LOVE LIFE.

*深田監督の『LOVELIFE』という映画が、とんでもなくよかった。朝起きて、近くのミニシアターまで自転車を30分漕いで、時間ギリギリに劇場へ忍び込む。中には僕を含めて四人しかお客さんがいない。ミニシアターのスクリーンは、どの部屋によってかで大きさも高さもバラバラだ。今回は小さめで、そして少し高い位置にあった。もう少し後ろの位置にすればよかったかな、と思いながら席に着く。

きっと100人いたら、120人が「それでいいの?」ってツッコみたくなるような映画だと思う。けっして綺麗ではない(構成はすごく綺麗なんだけど)、汚れていて、だからこそ美しい映画だった。映像も、セリフも、視線ひとつも、何もかもが美しすぎる映画だった。僕はこういう映画を観るために、小さい映画館に通うんだと思えるほど、素晴らしい映画だった。

この映画の素晴らしさについて語りたいのだけれど、ぼくの筆力不足で申し訳ないが、なかなか上手く語れない。いや、語りたくない、と言ってもいいかもしれない。語れるようなことはすべて、うそっぽい。それこそこの作品のような、誰もが内側に抱えた孤独の部分でしか、ほんとうのところは話せない。それを書くために外に出してしまうと、どこか安っぽい言葉に落ち着いてしまう。

先日お手伝いした福祉のイベントで、耳の聞こえないスタッフの方がいた。一緒にいた方が手話を使いながら、共にテントの撤収作業をしていた。もどかしかった。話してみたいけれど、コミュニケーションを取る術が僕にはなかった。説明したいことも、話してみたいこともあるけれど、共通言語を持ち合わせていないので表情以外で話せなかったことを思い出した。

何も、言語に限った話じゃないかもしれない。誰もが内に抱えた、人には言えない感情や思い、後ろめたい気持ち、殺意といった黒い気持ちや無関心以上に冷たい関心、見守りたい気持ち、言葉にならないものがたくさんある。それらは、どうしたって言葉を超えない。言葉はいつも何かが足りない。意味に縛られた言葉では辿り着けない場所が、誰もの心の内にある。そんなことをあらためて思い出す映画だった。ほんとうに素晴らしい映画だったので、観るべき人に観てほしい。ただ、語り合うのは、ちょっとやめておきたくなる、心のうちにしまって溶かしていきたい映画だった。


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