その本を通してわたしを紹介している

*昨年から有志でやっている「塩屋文芸部」、通称「塩文」という部活があります。部長から提出される課題やテーマに沿った文芸作品を、約1週間〜1ヶ月の〆切に合わせて書くという部活です。課題に即してさえいれば、小説やエッセイ、詩など形式は問いません。気付けば塩屋文芸部も先週の課題で第20回を迎え、部員も十数名ほどになりました。これがまた、おもしろい部活なんだよ。

作品を提出した後は「講評」に取り掛かります。講評というのは別に批評するというわけでも堅苦しいものでもなく、その作品を読んでどう感じたか、どこが良かったか、指摘する部分があるなら指摘をする、ぐらいのものです。ただこの講評を書く時間ってのもおもしろいですし、自分の作品に対しての講評たちは宝物のように思える。「あの一文がよかった!」とか「私もこういう経験があるので共感しました…」とか、いろーんな角度からの講評をいただけるのですが、ここで行なわれている講評ってのはまさに「読書感想文」に近いもんだな、と。作品を読んでどう感じたか、どの部分が、なぜいいと思ったのか…そういうことを講評で書いていくとさらに、自身の経験や体験談までも書いてしまう。

そう思うと、読書感想文というのは、本そのものを紹介しているというよりも、「本を通した私」を紹介しているものに近いんです。いわば、本を通した自己紹介な訳です。その本を読んで、「わたしは」なにをどう感じたか。同じ本を読んでも感想は十人十色ですから、読み手の紹介に近いんですよね。

で、塩文ではそんな作品を書くことから講評までを1セットとして、第20回まで続けてきました。ぼくは他の部員の方にほとんどお会いしたことがないのですが、だいぶ知った気でいてるんですよね。同時に、たぶん知られているんですよね。一言も会話をしたことがない、文章のみのやりとりだけれど、どこかちょっとだけ深くその人を知っている。手紙をやりとりしているのと似たような感覚だけど、やっぱり「読書感想文」による「自己紹介」というのが、おおきいんだろうな。

そう思うと、同じ映画を見て、同じ本を読んで、同じ体験をした後に感想を言い合うのも、あれはりっぱな「自己紹介」だよねー。だから映画デートって、楽しかったりするわけだ。


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