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災害対策の鍵は、統一マニュアルと統一トレーニング。~小林政務官との対談②

 引き続き、小林史明総務政務官との対談の解説です。
 昨日のnote「避難所運営はだれが責任をもつべきか~小林政務官との対談①」では、大規模災害では「被災者が被災者を支援する」構造になっており、もう一歩政府が責任をもつ必要性を書きました。対談で改めて気づきがあったのは、マニュアルとトレーニングの重要性です。

藤沢 3年前の茨城県常総市の水害では、茨城県と常総市の社会福祉協議会(戦前に行政が関与して設立した民間慈善団体の中央組織)がそれぞれボランティアセンターを立ち上げ、集まったボランティアがどちらに行っていいのか分からなかった、という話もある。
 自衛隊やDMATを参考にして、統一された災害マネジメントのマニュアルを作れば被災地での行政サービスはもっと効率化できる。「あの家には一人暮らしのおばあさんがいる」「あそこには足の不自由な人がいる」という生きた情報を持っているのは地域の行政職員。志を持って地域の行政に関わっている人々が、罹災証明書の発行といった事務処理に忙殺されるのはもったいない。
『災害復旧を拒むバカの壁――なぜシステムの標準化は進まないのか』(文春オンライン, 10月2日)
http://bunshun.jp/articles/-/9142

 自衛隊、消防庁、DMAT(災害派遣医療チーム)などは全国組織ですから、全ての災害で同じ動きがとれます。ボランティアも、JVOADさんができて、情報共有の仕組みがかたまりつつあります。民間企業では、Yahoo!さんとピースウィンズさんが中心となってSEMAという動きを作りました。いずれも共通したマニュアルがあり、日頃の訓練や実地経験を通じてスキルを獲得できています。
 課題は自治体です。事前準備(備蓄など)から緊急支援期(避難所)から復興に至るまで、統一されたマニュアルはなく、職員も定期異動します。災害の多くで職員は初めての状況に対応が迫られています。
 ではどうするか、ということで自治体をこえた統一マニュアルと、統一されたトレーニングが必要になります。
 経産省の防災関連の委員会でご一緒した、東京大学の沼田宗純先生は、各地の災害現場を指導しつつ、災害対策トレーニングセンターの設立を提唱されています。 

『いざという時に向けて、動き出した 災害対策トレーニングセンター!!』
https://www.fmyokohama.jp/ene/2018/09/post-5295.html

 
 感銘を受けたのは、災害対応を48種類500工程に整理し、カリキュラムを作成されていた点です。西日本豪雨では倉敷市に入られていたようですが、宇和島市の災害対策本部にも、先生の工程表が貼られていたことが印象に残っています。
 日本では、東大以外でも、人と防災未来センター、消防防災科学センターなどが自治体向けの研修を行っています。ただし統一マニュアルがないため、トレーニングもバラバラです。しかし大規模災害では複数自治体や、広域行政・政府との連携、そして民間NPOや企業との連携も必須です。まず災害対応のあり方を一つにすること。そして共通のトレーニングを受けることが、喫緊の課題です。(おわり)

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