勃起王、裏島耕作

第1部 交換様式P


仕事に女に絶好調の日々を過ごす裏島耕作、とある裏工作のため、裏日本のうらびれた町のビジネスホテルに宿泊している。もちろん、昨晩の裏工作は無事成功、恨みつらみを誘発し、適切に裏切りを導いた。ついでにディスコで拾った女とガチコミ裏四十八手も決めた最高の朝。目覚めたら女はもういなかったが、ギンギンに照りつける太陽に負けじと裏島のチンポコもギンギンに勃起している。
「うむ、絶好調だ」
イカした女とイカしたレストランで、ヴーヴクリコを注文するような思慮深い表情で、全裸の裏島はチンポコを上から眺め、鏡越しに見つめ、スマホ越しに検分する。そしてうらうらうらうら!とリズムに合わせて振りまくる。血液を溜め込んだ海綿体が唸りをあげる。うらうら!ウラジオストックまでいけそうだ!

腰をクイクイ動かして、より裏筋の見える角度を探すうちに裏島耕作のスマホが鳴る。
パガニーニの「ヴェニスの謝肉祭」。裏島耕作の趣味ではない。クラッシック音楽をたくさん聞くこと、イヤホンやヘッドホンではない形で聞くこと。
それが、裏島耕作が「勃起力」を拝借している男との交換条件だった。裏島は相手の言い分を1つ飲むことで、その男の勃起を奪う、正確には借りることができる。裏島耕作は、その男がなぜそんな条件を持ち出してくるのかまったく理解できなかったが、とにかく勃起は勃起だ。
裏島耕作は電話に出た。
「やれやれ。昨日もずいぶんと僕の勃起を使い込んでくれたね」
と裏上春樹は言った。
「自分の体から離れているのにそこまで感じ取れるのは、君もなかなかのチンポコ野郎だ」
と、裏島耕作は鏡越しにしなびたチンポコの裏筋を点検しながら言った。
「僕はそのホテルにふくまれているんだ。だからわかる」
「え、どういうことですか」
と、裏島耕作はチンポコをさすりながら言った。
「まぁいい、複雑な事情がある。僕だってすべてをわかっているわけではない。ただ感じるんだ。君がそのホテルで、僕の勃起を使っているな、と」
裏上春樹という30過ぎの男は、自称世界一タフなニートで、今は、とびきり美人の13歳の女の子とシドニーにいるはずだった。
「その子の前で勃起するわけにはいかない。だから僕らはtin-tin関係になれる。」
西麻布の裏通りのバーで、裏上春樹はそう言った。なかなかの紳士だ。このようにして、裏島耕作と裏上春樹の交換様式Pは成立した。

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