった。
しかし顔を上げると明らかに私に向かって喋りかけているのである。
私はそれを察した瞬間にすぐさま教室の方へ戻り、作業している男子にニヤニヤしながら近づきその女子の発言について伝えた。
「あそこの女子にさぁ『こらぁそこの男子。そこのつっ立ってる男子』って言わちゃってさぁ...。」
お分かりの通り、陰キャの私がボソボソ喋るんだから相手の男子は聞き取れない。
「なにぃ?そこでシコルな?!」
(ナイスぼけ~。やるやん。)
私の仕事のできなさ、いかに私がでくの坊なのかは大学においても変わることはなかった。
大学祭の準備のためだけに一時間以上かけて大学へ行く。
この私もはじめから仕事する気が無いわけではないので、取り敢えず集合場所(部室)に行く。
Lineでも通知がきている。しかし一向に作業が始まらないのである。
ただただ狭小な部室に男子が5~6人いるだけであり作業が始まる兆しがない。
私はまだ始めるには時間があるのだと理解し、キャンパス内を一周してからその部室へ訪れることにした。
言わずもがなまだ男臭い部屋でもじもじしているのである。
私はまだ入部したばかりの一年生の身であり、存在感も薄く、いるだけ邪魔だろうと思い帰ることにした。
実をいうと私はその次の日も準備することになっており、とりわけその日は前日に比べ朝早く行かなければならなかった。
部室を開けるための鍵を先輩と取りに行った。
「よし!今日の俺の仕事終わり!」
私はその後キャンパス内にある池のほとりで読書し帰宅した。
文化祭準備に関する話が長くなってしまった。しかしこれだけではなく色々な所でこの仕事のできなさが響いてくる。
以前、私は祖父の仕事の手伝いに呼ばれた。
そこには祖母もおり、実際誘ってきたのは祖母。どうやらビルの清掃らしい。
目的地につくと、祖父を含め四人ほどの男がせっせと掃除をしていた。
私もすぐに祖母から渡された手袋をはめ、雑巾片手に取り掛かり始めた。
最初はいいのである。最初は。
「ここをこうして拭いといて」とまずは具体的な作業内容の説明から始まり、私はそれに従い今回ここへ来た意義を見出す。
しかし、その作業を終えてしまったらぁこれが大変。
次に何をしていいのか分からないのである。
流石に先ほどの写真のようにつっ立ってるわけにもいかず、今片手にあるその雑巾で取り敢えずそこらへんを拭く。
見るからにピカピカ、透明度の高いガラスを私は一所懸命に拭いていた。
傍(はた)から見れば明らかに不必要な雑巾がけ。むしろ汚れが伸びる。
(んなもん聞きゃーいいじゃん。「終わったので次なにすればいいですか?」って)
それができたら苦労しない。
みな忙しく仕事しているのに、今日来た謎の若僧が質問などできゃせん。
どだい私は”質問”という行為に対し、それとない緊張・不安を覚えるのだ。
その日の夕食は今日お世話になった祖父母と家族全員で一緒にとることになっていた。
父は早速聞いてしまう。
「仕事できてた?」
すると祖母が言葉を濁す。
「まぁな まぁな…。」
それを聞いた時の父の様相はご想像にお任せします。
このようにして私は仕事ができない。
というか仕事だからできないんじゃなくて、根本的な私の弱みがあって、それが引っかかってるような気がする。
(おお、そうだ。自覚しているではないか。)
でも写真にも見た通り、私みたく主体的行動に移せない者がいることは確か。恐ることなかれだな。
結局なに?自分の弱みを認めず、克服しようとせずにただ現実逃避?自分と同じような同士を見つけて安心してるの?ふん笑わせるな。私はあなたのことを熟知している。そこで私なりに分析してみよう。
まず第一に、あなたは仕事が”したくない”という理由から言い訳をして仕事をしないようにしているわけでわない。すなわち多少なりとも仕事をする気はある。その証拠に、あなたは朝一で鍵を先輩と一緒に取りに行ったではないか。ではなぜあなたは仕事ができないのだろうか?
I.人に聞くことができない
そりゃ当たり前だ。何事にも終わりはある(座右の銘)。丁寧な説明と共に与えられた最初の作業はいつか終わる。では終わったらどうするの?次どうすればいいか聞くんでしょ。なんで聞くのにいちいち鯱張るの?あなたはバイトでもそうだったよね。違う?ずっとそわそわして。無駄な動きをしていた。わからないことを質問する有意義性を知ろ。ね。
II.自主的に行動できない
君。周りを見てごらん。何か手を貸せる状況が発見できないかい?動こうよ。何があなたの主体性を押さえつけているの?何があなたが自主的に行動を起こす際の桎梏になっているの?自主的に行動してくれる君に嫌悪する人はいないはずだよ。なんなら君と同じような同士も一緒に巻き込んだらいいじゃない。ん?自分が扇動切って同士を引き連れることができない?まぁ確かにそれは理解に難くない。それがあなたの弱みだからね。
I、I Iをまとめて超克しようではないか。君、自信を持ちなさい。自信を持って何もかも行動を起こせるようになった瞬間あなたは心機一転しその殻を破り捨てることができるであろう。この私のあなたへの助言。ぜひ反芻してもらいたい。
どうやってオチをつければいいかわからなくなっちゃった…。
太宰治の『トカトントン』の最後を引用するのもいいかと思ったけどもういいや。
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