はじめてこだわったもの。

*十八歳の頃、バイトで稼いだお金で、調子に乗ってこだわりのペンを集めていた時期があった。万年筆やボールペンを、いろいろ手にとってみたり試し書きしたりして、気に入ったものは買っていたっけなぁ。「いいペンで、きれいな文字を書けばいい大人になれる」なんて迷言めいたものを信じて、ペンにこだわろうとした時期があったのです。高いブランドも、お手軽なやつも、けっこうな本数を持っていたと思う。

そのなかで、今でも気に入ってずうっと使い続けているのは、1000円くらいの油性ボールペンなんですよね。卵をほそーく伸ばしたような形で、少し太めで男性の指にフィットしやすい感じ。少し重いので、スラスラと書きやすくもある。重さは好みでしょうけど、ぼくは軽いものは苦手で、書く手にぎゅっと力が入っちゃうんですよね。なので、少し重すぎるくらいの方が、手の力が抜けて、書くことへのハードルが下がる。

急に、ペンのこだわりについて書き始めてみましたが、おもしろかったんですよ、この時期のこの経験。ひとつのものにこだわる、特にぼくは「指先の感覚」が人より気になってしまうタチで(野球をやっていたからだろうか)、ペンやお箸といった指先で扱うものをすっごくこだわっちゃうんですよね。爪も1週間に二度は切るし、野球をやっていた頃なんて、透明なマニキュアを塗ったりもしてたし。はじめて何かに「こだわる」というのを、自分の感覚を頼りにやってみたのは、ペンが最初かもしれない。

誰かの本で「その服、どこで買ったんですか?という質問は、その人のこだわりが出やすい」なんて書いていたけれど、相手の「こだわっているもの」を聞いてみても面白いかもしれないなあ。モノ以外にも、たくさんありそうだよ。お風呂は必ず42度とか、白ご飯は最後に食べるとか、靴は右足から履く、とかさ。いろんな「こだわり」を集め回ってみるのも、ひとつおもしろそうだ。「クセ」と言ってもいいだろうし。


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