尊敬する人の絵を買いました。

*大阪にある「itohen」というギャラリーのオーナー、鰺坂さんが絵の展示をされていたので、なんとか最終日に駆け込んだ。天神橋筋六丁目にある「Bon Voyage」というお店。夕方ごろに行くと、にぎやかな感じに。たまたまかもしれないけれど、ちょうどそのとき来ていた人のほとんどが作家さんで、そこに改めて、鰺坂さんのすごさを感じた。絵でも彫刻でも文章でも、何かを作っている人が展示を観に集まってくれるのは、ひとつ、うれしいことであり羨ましいことだ。

展示は、鰺坂さんが2020年から毎日描き始めた絵の展示だった。テーブルのところどころにスケッチブックが置かれ、ぱらぱらとめくりながら、日付とちょっとした日記が添えられた絵たちを見る。お話を聞くと、毎朝30分と時間を決めて描き続けているそうだった。パステルで描かれた絵たちは、SNSで何度も見たことはあるけれど、生で見るとやっぱり奥行きがある。

鰺坂さんとは、二人きりでゆっくりお話ししたことないけれど、なぜだか強烈に憧れている人だ。手がけてきたお仕事や、itohenというギャラリーの運営はもちろん、立ち居振る舞いや会話のところどころに、鰺坂さんが積み上げてきた哲学のようなものを感じる。静かで、淡々としていて、硬さは感じないのに、ものすごく幹が太い一本の樹に見えることもあれば、広い広い海のように見えることもある。そんな鰺坂さんの姿に、会うといつも背すじが伸びる。帰る頃には、なぜだかまた尊敬の念がこみ上げる。

どうして鰺坂さんに憧れるんだろうと思うと、きっと「有言実行」いや「不言実行」というか、しゃべりや言葉よりも、何をやってきたかが多い人だからなんだろうな。何を話すか、どんなことを言うかよりも、やってきたことや歩んできた道のりが、その人をあらわしている。お店も、人間関係も、周りを見てもそうなんだと思う。口ばっかりのぼくだからこそ、そんな鰺坂さんに無性に憧れてしまうんだろう。

そんな鰺坂さんのことを思い出せるように、という思いもあって、展示していた絵の中から一枚お出迎えしました。1000枚近くある絵の中から選んだ、妙に安心する一枚。絵を買うって、その絵はもちろんだけど、作者のことを思い出したり、「大学合格!」というハチマキや掛け軸のような、そんなものでもあるんだな。


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