全身全霊の霊って、なんだ?

*「全身全霊」ということばを見かけて、ふと思った。全身は、わかる。じぶんの身体のすべてをかけて、臨みますってことだからね。でも「全霊」ってよくよく思えばなんだ?じぶんについている霊たちもすべてささげて、頑張りますってことなんだろうか。

まじめに考えてみると、そういうことなんだろうね。昔は先祖の霊とかが加護としてついていると言われていたからってこともあるだろうし、身体と魂を分けて考えていたってことでもありそうだ。すべての膂力と、すべての精神力をかけて、という意味にになるのかな。そういう目には見えない自分以外のものもすべてかけて、臨みますってことなんだろう。だからこそ「全身全霊」ということばが残っているのだろうし。一生懸命、みたいな意味合いだね。

思えば、日本語ってこういう「じぶん以外」をアテにした表現が意外に多いんだよ。たとえば「他力本願」ということばもそうだ。ま、この場合は「じぶんの力だけで何かを成し遂げるなんておこがましい」みたいな意味合いが強いけどね。にしたって、じぶんの力だけでない、まさに「全霊」の部分を言った表現になっている。

祈りってのも、そうかもしれない。「神様仏様…」とお祈りするのも、まさしく「全霊」だ。じぶんの力ではどうしようもならないことを、他者の力を借りて、どうにかなればと祈る。そういう、「だれかの力を借りる」って感覚が日本には昔から根付いていたのかもしれない。それは「じぶんの力なんて、たかが知れている」という意味でもそうだろう。

「妖怪のせい」とか「死者の呪い」とかもそうだよねー。こっちは誰かのせいにしたがるという意味だけど、でもやっていることは同じだ。他者からの影響の方が強いと考えているってことだから。しかしまあ、じぶんだって他者から見れば、他者のはずなんだけどねえ。

そういえば、人間って「霊長類」だったよなー。全身全霊の「霊」、霊長類の霊、アニミズム的なものがやっぱりどこか根付いているのかもしれない。全身、全霊。見えないものをかけてまで、臨みますってこと。見えないものを信じていないと、言えないし残ってこなかったことばだね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?