最大限に何かを伝えようとしたことがありますか?

*喫茶店でちいさな子どもが「ママ、それいらない!」と子どもなりの大きな声で、首をぶるんぶるんと横に振りながら、両手はぎゅっと握られ、足はピンと伸びた状態で言っているのを見かけた。ママはたまらず「ちゃんと食べなさいよー」と声をかけているのだが、その子どもの「いらない」というアピールでありアプローチが、ぼくにはなんだかうらやましく思えたのだ。あんなに全身を使って、頭のてっぺんからつま先まで使って何かを伝えようとしたことが最近のぼくにあっただろうか?

ぼくならきっと「ああ、それはいらないや」と口頭で伝えるだけだろう。おまけとして、片手で「いらない」みたいなポーズをとるかもしれない。大人になると、ことばのやりとりだけで済んじゃうもんだから、それ以外のものを使って相手に伝えようとすることが少なくなったように思う。かろうじて、表情かな。でもそれはある種の「社交辞令」的なものであり、これを言うときにはこの表情、と決められたパターンになっている。ま、そういう意味では大人になるにつれ、そういうパターンというか社交辞令的な伝え方は増えていくわけだけども。

あーんなに全身を使って、最大限になにかを伝えようとするということ。コピーだって、うんうんと頭を悩ませてことばを考えるわけだけど、そうじゃないよなぁ。身振り手振りやイントネーション、あらゆるものをぜーんぶ使って、誰かに何かを伝えようとすること。ここまで書いてみると「演技」が近いのかもしれない。でも演技はどちらかというと、最大限に伝えるというより、緻密に精密にクリティカルに、「ここのこれ!」ってピンポイントで伝えようとすることに似ているようにも思う。

「愛してる」を最大限に伝えようとすると、いわゆる「世界の中心で愛を叫ぶ」みたいなことになるのかなぁ。でも、それをやろうとしたって「まねごと」であり「パフォーマンス」
だもんね、もはや。最低限でもクリティカルでもなく、ただこの伝えたいことを「最大限に」伝えようとすると、ぼくはどうやって伝えるだろう?っていうのを、考えてみるのもおもしろいのかもしれない。ジェスチャーってのはあくまで、ひとつの方法でしかないような気もするよ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?