やさしさにも好みはある

*歳を重ねると好き嫌いが変わるというけれど、若い頃は「うそつけー」と思っちゃってました。おれはたぶん、歳をとってもオムライスが好きだし、オムライスの好きなおじいちゃんになるぞ!と意気込んですらいたものです。いや、しかし、きちんと思い返してみれば、たった二十そこらの僕みたいな若造でも好みって変わってきているんですよね。いや、いまだにオムライスは大好きなんだけど。

なにも食べ物の話だけじゃなくて、人間関係だって変わってきていると思うんです。昔はこんな人が好きだったのに、今はこういう人が好きだな、とか。べつに前者をきらいになったわけじゃなくて、ただ、好みが変わっただけですよ。

昔、じぶんがつらかった時期に、いろんな人が関わり方を考えてくれた記憶がある。こまめに連絡をくれた人、わざわざ会いにきてくれた人、ほったらかしにしてくれた人、げんきになってから心配してたよ、と声をかけてくれた人。そんなこともつゆしらず、今も関わってくれている人。いろんな関わり方があって、奇しくも攻撃にあっていない場合で性善説っぽい考え方だけれど、みんなそれぞれやさしくしてくれたんだと思う。

昔は、すごい連絡をくれた人をやさしいと思っていたけれど、今思えば、連絡をくれなかった人も、それはそれでやさしいんだなと思えるようになった。見守ってくれていたんだな、と。むしろそっちのやさしさのほうが僕好みだったりするな、と思ったところで、やさしさにも好みがあるんだなと気付いた。

「こっちのがやさしい」「そういう人の方がほんとはやさしいよね」なんて、やさしさに上下をつけてしまうことがしばしばある。でも、そういったやさしさは上下にわかれているんじゃなくて、横一線の好みなんですよね。そういうことに、ようやく気付けるようになった。


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