ピロートークな男。

*きょうはちょっと、やらしい話をするよ。やましい話でも、いやらしい話でもなく、やらしい話だぜ。よいこのみんなはこのへんで一旦回れ右していただいて、ママの手料理を食べるんだな。きょうは、きっとおまえの好物だぞ。

「ピロートーク」ってのがあるでしょう。いわば、情事の後にふたりで寝転びながらする会話のことだ。ま、ふたりでも三人でも、ふたりと一匹でもいいんだけどさ。コトが終わった後に、余韻に浸りながら相手と会話をする。この時間を「ピロートーク」って呼ぶらしいね。おっと、わるいこの中でも男の子の諸君、世間ではこれをおろそかにしているとモテないと聞くぞ。

でね、茶店で話してた友人のひょんな一言で思いついたんだけど、ピロートークって直訳すれば「枕の話」じゃない。で、このピロートークのことをさ、ほんとうに「枕の話」だと勘違いしている男性がいたらおもしろいなって思ったのよ。

普通なら、これを読んでいるチミたちみたいに「かわいかったヨ」とか「燃えたね」とか「お医者さんごっこの次は、タイタニックごっこなんてどうだい?」とか話すわけでしょう?でもその男性は、「ピロートーク」のことを「枕についての話」と勘違いしてるんだ。だから、えんえんと枕についての雑学とか語っちゃうわけ。

「枕ってのは弥生時代から使われてたんだ。当時はもちろんクッションとかじゃなく、木片を枕にしてたんだよ。だから枕って漢字には木偏が入っていてね…」とか「枕を使うのは人間だけじゃなく、動物も使うんだよ。なんの動物だと思う?そう、キリン。あいつは首が長いから折り曲げてさ、自分の身体を枕にして眠るんだよ」とか「落語で本編に入る前にする話を枕って言うけど、あれも枕詞から来ていてね…」とか、えーえんと枕について話し込むわけだ。再三言うが、なぜならその男性は「ピロートーク」を「枕についての話」だと思っているからね。

で、それを聞きながらぽかあんと口をあんぐり開けている女性も、フシギには思うだろうが、まさかその男性が「ピロートーク」を「枕についての話」と勘違いしているだなんて気付かないだろう。「カレはいつも終わった後に、なぜか枕の話をする人ね」とは思っても、まさかそれをピロートークだと勘違いしていると気付くわけはあるまい。そうして誰にも指摘されぬまま、男は女と寝たら毎回、枕の話をしつづけるわけだ。ああ、そんな人、いそうでいないもんかなぁ。そりゃさ、コトの後に枕についての話をえんえんとするような男は、お先まっくらかもしれないけどさ…と、上手くオチをつけれたかな。


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