言葉の土台

*いまから、もんのすごく当たり前のことを言います。もう、当たり前のことだから、きっと読んだあなたは、当たり前にびっくりしちゃうでしょう。でも、わざわざ「当たり前じゃないか!」なんて驚かないでください。当たり前のことを言いますって当たり前に書いてから、言うんだから。

「ぼくは、あなたが、好きです」ということばは、「ぼくがあなたを好き」だときちんと伝わっているからこそ、相手に届くんですよね。どう?ものすごく当たり前のことを、当たり前っぽく言っているでしょう?

でもね、ほんとそうなんだよ。「ぼくがあなたを好き」だということが、ことば以外の部分で伝わっていなかったら、「ぼくはあなたが好きです」ということばは、伝わらないんだ。例えばその「ぼく」が、いろんな女のところをふらつき歩いている浮気性なやつで、そんなやつが両脇に女を連れながら「ぼくはあなたが好きです」なんて言っても、伝わんないでしょう?

伝わったから上手くいくとか、そんな話じゃないよ。ことばが伝わるには、じつはその土台となるものがあってはじめて伝わるんです。それは信頼関係とも呼ばれるし、説得力とも呼ばれたりするでしょう。どんな呼び方にせよ、ことばだけじゃ、ことばを伝えるちからはあんがい少ないんですよ。

だからみんな「ぼくはあなたが好きです」ということばを言うことに躊躇したり、努力したりするわけだ。これはなにも告白のことばだからじゃないよ。「ありがとう」だって、それが伝わる土台がなきゃはじまんないもの。チェーン店の居酒屋でビールを頼んで「はいよろこんでー!」って言われても、べつになんとも思わなかったりするじゃない。

ことばは、ことばだけでは伝わんない。そんな当たり前のことを、ことばを毎日書き続けて4年が経った今、ようやく気付いたような気がする。ことばってそんなもんだし、ことばってたいしたもんだよ。


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