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ルパン三世 モンキー・パンチとルパン Ⅵ 不二子のジェンダー


不二子のイメージには時代が反映されている
不二子だけは時代に合った女性像、その時代の美人を描いているという
だからパート5はカトパンみたいな顔になってしまった
カトパンってなぜか男性人気高かったけど、時代を代表する美人かというと疑問・・・

昔の悪女は昔の女優みたいに、仕事のために子供を作らなかったり子供嫌いだったりした
それが不二子の元型としてあると思う
でも最近の研究では、恋愛経験豊富な女性の方が男性や子供に寛容で
子育ても上手でよい母親になるケースが多いという
不二子はまさにこのケースだと思う


男ってバカねと大して男に期待していないから、大きな子供くらいにしか思ってないから
不二子は夫の扱いも子供の扱いもきっと上手いだろう

やっぱりね、ルパンは見る目ある。賢いからね。騙されているとわかっていてもそれを上回るリターンがある。そういう獲物をちゃんと狙っている。
自分を騙すような女、そんな女は賢いに決まっている。愛するに値する。だから命がけで守っている。


胸の大きさばかり強調されるけど(それも母性の表れだけども)
不二子のモデルは欧米女性のようなダイナマイトボディ
胸も尻も、腕も太もも大きい豊満な体
当時の日本人にはないスタイル
今でも珍しいはず

ホルスタインのような胸を持つ豊満な体が、枝のように細い手足と引き締まった体の男にもたれかかる時
女の方が重いんじゃないかと思う程の迫力があって(笑)
それが不二子の強さ、豊かな女性性と女としての強さの象徴でもある
そしてそんな豊かな体を持つ不二子を細身のルパンが不敵な笑みで支える時
ルパンの男性としての力強さ、たくましさ、器の大きさも強調されている


この二人のツーショットが輝かしいのは、本当は逆かもしれないと思うからだ
ターザンのようにマッチョで筋肉隆々の体の大きい男性に、か細い女性が寄りかかるのがマスカリズム(男性主義)
アクションヒーローものの典型的なイメージのはず
ところがルパンの場合は逆で、不二子の方が豊満で、ルパンの方がガリガリだったりする
不二子の女性性が強調され、だからといってルパンが頼りなげに見えるわけじゃない
豊満な女性を支える、甘える、少年のようにしなやかな体の男性の献身にうっとりする


まるでイタリア絵画のように女神は果てしなく豊満で
その女性を支える無駄のない体の男神

ルパンと不二子はルネッサンスの絵画のような女性美の賛美に溢れていて
マンマミーアなイタリア人がルパンに共感するのもルパンの底に流れている女性賛歌、女性崇拝を感じているのかもしれない


まだジェンダーに関して保守的な時代だった60年代の日本で
パンチ先生は自由で開放的で、男も平気で騙す賢くて勇敢な女性をヒロインに生み出した。

その女性たちは肉付きのよい体を惜しげもなくさらし、男たちを誘惑する。騙されるとわかっていても、たとえ騙されても惜しくないと思わせる、夢を見させる女の圧倒的な肉体美。そこに一時でも溺れることが出来たならどうなってもかまわない。そう思わせてしまう甘美さがある。だから不二子は許される。


原作では女性も散々な目にあっているからとてもそう見えないかもしれないけど(笑)
隠れフェミニストでもなければ、男をコケにする悪女をヒロインに据えることは出来ないと思う
不二子は先生の初恋の女性で理想
思い入れも強かったはず

女性はかくあるべきものとして理想を押し付けられていた時代に(今もあまり変わらないけど)
女も男と変わらない人間として知性を持ち、動物としての欲求や欲望を持ち
ルパンたちと同じようにあからさまに描いたのは、今の時代よりもすごく大胆で画期的なことだったはず

時代が進んだのにまるで退行しているかのようにロリコンばかりのこの国で(笑)
先生の感性がどんだけ先進的でクールだったかわかるというもの


ロリアニメばかりだけどそんなアニメが今後何十年も残るとはとても思えない
結局残るのはいつの時代にも通じる普遍的なテーマを持っている作品
ルパンみたいなコンテンツだと強く思う


豊満で母性的なイタリア女性のイメージは、ラピュタのドーラとか宮崎駿作品にも現れてる
ロリ監督だから他の作品にはあまりみない
ヨーロッパを舞台にしたラピュタだけかもしれない
不二子が後にドーラになったとしても全然不思議じゃない(笑)
ナウシカもあんなに発育のいい胸をした少女をアニメで観たのは初めてだったから、びっくりしたのを覚えている

ナウシカ以後にあんな外人体型のヒロインって出て来ているのだろうか?アニメは観念的になりやすいから、身体性のない作画か、極端に巨乳を強調した自己満足的なものに陥りがち。

宮崎作品はアクションだけでなくキャラデザもリアリティのある豊かな身体性を持っているのが人気の秘密でもあると思う。それは平べったい子供のようなキャラデザのルパンを描いていた時代から、ナウシカで一気に開花したように思う。


初期駿作品にはルパンの影響がかなりあると思っている
そしてその頃の作品の方が面白かった
ロリ丸出しじゃなくて人物描写のバランスが取れていたように思うのだけど
クシャナのような女性像が居なかったらナウシカの物語はつまらなくなっていただろう

出て来る人がみんないい人なのは子供が観るアニメとしては正しいかもしれないけども
大人が見応えのあるドラマだとは思えない
クロトワみたいな癖のある人物もナウシカ以来観ていないような
多分に次元味があって人気の高いキャラ

小声で愚痴りながらやれやれと付いて行く姿は
ルパンにお供している次元そのもの
女上司に尻に引かれる様は、不二子に振り回されるルパンのようでもあり
悪人なのに悪く見えないとぼけたキャラはやっぱり次元の影響かなと思う


善でもなく悪でもない。強い者に従い、その狭間で生きるしかない庶民の悲哀を感じさせる。次元やクロトワみたいな人物が親しみ持たれるのは、そのグレーゾーンが一番安全なセーフティーゾーンのようにも思えるからだ

大きな善はいつでも大きな悪に振れることがある。宗教や国、善だと信じて狂気に陥る歴史がなんと多いことか。一方でルパンのような極悪が義賊のような一面を持っていたりする。大きな悪も大きな善も極まれば反対側に転じてしまう。だからその真ん中が一番安全で共感出来る場所なのだ。



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