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“エスペラントは触れるだけで勇気がもらえる” (株)Unicoco代表取締役 杉田 ぱんさん インタビュー 【聞き手:臼井 裕之】

 2022年8月29日から11月7日まで、ゆにここカルチャースクール による全6回のオンライン講座「国際語エスペラントへの案内」が開催された。本誌2022年10月号(p.37)、2023年1月号(p.53-54)で報告されているが、どんなカルチャースクールなのかもっと知りたい読者も多いだろう。そこでスクールを運営する(株)Unicoco(ゆにここ)にお邪魔してお話をうかがった。(臼井 裕之)

ゆにここ という名前の由来


Unicocoオンラインカルチャースクールのロゴ。ユニコーンがデザインされている。

臼井 裕之(以下、臼):まずは、ゆにここ というスクールの名前は、どういう意味ですか?
杉田 ぱん(以下、杉):「ユニコーンはここにいる」の略です。
臼:ユニコーンって、つまり一角獣?
杉:そうです。ユニコーンは、クィア(性的少数者)の人たちのシンボルとしてしばしば使われています。ユニコーンは想像上の、つまり存在しない動物ですよね。性的少数者もユニコーンのようにないものにされやすい、だけれども確実に存在している。だから、「ユニコーンはここにいる」というのは、「私たちはちゃんと存在してますよ」という意味です。ゆにここ の講杉は誰でも受講できますが、性的少数者や女性のニーズに焦点を当てているので、こういう名前にしました。
臼:なるほど、これで由来が分かりました。エスペラントにも似たところがあります。言語学者にないものにされたり、「誰も話していない言語」と言われたり…。スクールは、いつからあるんですか?
杉:カルチャースクールをやる前に、2019年ごろから(株)Xemono(クセモノ)という会社で「ユニコーンはここにいる」というウェブメディアをやっていました。このチームを別の法人として独立させたものが現(株)Unicoco です。
 一緒にやっていた書き手や編集者の間では「出版社をやろう」という声もありましたが、それよりウェブで事業をやりたいなと。出版社って在庫を持つことが多いですし、準備の期間も⻑いのでハードルがありました。ただ、文芸が好きな人たちばかりだったので、結果的にはその手の講座が多いカルチャースクールになりました。

なぜエスペラント講座?

臼:そんな文芸中心のスクールで、なぜエスペラントの講座を企画されたんですか?
杉:語学講座は最初からやるつもりだったんです。英語講座をやるかどうかも検討しました。英語はもちろん重要な言語だし、性的少数者に関する文献も英語のものがたくさんある。
 でも英語を一番最初の語学講座とするよりも、別の言語を講座にすることに興味がありました。帝国主義に反発したかったところもあります。また英語講座をやるとしたら、レベルもいろいろ準備しなければならない。小さい、出来たばかりの私たちのスクールでは、とても手が回らない。
それに対して、エスペラントは触れるだけですごく勇気をもらえる気がしました。言語って変えられるんだ、自分で作っていいんだ、という希望を与えてくれる。それって私たち、ゆにここ の発想に近いと思ったんです。
 ビットコインみたいな暗号通貨の存在を知ったときも、同じような勇気をもらいました。言語や通貨といった既存のシステムが強固なものも、新しく作ることができる。自分にとっては、非常に励みとなりました。

エスペランティストがまわりにいた

臼:ビットコインを想起された、というのが面白いですね。でも今、ビットコインは誰でも知っているけど、エスペラントを知っている人はけっこう少ない。どうしてエスペラントの存在を知ったのですか?
杉:もともと私たちの周囲には、エスペランティストがいたんですよ。例えば、ベルリン在住の漫画家でゲームクリエーターの香山哲さんとか。実はこの講座は、私ではなく ゆにここ のスタッフが企画した講座なのですが、エスペラントについて調べていたら日本エスペラント協会(JEI)という協会の存在にたどり着きます。
 それで連絡したら、JEI事務局長の相川さんが、ゆにここ にピッタリの講師陣を選んてくれたんです。ご本人と波田地利子さん、黒薔薇アリザさん…。

臼:確かに絶妙な人選ですね。そういう先生たちを迎えて、受講生は何人ぐらいだったのですか?
杉:毎回の講義終了後、1か月はアーカイブが視聴できるので、後から見た人も含めると初回は合計30人くらいの人が視聴しています。2回目以降はやっぱり減るんですけど、2回目で20名、その後もずっと18名くらいで推移しました。
臼:すごいですね。オンラインの講座で、後からアーカイブが視聴できるということもありますが、対面のエスペラント講座でそんな大人数が集まることは近年、コロナ前でもほとんどなかったと思います。

今年もまたやりたい!

臼:またエスペラント講座をやる計画はあるんですか?
杉:ええ、ぜひ今年もやりたいと思っています。それから今、ゆにここ を運営してきて経験したことを本に書いているところなんですが、印象的だった授業ということでエスペラント講座のことも書きたいと思っています。
臼:そうですか。それは楽しみです。お話をうかがっていて、私も勇気というか、元気をたくさんいただきました。ありがとうございました。
杉:こちらこそありがとうございます。

(RO誌2023年6月号p4-5から)

La Revuo Orienta 2023年6月号

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