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#022 ゾンビになってくれないか

 きみの人権を尊重している。だから、きみの頭を金属バットでホームランにするのは、空想だけに留めている。ネズミがたかって、邪悪な脳みそを残さず食べる様が見たいのに、私の夢は叶わない。きみの凄いところをたくさん知っている。

 些細なことをいちいち指摘して、チームの士気を下げるきめ細やかさ。そのタイミングも何でいま?という絶妙さ。どうでもいいことで問い詰めて、後輩を病ませる指導力。その澱んだ空気を周りに伝播させる影響力。

 途切れることなく話したて、議論を潰すトーク力。私の意見はちゃんと言ったぞ、議論に参加したぞ、と満足げな表情にはファンも多い。ルーチンワークを完璧にこなすことで、働きぶりを責められることはない、絶対的ポジショニングセンス。

 新しいツールや手順の欠点をすぐさま指摘し、改善提案を取り下げさせるディフェンス力は、まさに守護神。なにより突出しているのが、アウトな言動を何ひとつ行わず、あくまでセーフティに他人を萎縮させる、圧倒的なディスコミュニケーション能力。

 人の仕事に水を差す天才的センス、労働をつまらなくするために生まれた麒麟児。誰よりも高い非人間力で、チームのエンジンを逆噴射するきみは、日本が産んだ世界の至宝と言っていい。

 だが、独身なのが残念だ。きみほどの人物なら、絶対に不幸せな家庭を築けるというのに。もっとも、きみほどの人物を支えられる人間はそうはいない。ホモ・サピエンス以外との、未知との遭遇があることを願っている。

 サル山に舞い降りたマウンテンゴリラのようなきみ。悪い人じゃない、と言われていることが、逆説的に悪だと証明している。嫌味が服を着て歩いているかのようなきみ。何を食ったらそうなれるのか知りたいので、内臓をぶちまけて見せてほしい。だからさっさと、ゾンビになってくれないか。

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