矯正することで変わる



*歩いていたら、建物と建物のあいだに生えている一本の樹があった。樹は、建物の屋根と屋根のあいだを縫うように、ちょっとへんてこな形をして伸びていた。すごいもんだよなぁ
、そこに屋根があるからどうにかこうにか、軌道を変えて伸びてきたんだろうなぁ。人間が勝手に感じているだけかもしれないけれど、そうした自然の「生命力」には、何度も驚かされることがある。

この景色からぼくは「変わるって、大変なことだよな」と思いを馳せる。最近読んだマンガの中に「本気で変わりたいって思ってないだけちゃう?」ってセリフがあったけれど、そのセリフにはギクッとした。強者の理論に聞こえるかもしれないが、ギクッとしたし、その通りかもしれないと思ったんだよなぁ。

自分をどこかの方向に変えようと思ったら、変わるためにどうにかしないといけない。もっと具体的に言えば、優先順位をあげることだ。どれだけ忙しくても歯を磨いたり風呂に入ったりはするように、本気で変えたいと思ったなら、その事象の優先順位を自分の中で引き上げるしかない。「足が速くなりたい」って言ってるのに、ランニングもせずに過ごしていたら速くなりようがないものね。

もっと簡単な方法は「矯正する」ことだ。歯並びを矯正するのだって、自然にしていても変わらないからそうするわけでしょう。「それをしないと過ごせない状況にしてしまう」ようにしていれば、無理矢理にでも変わることができる。言葉通り、強制的に変えてしまうわけだ。視点を変えてみればあの樹だって、矯正されているようなものだ。本来の伸びる方向に屋根があったもんだから、どうにかこうにか抜け道を探して伸びたようなもんだし。

もちろん、ぐんぐんと自然にその方向に伸びるように変わっていけるのが理想だけれど、それはけっこうむづかしい。し、エネルギーがいることだ。意思ってのは、基本は弱いもんだもんね。それを無理矢理にでも変えようと矯正することは、ぼくはそこまで悪いことじゃないようにも思う。自分自身でそれをするなら、って話だろうけど。

ぼくも、タバコの吸い殻を綺麗に並べるおじさんを見て「かっこいいなぁ、おれもやってみよう」と思ったけれど、今この文章を打ち込むパソコンの隣にある灰皿を見たら、汚いもんなぁ。優先順位が上がっていないわけだよ、まさに。強制的に、吸い殻を綺麗に並べれる灰皿があれば、どうにかなりそうなもんだけど。でも、理想は自然に、だよねえ。


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