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ルパン三世 PART5 ルパンと彼らの関係Ⅰ

PART5のEP1で自分の死の偽装をルパンは4年ぶりに会った不二子と共謀したわけだけど、それを次元五ェ門に内緒にしてたのかどうか、彼らとの信頼関係を揺るがすとても大きな問題。

そもそもPART5の最後で爆発した仲間たちの鬱憤やいざこざは、ルパンが冒頭別れた不二子を呼び戻したことから始まる。


ここでは、内緒にはしていなかったと考えてみる。なぜなら数年ぶりにルパンと会った不二子が賞金目当てにルパンを殺したら、相棒たちが逆上してその場で射殺されかねない。だからその計画は仲間たちに周知済みだと思うのだけども。

ならば再会したシーンで次元が不二子に銃を向け、五ェ門が殺気立っていたのはなぜなのだろう。


不二子はルパンを次元から奪い同棲した女。そしてルパンを捨てた女なのだから、そんな女が数年ぶりにまた彼らの前に現れたら、相棒たちが警戒心バリバリで、挨拶代わりに銃を向け殺気立っていたのもわからないでもない。

たとえ事情がなくても、一味から離れまた戻って来た人間に、挨拶代わりに銃や刀を構え、時には一戦交えて相手の真意を問うのはありそうな気もする。


EP1の視聴者はこのエピソードのラストまでずっとルパンの策略に騙されているわけだから、このシーンは「(その計画を)知らなかった」として観ているのだけど、「知っていた」としても成立してしまう脚本の見事さよ。

いったん一味から離れてしまえば剥き出しになる不二子と仲間たちとの敵対関係。

仲間たちとの再会を出来事の部分ではなく、登場人物の根底に流れる感情面から会話を紡いでいるから、どんなシチュエーションでも不自然さのない会話やシーンが生まれるのかもしれない。


次元や五ェ門たちは、また不二子にルパンを取られるかもしれないという恐れもあったはずで。仲間と言いながら互いにルパンを巡って水面下で火花を散らすライバルであることをあの再会シーンは暴露してて、不二子が彼らを「女よりも怖い」と評したのは、相棒たちの嫉妬の強さに、彼らがルパンと疑似恋人関係にあることを仄めかしたように思う。

「女よりも怖い友達思いの男」はつまるところ「あんたたちはホモ」という皮肉で、不二子が次元たちに感じてる面倒臭さ。


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ルパンがこの計画を立てた時、次元も五ェ門も驚き反対しただろうし、計画のためとはいえ不二子を4年ぶりに召喚するルパンの真意を測りかねただろうと思う。不二子を呼ぶことを一味に伝えた時、互いにどんな想いが過ってどんな顔をしてたのだろう。

それはルパンが「不二子と暮らす」と出て行った時と同じくらい気まずいものがあったはず。


4年前に別れているのに、いまだに自分の生死を預けられる相手は不二子。ルパンがそう信じているのが、たとえ別れてもまたやり直せた二人の強い愛の証…

それを知った次元五ェ門は一体何を思っただろうか…


相棒たちはずっとルパンと一緒にいるのに、ルパンに尽くして来たのに、不二子は彼らからルパンを奪い捨て、離れても尚ルパンが命を預けられると信じている。

男と女の違い。限界を感じたかもしれなく。五ェ門の錯乱はもしかしたら不二子が戻って来ることへの戸惑い、忠誠を誓っているルパンへ疑いが生まれたのは、不二子と自分を天秤にかけてしまったせいかもしれない。


ちなみに、次元や五ェ門に任せられない時、ルパンが自分の生死を不二子に預けるのはこれが初めてではなく、2ndの「二つの顔のルパン」でもあった話。

「追い詰められたルパン」と同じく、ルパンになら殺されてもいいという不二子の心意気は二人の愛の確かさを示す感動的な話で、PART5の今回はそれを男女逆にしたようなもの。

ルパンが不二子と自分の死を共謀し、過去話のように相手に生死を預けたことは、不二子への強い信頼と愛情表現でもある。万が一でも、「不二子になら殺されてもいい」という想いも、過去の不二子のルパンに対する想いと同様にあったはず。


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ルパンは赤いバラがよく似あう・・・原作でも次元の話で「胸に赤いバラ」が出て来るのだけど、ルパンたちの情熱の深さは、真っ赤な血のようなバラがふさわしい。


考えてみたら、ルパンの4年ぶりの誘いは不二子への熱いラブコール以外何物でもない。これ以上の強い信頼、愛情表現があるだろうか?何年も会っていない女に自分の命を預けることを頼んだのだから。

不二子はルパンを殺すことも出来た。自分と寝た男を、別れた男を殺して来た女。でもルパンを殺したなら次元たちに殺されるのだから、賢い不二子なら命を失う危険はないとはいえ、「お前に命を預ける」こと以上の強い信頼、献身があるかしら?


「もし私が本当にあなたを殺してしまったら?」
「その時はその時さ。次元と五ェ門が黙っちゃいないけどな」


仕事終わりの公衆電話の会話のように、ルパンから不二子への久しぶりのコンタクトは、4年もの時の流れを感じさせない軽快な応酬があったかもしれない(笑)


ルパンのこの覚悟は、「殺し屋はブルースを歌う」でプーンに背中を見せて不二子を救った過去を思い出す。プーンから不二子を奪う時、4年ぶりに不二子の心を取り戻す時、ルパンは決死の覚悟で賭けに出ている気がする。


そしてその覚悟をルパンから聞かされた時、次元にはある種のあきらめと、五ェ門にはルパンへの疑念が生まれたのでは。


ちなみにルパンは不二子に自分の命を預けただけでなく、巨額の報酬まで約束したわけで(笑)もちろん金が動かないと動かない不二子なのだけども、ほとんど土下座せんばかりの勢いで不二子と再会していて、これは「仕方なく」事情があって不二子を誘ったというより、不二子と再会するにはルパンにそれほどの覚悟や献身が必要だったから、という気がして、ルパンの一途な愛に胸を打たれる。


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