物語は読んだ人が

*絵本を取り扱ってくださるお店様や書店様が増えています。ほんと、ありがたいかぎりです。自分の足を運んで「おいてください!」と頼み込むこともあれば、連絡をいただいたり、友人が紹介してくれたりと…いろんな地域のいろんなお店で、絵本『やさしいて』は手にとっていただけますよー。偶然出会って、手にとってくださる方がたくさんいらっしゃってもうれしいね。

今日、目の前で絵本を読んだ母親の方がぶわーっと涙を流してくれてね。「へーっ、涙を流す人もいるんだ」と思いながら見ていた。ことばが不謹慎なようですが、いろんな反応や感想をくださるので、おもしろいんですよ。泣く人もいれば考え込む人もいるし、すっと感想を言ってくる子供がいれば、なかなかむずかしいねと伝えてくる大人もいる。ほんとうに反応がそれぞれちがって、おもしろいんですよー。涙を流してくださるのも、ま、うれしいんだけどそれ以上に「こんな反応もあるのかーっ」って感じでね。

大阪にあるiTohenというギャラリーでも絵本を取り扱ってくださってるのですが、オーナーの鰺坂さんがおっしゃっていたことばを思い出した。「まだ知らない人に届けることは大事ですよ。物語は読んだ人が勝手につくってくれますから」って、前におっしゃってたんだよなぁ。あのことばの意味が、今ならちょっとわかる。この絵本は、物語をつくりやすい、感情移入がしやすいものになっているのかもしれない。きっとそれは「つくりばなし」じゃなくて「ワンシーン」を切り取ったものだからかな。

「物語は読んだ人が勝手につくってくれますから」、このことばの意味をなんどもなんども考える。読み手が勝手に、いろんなことを繋げてくれる、思ってくれる。この絵本以外のことを、この絵本と繋げて思ってくれる。たしかに、絵本は点でしかないものね。それを自分の点と繋げて物語として、線として読んでくれるのは読者のほうだ。なるほど、すごいことばだなぁ。


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