要領の良さ、なんて。

*ぼくは基本的に、要領がいいほうだと思う。もっといい人もたくさんいるんだろうけど、少なくとも、わるくはない。昔からたいていのことは60点を取れる方だし、初めてのことでもおおまかな道筋や「こうすればできるかな?」というのが見える。ただ、要領がいいというのは、ぼくのなかでは本当に、もったいない、どうしようもない部分だと感じている。


要領がよくない人、というのは、同じことをやるにしても、ぼくよりも時間もエネルギーもかかる。そんな人を見てきたし、身近にもいる。ただそういう人は、要領がよくないが故に、とっても丁寧に、丹精込めてやるんだよなぁ。それを「要領」なんてもののせいにするのは違うんだろうけど、一生懸命にやらないとできないことを知っているから、一生懸命にやる。要領のいいぼくは、「だいたいこんな感じで出来るな」というのが分かっちゃうから、その程度に合わせてあらゆることをやってしまう。


これはもちろん、向き不向きの話だ。要領がいいからこそ、向いていることやできることがある。ただその「要領の良さ」を理由に一生懸命にやらないってのは、なんとも怠慢な話だろうよ、おれよ。出来上がったものが同じ点数だったとしても、ぼくなら時間も手間もかかったものを選ぶと思う。そのほうがより細やかで、配慮があって、何回も自分の目を通ってきているからだ。


きのう、同業者の作家さんたちに何人かお会いしたんだけど、その人は自分でも言っていたけれど、きっと要領のよくない人なんだと思う。ただ、出来上がったものを見て、ぼくはすごく感動した。なんて作り込まれていて、素敵な作品なんだろうと、自分がものすごく惨めに感じるほどだった。こういう人には勝てない、正式に言うと、こんなにしっかり作っている人には勝てないなと、自分のつくっているものを見返して思った。


すべてに通ずる法則だろうけど、やっぱり手間ひまをかけて、しっかり心と身体を使ったものほど、良くなるもんだ。そんな当たり前のことを改めて思い出した。要領がいいから一生懸命にやらない、なんてのは言い訳だ。要領の良さをフルに使いながら、しっかり一生懸命にやっていく。「要領」なんてのが無縁の世界で、じつはぼくたちは生きているのかもしれないよなー。一生懸命に、手間ひまかけてつくったものは、やっぱりいいものだよ。そんなものにおいらは感動するし、作っていたいんだった。

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