物と私の関係性。

*ぷらっと買い物にでも行ってやるか、と近所のスーパーまでの道すがら、いまどき珍しい木製の杖をつきながら歩くおばあちゃんとすれ違った。杖をじょうずに使いながら重心を支え、速くはないがそこまで遅くもないスピードで路肩を歩いている。その「杖とおばあちゃんの関係」が、ぼくにはなんだか羨ましく思えてしまって、すれ違って数秒間、後ろから眺めていた。


なんだか、かっこよかったんだよなぁ。ぼくが杖をついたって、ああいうふうにはならない。いくら杖をついて歩く練習をしたって、ああいうふうにはならないと思う。杖があってはじめて歩ける、そんなおばあちゃんだからこそ築ける、杖と本人との関係なんだよなぁ。なんの支えもなしに歩ける人と、杖がないと歩けない人では、杖側も、きっと信頼感がちがう。


そういう意味で、杖をついて歩いているというのは、なんだか特権のように思えたのだった。杖をつかなきゃ歩けないのかもしれないけれど、杖をついて歩けるのは、そういう人たちだけだ。ぼくがやっても「フリ」や「コント」でしかなくって、本当のことではない。本物の役者さんがやってこそ、はじめて見てられるものになるんだろうけど、杖がなきゃ歩けない人からしたら、普通に歩いてるだけなんだからね。


物との関係性、距離感というのは、見つめてみるとなかなか面白いもんだ。自分が好きな物、欠かせない物、嫌いな物、使うのがおっくうな物、自分で買った物、他人からもらった物、タダの物、、、思い出や使うシーンによって、距離感が変わってくる。さらに言えば、自分の「使われ方」も変わってくるんだろうなぁ。

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