【冒頭】モンピートン、彼のための宇宙

 
 まだ何もなかったが、閉じた水門のきわには意味深げに上流から流れ込んできた廃材が溜まっていた。鋼鉄加工廃棄物とプラスチックごみ、期限が切れた工業用の人工シナプスが少し。不法投棄の廃油が大量。爆弾低気圧が投げ捨てた雷が数億ボルト。まだ何もなかった。
 集中豪雨の後、油膜の浮いた溜め池で羽化した、もろっとしたトンボが一匹、帯電した産業廃棄物の上にとまった瞬間、溶けて染み込んで消えた。瞬間、彼は堆積物の中に現れたのだ。
 錆と油でできた腕を伸ばし、ゆっくりと頭を起こすと、認識の正面、遺棄された錫のプレートには【MONPEARTON-HOUSE】の文字。
 それを読んだ途端、彼は自分がここにいるということをわかった。それは「起き上がる」という行動に現れ、ずるずるとひとつなぎになっている身体を鬱陶しく感じる意識はがらくたの隅々までほとばしった。目を覚ますときはひたすら身体が重い。一番最初ならばなおさら。

【続く】

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しがないへのへのもへじ

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